ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

ゼミ生が大阪ガスの「taknal」プロモーション案を検討

大阪ガスが運営する人とのすれ違いを本の出会いにするサービス「taknal」のプロモーション案を、法政大学の授業「ソーシャルメディア分析」で行いました。授業で学生が行った分析概要の報告、授業を踏まえたゼミ生のプロモーション案をグランフロントにある「都市魅力研究室」で大阪ガスの皆さんに説明し、ご意見を頂きました。

法政大学メディア環境設計研究所の研究会で「taknal」担当者の方からお話をしてもらったので、そこで「taknal」ファンになり、研究会でも積極的に質問したゼミ生が担当しており、色々なアイデアを検討しています。

「taknal」は下記から、ぜひダウンロードして使ってみてください。

taknal.app

藤代ゼミが月刊「広報会議」のメディア研究室訪問で紹介されました

広報専門誌「広報会議」2023年2月号のメディア研究室訪問で藤代ゼミが紹介されました。タイトルは『あらゆるモノがメディア化する時代の「伝わる構造」を設計する』です。記事はゼミの活動内容だけでなく、学部や学科の特徴にも触れて頂いています。

記事ではゼミ活動を「面白さ」を重要なキーワードとして取り組んでいるとし、春学期の「ゼミ紹介冊子」づくりや、企業や地域とのコラボレーションについて触れてもらいました。藤代ゼミの設立は2013年なので10年になります。いろいろな企業や地域のかたとつながり、研究や実践に取り組んできました。

NTT研究所、NTTコミュニケーションズ、TBSメディア総合研究所などとの共同研究。バンダイナムコスタジオテレビ東京、RE:PUBLICとは一緒にソーシャルメディアにおけるプロモーションや社会課題の解決などのプロジェクトを行ってきました。これら中から、記事ではフェイクニュース研究などを中心にまとめて頂いてます。

また、コロナ前は栃木県足利市福島県白河市島根県益田市真砂地区、長野県白馬村などでフィールドワークを行い、地域の魅力を冊子などにしてきました。企業や地域の皆さんに、ゼミ活動を支えて頂き感謝しています。

詳しくは「広報会議」を手にとって頂ければ!

 

ガダルカナル島に至る道、パールハーバーの記念館を巡る

このブログは「ガ島通信」という名前で、2004年9月にスタートしました。いつの間にか20年近い月日が流れました。ブログを書き始めたきっかけは2003年に出版された「ネットは新聞を殺すのか-変貌するマスメディア」を読んだことです。アメリカでブログと呼ばれるインターネットサービスが注目され、参加型ジャーナリズムと呼ばれる動きがあると書かれていました。

2004年は国内でもmixiやグリーといったSNSがサービスを開始し、8月にはGoogleが株式を上場、ブログをスタートした後ですが11月には伝説的な未来予測動画「EPIC2014」が公開されるなど、インターネットメディアの未来が議論されていました。新聞社などの既存メディアの将来は厳しそうですが、深刻にとらえていた人はごく一部でした。

ガ島とはソロモン諸島ガダルカナル島のことで、もはや新聞業界における「ミッドウェー海戦」は終わり、敗北への流れは決まっているという意味で付けたものです。日本軍は、ガダルカナル島での戦いで約2万人が死亡し、餓死者も出たことからガ島は餓島とも呼ばれました。ミッドウェーで空母4隻を失い戦局が決していたように、新聞業界も(別の視点から生き残りをかける読売新聞や電子化に進んだ日経新聞を除いて)勢いを失い、ここ数年ははっきりと衰退が見えてきました。

ガ島で戦っても意味がない、ミッドウェーの前を考えねばならない、とずっと考えてきました。年末にたまたまハワイに行く機会があり、ガダルカナル島に至る道としてパールハーバーの記念館を巡ってきました。

ホテルへの送迎付きの現地オプショナルツアーでの「アリゾナ記念館」「戦艦ミズーリ記念館」「航空博物館」の見学です。ツアーのホテル出発は5時30分。 その理由は日本からの観光客がパールハーバーツアーをほとんど申し込まないので団体予約枠が抑えられず、先着順の列に並ぶためと説明を受けます。

一番に入り口に到着し、真珠湾攻撃で沈んだ戦艦アリゾナの上に作られた「アリゾナ記念館」に向かうボートを待つ列に並ぶと、横から予約客がどんどん進んでいきます。予約なしは1時間後からボートに乗れるということで、ツアー参加者の方と交代で列をキープしつつビジターセンターを駆け足で見学しました。

アリゾナ記念館(USS Arizona Memorial)とビジターセンター

ビジターセンターは「The Road to War」と「Attack」という2つの建物で構成されており、小規模ながら大変興味深いものでした。「The Road to War」では真珠湾攻撃に至る経緯が、「Attack」は時系列で攻撃が紹介されます。

入り口を入るとアリゾナの模型がありますが、その横にある日本の航空母艦赤城の模型のほうが大きく精巧です。開戦時の太平洋における日米の海軍力は、日本のほうがアメリカを上回っているとの数字も示されています。

most powerful、greatest concentoretion、といった表現を使い奇襲が説明されています。

<<オアフ島を攻撃するために、日本海軍は史上最強の空母部隊と史上最大の海軍航空戦力を結集した。この攻撃には、綿密な計画、厳しい訓練、新しい技術、ーそして奇襲の要素が必要であった。>>

ハワイのホノルル領事館に駐在してスパイ活動をした海軍吉川猛夫氏の紹介。アメリカ側の攻撃当日の通信状況の展示もあり、情報について力を入れていることが伝わります。

今回は、ボートを待つ間に交代でしかビジターセンターを見ることが出来ませんでしたが、ビジターセンターの見学だけで1時間は欲しいところです。

なお、ビジターセンターと「アリゾナ記念館」はどちらも無料です。「潜水艦ボーフィン号」は有料です(今回は行きませんでした)。

次は「戦艦ミズーリ記念館」「航空博物館」のあるフォード島に向かいます。オプショナルツアーだったのでツアー会社のワゴンで向かいますが、現地でチケットを買うとシャトルバスが利用できます。

航空博物館(Pearl Harbor Aviation Museum)

真珠湾攻撃の最初の無線警報が発せられた空港の管制塔と格納庫を利用してつくられた航空博物館。入り口すぐにゼロ戦航空母艦「加賀」の模型、寄せ書きなども展示されています。イヤホンガイドからは、日本は10隻の空母を持ち(軽空母含む)、良い性能の航空機と、高いリスクを取る真珠湾攻撃を行った。これにより航空戦を軽視する意見もあったアメリカ軍内の流れが変わった、といった説明があります。

ビジターセンター同様に、航空機と航空母艦を中心とした「機動部隊」による攻撃のインパクトを踏まえた上で、アメリカがどのように対抗していったかが説明されます。

ミッドウェー海戦のパネルも。多くの展示が英語・日本語の併用で、日本語のイヤホンガイドもあります。

真珠湾攻撃時に不時着した零戦パイロットが島民に殺害され、かばおうとした日系人が自殺した「ニイハウ島事件」についての展示。さらに、2つの格納庫とその間の空間に、カーチス、ドーントレス、ワイルドキャットから、映画「トップガン」に出てくるF-14、ヘリなど多数の実機があることも、驚かされます。

戦艦ミズーリ記念館(Battleship Missouri Memorial)

降伏文書の調印式が行われたミズーリ。日本語ガイドの方により、調印式が行われた場所、甲板への特攻の跡など、30分弱の説明があります。コロナで少なくなっているとのことですが数名の日本語ガイドが活躍しています、ツアーではなくても乗船したすぐのカウンターでお願いすれば対応してくれるとのこと。

https://ussmissouri.org/jp/

半日という駆け足でパールハーバーの記念館を巡りましたが、展示や説明からはアメリカ側が、かつての戦争をどのように捉えているか、敵国であった日本をどう評価しているのかが分かります。非常にフラットで、航空母艦を中心に「機動艦隊」を運用した日本に対するリスペクトを感じるものでした。

戦艦から航空母艦を中心とした戦いに変化する中で、日本軍は大艦巨砲主義にこだわったという言説もありますが、そうではなく「機動艦隊」による奇襲というイノベーションを示し、アメリカ太平洋艦隊を率いることになったチェスター・ニミッツはミッドウェーでの戦いに全精力を傾けていく。そして、日本はミッドウェーで空母4隻を失い、戦局は決することになります。

本当は日本は勝っていたなどと言いたいわけではありません。テクノロジーの進化とその組織対応や投資が適切でなければいけない、と言うのは簡単ではないということです。歴史から学ぶためには記録が必要であり、負けたことも、問題があることも記録し、フラットに評価する必要がある。

ハワイに行く機会があれば、ぜひパールハーバー記念館を巡って、それぞれに考えていただけると幸いです。次はガダルカナル島にも行ってみたいものです。

JCEJ活動10周年を記念した「メディアイノベーターズ」を発刊しました

日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)の活動10周年を記念し、「メディアイノベーターズ: 未来を拓くための記録」を発刊しました。メディア激動の10年を実践者として切り拓いてきた25人による「時代の証言」とJCEJの活動年表が収録されています。

2021年の5月から1ヶ月間にわたり開催したリレートークイベント「ジャーナリスト図鑑をつくろう!」を再編集したもので、25人がインタビューの聞き手、話し手、を担当しており、それぞれの問題意識を刺激され議論が盛り上がったのをできるだけ残すように工夫した結果、二段組で300ページというボリュームになりました。

活動年表を確認すると、2011年に設立した直後に東日本大震災が起き、それらの活動を進めながら勉強会やワークショップ、JCEJの取り組みの軸となる「ジャーナリストキャンプ」がスタート。2012年にはデータジャーナリズムに力を入れ、2013年にはデータジャーナリズムの海外視察やアワードを実施。2015年にはオンラインでのジャーナリズムの取り組みをみんなで盛り上げようと「ジャーナリズム・イノベーション・アワード」をスタートさせました。

JCEJが「キャンプ」や「アワード」をスタートしたときに比べ、いまはスキルを学ぶ場や賞も増えており、JCEJの活動が一定の役割を果たしたと思います。

10年間の出版物は7となり、「A Field Guide to Fake News and Other Information Disorders(フェイクニュース調査のフィールドガイド)日本語版」、「 A Journalist‘s Guide to Social Sources(ソーシャルメディアを使った取材の手引き)日本語版」、「地域から外に発信するためのハンドブック」の3冊は、JCEJのホームページからダウンロードできます。

http://jcej.info/

2018年に紙版を出し、2021年からKindleにも展開している地域から発信する際に必要な技術や心構えをまとめた「ローカルジャーナリストガイド: 地域で暮らし、地域から発信する人のための教科書」は、多くのNPOや大学で活用して頂いてます。

JCEJの活動は、前半は勉強会やワークショップといったイベントをどんどん進め、「キャンプ」と「アワード」に集約され、後半は冊子、ハンドブックなどに成果を取りまとめていきました。

10年の活動により、メディアやインターネット関係者だけでなく、NPOや地域活動を行っている人々とのつながりが生まれました。改めてJCEJ運営への協力に感謝します。そしてなによりも、困難な活動を続けることができたのは運営委員のおかげです。

「メディアイノベーターズ: 未来を拓くための記録」発刊を記念して、JCEJ運営委員がそれぞれの推し記事を紹介するオンラインイベントを行い、録画をYouTubeに公開しています。藤代の推しは、高知と朝日新聞で二度の新聞協会賞を獲得した依光隆明さんの「論より、ファクト」。「徹底して事実にこだわる回答が身に染みる」「素晴らしい話が笑いながら読める」です。他の記事も大充実ですので、ぜひご覧ください!

「メディアイノベーターズ: 未来を拓くための記録」目次

  1. 「プロの素人」たれ 足立義則
  2. 驚かせるために、驚く 開沼博
  3. 「組織から個人」は止まらない 亀松太郎
  4. 誰かを幸せにする仕事 與那覇里子
  5. 流通と制作を行き来する 三日月儀雄
  6. 媒体のことまで考えてみる 小野ヒデコ
  7. 原動力はテクノロジー 藤村厚夫
  8. ネットで分かるのは8割 岡本真
  9. 好きな場所から発信する 富谷瑠美
  10. 論より、ファクト 依光隆
  11. データで議論する社会に 矢崎裕一
  12. 当事者が、権力になった 田村真菜
  13. 事実で人の好奇心に応える 石戸諭
  14. 誰もが使命と出会う 寺島英弥
  15. 続く仕組みをつくりたい 山田雅俊
  16. 併走しながら撮っていく 岸田浩和
  17. 記者と働くエンジニア 赤倉優蔵
  18. ズレを描き、本音を誘発する 清水淳子
  19. 10年たって言葉にできた 沼能奈津子
  20. 届けたい人に届いているか 新志有裕
  21. 取材方法をアップデート 井上直樹
  22. 時に聴診器、次に拡声器 安田菜津紀
  23. 会社の外で学べるって大事 耳塚佳代
  24. 「知ってほしい」を越えてゆけ 田中輝美
  25. 未来に対して仕事する 藤代裕之

www.youtube.com

武蔵、上智、成蹊、法政の4ゼミ「調査情報デジタル」第2回合同レビューを行いました

TBSメディア総合研究所が発行している「調査情報デジタル」の第2回合同レビューを、武蔵大学奥村ゼミ、上智大学水島ゼミ、成蹊大学吉見ゼミ、法政大学藤代ゼミで行いました。各ゼミから議論したい記事を1つ選び、意見交換を行いました。

各ゼミが選んだのは以下の4記事で、大きくジェンダーなどの社会的役割とオンデマンド化するメディアの2グループです。

下記のような意見が各大学の学生から出ていました。

 

「役割語」とは何か、それの何が問題なのか|調査情報デジタル

役割語は分かりやすいが、ステレオタイプが当てはめられてしまう」「メディアを正解としてしまう危険性がある」「実際にいる人の役割語はメディアが発信するのだから発信側のメディアが考えるべきなのではないか、キャラクターの場合はキャラクターの役割として捉えられる」

ラジオの現在地とこれから|調査情報デジタル

「いろんな配信プラットフォームが時間を取り合っており毎週同じ時間を取れない」「生活スタイルが固定化されていない人も増えてきているので定期的に聞いてもらうのは難しいのではないか」「ラジコは1週間しか聞けないのが問題」「ラジオは頭を使って聞いてしまうので気楽さはない」

TBSメディア総合研究所の担当者からもコメントを頂き、4ゼミの合同レビューはひと区切りとなりました。企業からのメディア接触に対する意見交換やアイデア企画なども対応できますので、希望があればご連絡ください。

gatonews.hatenablog.com

 

情報通信学会大会でゼミ生が「Yahoo!ニュースにおける『こたつ記事』の特徴分析」を発表

情報通信学会の第47回学会大会で「Yahoo!ニュースにおける「こたつ」記事の特徴分析」としてゼミ生が研究発表をオンラインで行いました。

フェイクニュースの要因と考えられる「こたつ」記事を見つけられるようになれば、大学生でもフェイクニュースから身を守れるのではないか、という問題意識からヤフーニュースのトップに掲載された621本の記事を対象に分析を行いました。記事の書き方が多様で、実際に現地で取材しているのか、テレビやインターネットの情報をもとに書いているのか、分からないという結果となり、大学生が触れているニュース環境の困難さが浮き彫りとなりました。

 

「風の人を取材して」『地域ではたらく「風の人」という新しい選択』地方出版文化功労賞のゼミ生挨拶

地方出版物を応援する第29回地方出版文化功労賞と第2回島根本大賞のW受賞に輝いた『地域ではたらく『風の人』という新しい選択』(田中輝美、法政大社会学部メディア社会学科藤代裕之研究室)。2016年10月22日に鳥取県米子市立図書館で行われた授賞式でのゼミ生の挨拶です。「とても良かった」と会場でも多くの方から声をかけて頂きました。

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タイトル:風の人を取材して

こんにちは。 藤代ゼミ二期生の坂井友紀と申します。今年の3月に法政大学を卒業し、今は社会人一年目として、営業の仕事をしております。 今回は、執筆直後とこの賞の受賞をきっかけに読みなおしたときの本の印象が全然違うことに衝撃を受けたので、そのことについてお話したいと思います。

まず、今回受賞させていただいた、『地域で働く「風の人」という新しい選択』の内容は、島根県で活躍している8人に私たち藤代ゼミ生と田中輝美さんが取材をし、その人の生い立ちや現在の風の人としての活動について、を綴った本です。 私は、劇団ハタチ族の「西藤将人」さんを取材させてもらいました。

取材の際、西藤さんは手をポケットに入れて歩いちゃうような、偉そうな雰囲気の方でしたが、私の稚拙な質問に対して真剣に考え、自分の当時の想いや考えを一生懸命思い出しながら、真摯に、言葉を紡ぎだしてくれました。

演劇から離れたり復帰したり、フランス料理人になろうとしてやめたり、何度もフェードアウトしても、何度も自分と向き合い、今は、「雲南を演劇テーマパークにしたい」という明確な夢を持って実際に行動に移している西藤さんを私はうらやましく思いました。

そんな西藤さんを含む、8名をゼミ生が取材し、完成したこの本ですが、当時読んだ私は、お疲れ様!という感想で、正直読者としては読めていませんでした。 本の内容よりも、きちんと本が完成したことに対する「良かった」の気持ちの方が大きかったです。実際、この本を作るのはとても大変で、ゼミ生はとてもすり減っていましたし、力を使い果たしてしまった人も多かったです。

私も急遽「風の人」の本の取材、執筆に関わることとなり、急遽というのは、私が当時大学4年生だった時、この風の人の本の作成を進めていたのは3年生だったのですが、西藤さんの記事をかける人がいなくなってしまい、私が応援として関わらせていただくこととなった、という経緯からです。 そんな切羽詰まった環境の前で本を文章を読んでも自分の中に染みてきませんでした。

読者として読めなかった理由としてもう一つあると思っておりまして、私自身、北海道で生まれたものの、本当に生まれただけで、幼稚園時代は宮城県、小学生から今に至るまでは東京で過ごしており、15年以上は東京で育ったためか、地域ということを意識したことがほとんどなく、興味もなかったのです。

地方と東京の違いを初めて感じたのは、大学生になってからで、地方出身の人の方言を聞いたり、環境の違いを聞いたり、「茨城でも、グルメ番組は表参道のパンケーキとか紹介してるんだよ」と言われて驚いたり。ちょっと頑張れば行けるところを紹介しているのがグルメ番組なのだとばっかり思っていたので、驚いたり。地方を意識したことがなかったために、知らないことばかりでした。

じゃあ藤代ゼミに入ったのは地域に興味があったからなのかというと、そういうわけでもなく「大学で充実した生活が送りたい。そのためにきちんとした先生のところで学びたい」という想いからでした。この二つの理由、本の作成に切羽詰まっていたこと、私がほとんど東京育ちであることから、「本が完成してよかった、お疲れ様。」という感想になったのだろうと思います。

ですが、今回受賞にあたり、改めて社会人になって、完全に読者として読むと、通勤中、涙がにじむほど、感動しました。 まだ数か月しか働いてはいませんが、「実際に東京で働いてみて、どうだ。働く場所は東京だけじゃないぞ」 と選択肢を与えられ、 「このままでいいのか?」 と問い直され、飛び出そうか、ともじもじする心を後押しされたような気持ちになりました。

だからと言って、まだ社会人1年目でひょっこりやめるのも癪なのでまだ会社は辞めません。自分の仕事と向き合って、自分自身とも向き合って、チャンスがきたら逃さないために、少しずつ行動力を養っていこうと思います。でも、チャンスは逃しちゃいけない、逃さないための準備を着々としなければいけない、やりたいことはいろんな場所でできるんだと思わされました。

この風の人から「後押し」をされる気持ちは風の人全員に共通する「行動力」から生まれたものだと私は思います。 一歩踏み出し、行動する。風の人たちの生きざまが「背中を押してくれる感覚」をきっと作っています。 私が西藤さんに抱いていたうらやましい、という気持ちも西藤さんが持つ行動力に対してだったんだ、と今なら思います。

この本を読んだ人はきっと、「風の人なんて特別だ」という気持ちではなく、自分も風の人になりたい、なれる、とそう思えるはずです。地域に興味がなくても少し地域に興味がわいてくる、何か漠然とやりたいと思っている人の一歩を後押ししてくれる、まさにのちの自分、今の私、がターゲットとなるような本に関われたことをとてもうれしく思います。

代ゼミ生、藤代先生、田中輝美さん、ありがとうございました。

地域ではたらく「風の人」という新しい選択

地域ではたらく「風の人」という新しい選択