ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

視聴者には判断能力がない?日テレ氏家氏

日本テレビ放送網取締役会議長の氏家氏が、日経ビジネスの記者のインタビューに答えて持論を展開しています。タイトルは「ネットとの提携、融合?あり得ないよ」。その中でこんなくだりがあります

■報道が今のテレビ局のいちばんの強さの源泉なのかもしれないですね。

氏家 ニュースを作るというのは簡単なことではない。堀江君(貴文、ライブドア社長)という人はどういう人か分からないけれど、市民記者をつくって、採用したニュースについては1000円を払うなんて、半年ぐらい前に言ってたね。しかし、そんなもので集めたニュースというのは信憑性がどこにあるのか全然分からない。

メディアの基本的な能力というのは、たくさんある情報の信憑性を検証する能力です。だから、世の中で起こったことをそのまま流せば、それでニュースだなんて誰も思わないでしょう。

■情報がたくさんあれば、それを判断するのは視聴者でいいというのが堀江氏の主張ですが。

氏家 消費者に判断能力があれば、明治以来、メディアというのがこういう発達の仕方をしてこないよ。信憑性の検証は近代メディアの発達史の根幹ですよ。

テレビや新聞における消費者は、視聴者であり、読者ですが、その判断能力はないと言っているわけです。その前にこうも話しています。

■これから先を考えると、有料の部分がかなり伸びていくのでは。

氏家 それは違う。同じものをただで見られるのと、有料で見るのとどうなのかって考えてみれば分かるでしょう。ものすごくいいコンテンツなら有料で売れるよ。5年前の時点のジャイアンツ戦なら売れたと思います。今はちょっと落ちてきたけれど。でも、日本にはそんなのたくさんありゃしないよ。

テレビの番組、コンテンツがつまらなくなったと言われて久しいですが、氏家氏自身も有料で出せるようなレベルのものはないと語っています。にもかかわらずテレビは安泰であるかのような自信。リテラシーの低い消費者に支えられた日本のメディアの構造を分かりきっている氏家氏に、消費者はなめられているのです。

「マスメディアはだからダメなんだ」と批判するのは簡単ですが、相変わらずくだらないテレビの視聴率は高く、広告が入り、既存マスメディアの従業員は高級を取り、既得権益の上にふんぞり返っています。(例えば氏家氏に)リテラシーが高くなったと実感されるような出来事が起こらなければ、永遠にこの状況は続くでしょう。問われているのは視聴者、読者です。私自身の反省も込めて。