ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

「Journalism7月号」のデータジャーナリズム特集は関係者必読の保存版です

Journalism(ジャーナリズム)2014年7月号』(朝日新聞社ジャーナリスト学校)が、データジャーナリズム特集を行うということで、私も寄稿したのですが、さまざまな角度から考察が行われていて、保存版の出来映えです。

実際にデータジャーナリズムに取り組んでいる朝日新聞チラシでたどる震災1000日」やハッカソンの取り組み、NHKスペシャル震災ビッグデータ」という実践レポートだけでなく、マーケティング分野からトランスコスモス・アナリティクス副社長の萩原雅之さん、 データ分析の観点からデータセクション会長の橋本大也さん、ネット選挙に絡めたソーシャル分析で立命館大学特別招聘准教授の西田亮介さん、さらに、津山恵子さんや滝口範子さんの海外レポート、ネオローグ立薗理彦さんのサイト案内、オバマのソーシャル選挙分析で知られる埼玉大の平林紀子さんへの編集長インタビューと、これでもかとてんこ盛り。以下は目次で確認してください。

<目次>

 

5年後、ウェブへの記者「大移動」は起きない。それは既存メディアの願望である

朝日新聞マサチューセッツ工科大(MIT)メディアラボのシンポジウム「メディアが未来を変えるには~伝える技術、伝わる力~」に関連して、朝日新聞のウェブサイトに興味深いインタビュー記事が掲載されていました。タイトルは 「記者独立の時代、5年で来る」

東洋経済オンラインの編集長で、『5年後、メディアは稼げるか』の著者でもある佐々木紀彦さんが、欧米のスター記者や編集者の伝統メディアからの独立や、新たなデジタルメディアの設立について、朝日新聞の古田大輔記者の質問に答えたものです。

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シンポでもツイッター担当の津田大介さんが「朝日新聞のエース級記者に、新興メディアに移る意志があるのかを聞きたい」という質問が投げかけらました。

佐々木編集長は、日本でも旧メディアから新興メディアへの移動が5年も経たずに起きるとしています。しかしながら「大移動」は起きないでしょう。

「一流の待遇」は5年は続く

佐々木さんと古田記者のやり取りを確認します。待遇が変われば移動が起きるという指摘です。

佐々木:「オールドメディアの待遇、とくに一流と呼ばれるところの待遇がいいからでしょう。でも、じりじりと伝統的メディアにいるメリットと新しいメディアにいるメリットが均衡してきています。それが交差するとき、優秀な人が外に出る方がいいときがいつ来るのか。それが未来を見通す上で一番重要な問いです」

古田:その分水嶺(ぶんすいれい)はいつ来ると思いますか。

佐々木:「5年経たず来るでしょう。一流の人だけでなく、準一流な人も出るような雰囲気や合理性がでてきたとき、雪崩をうつんじゃないですかね」


年収ラボによると、大手新聞社の平均年収は朝日新聞社で1,252万円、日本経済新聞社で1,201万円、毎日新聞社で770万円、産業経済新聞社で712万円です。ちなみに、佐々木さんの所属する東洋経済は1,042万円で、年収ラボの出版業界別平均年収ランキング1位です。

一方、PCウェブのマスメディアとも言えるヤフーの平均年収は663万円。マスメディア出身者にそのままこの平均年収が当てはまる分けではないでしょうが、平均では倍近い開きがあります。ベンチャーの新興メディアだと経営陣以外はもう少し安いかもしれません。

毎日や産経であれば既に、移動しても良いレベルにあると考えることができますし、実際に毎日や産経出身でウェブメディアで活躍している方もいます。ですが、新聞崩壊、危機などと言われながら「一流の待遇」を持つ新聞社の業績や待遇はそれほど悪化していませんし、経営状態を見ても5年後に急降下することも考えにくい。これが「大移動」が起きない一つ目の理由です。

移動できる人材が少ない

「大移動」ではなく、ジワリと移動は進行しているという方が正確でしょう。

それを裏付けるデータとして、日本新聞協会がまとめている新聞・通信企業の従業員総数があります。1993年の6万7356人をピークに減少が続いていて、2013年は4万3704人となっています。そのうち記者は約2万人です。新聞社は20年前から社員が減り続けていて、衰退し続けていると言えます。

新規採用者数は10年前は1,177人ですが、754人となっています。正社員の雇用調整が難しい日本の伝統的な企業では、新規採用を抑制することで人件費を抑制するという選択が取られる事が多いわけですが、新聞業界も同様です。そのため、社員の年齢構成では「40から44歳」「45から49歳」の割合が多く、60歳代が4%台を超えています。

転職は年収、ポジション、適合柔軟性などの要因から年齢が上昇すると難しくなると言われています。

シニアの転職はどうでしょうか。シニアは単に記事が書けるだけでなく、企画立案や経営などの経験が求められるでしょう。@ITを立ち上げて、アイティメディアの会長も務め、現在スマートニュースの執行役員を務める藤村厚夫さん(60歳)のような人材は新聞業界には皆無に等しいでしょう。

移動できそうな若い記者はもはや新聞業界に少ないのです。これが「大移動」が起きない二つ目の理由です。

ウェブには多様な書き手が増えている

ITmediaやCNETといったネットメディアに加え、ソーシャルメディアの登場によって誰でも発信できるようになりました。さらに、この記事を書いているヤフー個人やBLOGOS、ハフィントンポスト、さらにスマートニュースなどが生まれ、多くの人に届くようになりました。
つい先日は、博報堂DYHD、ニュース編集・制作の新会社設立というニュースが流れました。新会社のNEWSY(ニュージー)顧問は中川淳一郎さんです。

経済系のニュース共有サービスNewsPicsk(ニューズピックス)は編集部を持つ方針を明らかにしていますが、運営するのは証券会社出身です。企業のオウンドメディア戦略が進むと、企業内から書き手が出てくるかもしれません。
既にウェブではライター、ブロガー、研究者、芸能人やスポーツ選手など、多くの書き手がいて、新興メディアが立ち上がっています(これまでの「ニュース」にニュース風、ニュース仕立ての記事が混じる事に議論があるでしょうが、それは別途どこかで書くとして…)。これが「大移動」が起きない三つ目の理由です。

移動できるかはマーケット次第

個人的な事を話せば、2005年に地方紙で最も待遇が良いとされる徳島新聞を退職しました。「アホじゃないか」とさんざん言われましたし、友人は「早まるな」とアドバイスしてくれました。

給与や退職金という待遇を捨てるのはリスクがありましたが、ウェブの世界で起きるメディアやジャーナリズムの世界を見たかったというのがありますし、当時は記者ブログが珍しく注目もされていましたので、今なら移動できる、10年後は難しくなる、と判断したというのもあります。


幸い前職のNTTレゾナントが採用してくれたことで、ヤフーのトピックスと同じようなニューストピックスの担当だけでなく、新サービスや新ビジネスの開発、研究所の方々と研究技術を世に出す仕事に携わる事ができました。

記事を書き、編集するだけでなく、仕様書も書き、プロジェクトマネージメントもし、時に営業もしました。不本意な時もありましたが、サービス開発の難しさや営業の苦労も知り、貴重な経験をさせてもらいました。これも、一歩早く飛び出したから出来た経験だと思います。


ハフィントンポスト日本版の編集長である松浦茂樹さんと人材採用について話をした際に「2005年ごろにオールドからウェブに出て来た人材は玉石混淆だったけど、最近は良い人材がいる」と話されていました。

時々、ウェブメディアや新興メディアの方から「人材を紹介してほしい」と言われることもありますが、今は記者としてそれなりに実力があり、ソーシャルメディアを使いこなし、さらに企画力とか経営マインドがないと移動できなくなって来ていると感じます。昔は単に既存メディアだというだけで珍しかったけど(私はそれで救われた)…

待遇が良い時は既存メディアにとどまり、待遇が悪くなってくると新興メディアに移動した い、それもタイミング良く、これはずいぶんと都合の良い主張です。大移動というのは既存メディア側の願望なのではないでしょうか。

どんなスキルが必要なの?

マーケットはどんどん変化しますが、何の準備もしないというのは無策すぎます。「人材を紹介してほしい」という話があるものの、なかなか見つからないのは、ミスマッチが起きているということでもあります。シンポジウムで伊藤穣一さんがデータジャーナリズムに関して、数学、ビジュアル、プログラミング技術の重要性を説いています。

 

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角川とドワンゴの経営統合が話題ですが、角川歴彦会長が「デジタルネット企業になりたいと努力している」と言う角川の選択は、川上会長という希有なデジタル経営者を統合によって手に入れるとういことでした。これは既存メディアの人材の限界を示しているともいえます。

仲間とつくる日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)では、ウェブメディアに記事を書くジャーナリストキャンプという取り組みも行っていますが、システムへの投稿だけでなく、タイトルやリードの書き方、拡散の方法、反応の吸い上げなどは、想像以上に出来る人が少ない。「記事を書いたら終わり」から「記事の公開が始まり」への変化を頭で分かっていても、実際に手が動く記者は少数です。

伊藤さんはアメリカのジャーナリズムスクールの例をあげて、テクノロジーを理解しながらジャーナリズムを教える大学が少ないとしていますが、勤務している法政大学ではソーシャル(ビッグデータ)解析の共同研究も進めていますし、来年度からは、起業家ジャーナリズムをテーマにしたワークショップ形式の実習も開講します。この実習を受講するにはプログラミング系科目の単位が必要です。

これらはメディア業界が必ずデジタル化すると予測して準備を進めて来たものです。ゼミでは、デジタルジャーナリズム、デジタルネット企業に対応できる人材を育成できるような実践活動も行っています。「大移動」が言われる前に、先んじることが重要ではないでしょうか。

朝日新聞未来メディアプロジェクト、1年の成果はデータジャーナリズムと双方向性

朝日新聞社マサチューセッツ工科大(MIT)メディアラボのシンポジウム「メディアが未来を変えるには~伝える技術、伝わる力~」をミッドタウンに見に行ってきました。

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昨年6月に開かれた朝日×MITメディアラボのキック的なシンポで、木村伊量社長は「誰もがジャーナリストになった」とソーシャルメディアによる大きな変化を認め、「自分たちのメディアが揺らぐような時代」「新聞社が求める人材も、取材方法も変わらなければいけない」と危機感を表明して大きなインパクトを与えました。

あれから約1年、取り組みはどう進んだのでしょうか。 会場は満席で、昨年に比べるとスーツ姿のおじさんが減り、若い人が増えている気がしました。新聞やテレビ、ウェブのニュース関係者もたくさん会場に訪れており、伝統メディアの代表格である朝日新聞の取り組みへの注目度の高さを感じました。

昨年同様、冒頭に登場した木村社長は「紙かデジタルかというのは遠い昔の光景となった。いかに読者に伝えるか、役立てて頂けるか」と語り、「未来メディアプロジェクト」の成果として4つの事例を紹介しました。トップが、ある種の成果として紹介した事例を見る事で、会社の方向性を知る事も出来ます。シンポのサブタイトル「伝える技術、伝わる力」から分かるように、データジャーナリズムへの取り組みを強調していました。

ラストダンス

データジャーナリズムを増やしている」として木村社長が最初に紹介したのが、ソチオリンピックの際に公開したウェブ特集「ラストダンス - 朝日新聞デジタル」。フィギュアスケート女子の浅田真央選手の足跡を写真、動画、データ、テキストを交えて紹介したもので、ニューヨークタイムズが取り組んだ「Snow Fall: The Avalanche at Tunnel Creek - Multimedia Feature」のものです。

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制作の様子をITmediaが記事にしています。

ハフィントンポスト

次に紹介したのがハフィントンポスト日本版の開設。月間ユニークユーザーが1000万を超えたということです。

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メディアラボの開設

3つ目はメディアラボ。グーグルグラスを使ったコンセプトアプリである朝日新聞AIR開発やベンチャー企業への投資、というイベントも行っています。

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データジャーナリズムハッカソン

最後に紹介したのがデータジャーナリズムハッカソン。シンポジウムではハッカソンのグランプリ受賞チームによるプレゼンも行われました。

木村社長は「外部のエンジニア、デザイナーの方々と本社記者が社会課題を解決した恊働した初めての例となった」「ジャーナリズムの新しい可能性を感じさせた。伝えるから解決するへと変化はもう始まっている」とコメント、引き続き外部連携していくことを表明していました。

昨年同様に「朝日新聞とMITの取り組み」についてはどうにも分かりませんでしたが、朝日新聞がチャレンジしていることは伝わってくるイベントでした。

もう一つの成果は双方向性

 冒頭で触れたように、木村社長からはデータジャーナリズムというキーワードで取り組みが紹介されましたが、もう一つの成果は双方向性でしょう。

データジャーナリズムハッカソンは朝日の記者やデスクと参加者が一緒に取り組むものでしたし、ハフィントンポストは投稿サイトです。シンポもジャーナリストの津田大介さんがツイッターから質問を拾い、登壇者に投げかける(贅沢な人の使い方!)時間が設けられ、その瞬間は客席との間が近くなったように感じました。

双方向性という点では、朝日新聞は記者のツイッター利用も積極的に進めています。

ただ、ツイッターを日常的に利用している大学生に聞いても存在感はそれほどありませんし、本紙や取材活動への参加感といったオープンジャーナリズム的な展開は少ない状況です。新しい取り組みは、本紙や本社から独立した媒体(ハフィントンポスト)や組織(メディアラボ)で行われているから出来るということでもあるのでしょう。朝日新聞としての取り組みを感じるためには、もう一歩踏み込んだ取り組みが必要なのかもしれません。

なぜ大学生のプレゼンはつまらなくなったのか、就活が蝕む「面白さ」

この記事は大学生批判ではなく、自分が担当した講義の反省として書いている。

関西大学総合情報学部で「ネットジャーナリズム実習」という科目を担当している。起業家ジャーナリズム(Entrepreneurial Journalism)をテーマに、新たなニュースサイトやアプリを考えてもらう内容で、最終回はチーム対抗のプレゼン勝負となっている。(前期と後期は同じ授業内容)前期はなかなかユニークなアイデアが出て面白かったのだが、後期が大幅につまらないものになり、審査員も頭を抱えてしまうほどだった。来年度からの実習を充実したものにするため、なぜ、つまらなくなったのか、原因を考えてみたい。

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優勝チーム以外の得点が5割以下

「ネットジャーナリズム実習」の受講者は前後期ともに約30人。遅刻も少なく、授業態度は熱心なほうだと思う。ニュースについて幅広く考えてみた後、自分が作ってみたいニュースサイトやアプリを提案し、グループ単位で、競合分析、市場環境を行い、プレゼンするという流れだ。

後期の審査員は、同学部の岡田先生、松下先生、ゲストとして佐久間さんと自分で4人。採点は10点満点、5点が普通という基準なので、一つのチームが獲得できる最高は40点となる。結果は、優勝チームが23点、 2位以下8位までは20点を超えてなかった。つまり、優勝チームの以外は5割以下という残念なものとなってしまった。

審査員のうち松下先生と佐久間さんは前期も担当しており「前期に比べてつまらなくなった」と指摘されていた。講評では「高校生の半日ワークショップで出来る」というものから、「競合分析が出来てない」「ありがちなサービス」など厳しいコメントが相次いだ。前期と同じようになっていたはずなのに…

前期と何が違うのか

授業は一度として同じものはない。細かな違いの積み重ねが結果を大きく変えてしまうことがある。そこで前期との違いを振り返ってみた。

1)意外とスムーズに来た
前期は初ローンチの実習ということで試行錯誤だったが、後期はアイデア出しや競合分析もスムーズに来ていた。TAさんと「後期はスムーズだねえ」みたいな話をしたのだが、サービスをカタチにするところになって急激に失速した。壁に当たり難しいと思うところがなく、それが最後に来てしまったのかも知れない。授業の慣れみたいなのもあるのかも。
2)チームでの議論が不十分
個人のアイデアでは「面白そうだな」と思っていた事がチームで議論している間に急激につまらなくなった。前期はチーム内にこだわりを持って議論を推進する学生がいて(ちょっと空気が読めないタイプでもある)ワーワーやっていたが、後期はぐっと減った。この変化には気付いていたので、チームで議論をもっとするように指摘したが、プレゼンのまとめかたなど表層的な議論に行きがちであった。

この1)と2)は表裏である。ワーワーやっているとお互いの興味やこだわりがチームに共有されていくが、チームは当初まとまりに欠けるし、まとまらないまま終わってしまうチームもあった。一方で、スムーズということは表面的にまとまっているが、一皮めくればチームの誰もが「あんまり面白くないな」と思いながらやっていることもあり得る。
3)就活が近づいた
実はこの3)が一番大きな要因な気がしている。

キモは自分の面白さを発見すること

受講者は3年生が中心で、12月末になるとスーツ姿の学生も現れた。

この実習で取り組んでいる、自分の関心を元に→情報を収集(競合分析や市場分析)→サービスの強みを立て→プレゼンテーションする、というのは、就活の企業分析やESにも使える共通スキルで、TAさんも強調してくれていたのだが、ピンときてなさそうだった。逆に前期の受講生からは「あのとき取り組んだことが就活で役立ってます」と声をかけられる事がある。

この教員やTAが就活に役立つと強調すればするほど、「就活に役立たない」と学生が考えてしまう逆転現象のようなことはゼミでも起きている。その理由は推測でしかないが、いかにプレゼンをうまくやるか、それもある部分で突破するではなく、80点主義でまとめるか、という技術を学生が求めているからではないかと思う。

そうなると、授業前半の自分の関心を元に→情報を収集(競合分析や市場分析)の部分はそれほど重要なものとは思えなくなる。だが、大事なのは実は前半部分にある。

正直、大学生が考えるアイデアなどはたいした事がない。そこで、素朴な面白さや熱意が大事になる。ただ、素朴な面白さや熱意だけでは単なる思いつきに過ぎない。だからこそ、情報を収集し、他を分析することが大事なのだが…

情報を集めれば集めるほど自分の思いついたアイデアなんて、既に多くの人が発表していて、悲しくなってくるだろう。だが、そこで諦めてしまったら終わりだ。どんなアイデアにも穴がある。総合的には負けていても、ある部分なら勝てるかもしれない。自分が面白いと思った部分をいかに生かして行くかを考えることが大事になる。心折れそうになる困難な戦いだ。

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どれも80点を狙って、50点以下になる

「競合分析が出来てない」「ありがちなサービス」になる。個人では面白かったアイデアが、グループになるとつまらなくなる。その大きな要因は、自分の面白さを追求していないことにある。突破主義を選択するためには、あらゆる情報をしらべて「その一点で突破できる確立が高い」ことを確信しなければならない。思いつきだけで突破するのは単なる無謀だ。

どれも80点の良い感じでまとめる。それが出来れば良いだろうが、80点を取る為には120点を取りに行く努力が必要だろう。「まあこれくらい出来てればいいんじゃない」というのは50点以下になる。80点も、一点突破も、どちらが良いと言ってるのではない、相手や競合によって変わってくるだろう。身も蓋もないことだが、一点突破も80点主義も、努力を積み重ねなければ勝率を高める事はできない。

だが、楽して80点スパイラルは、就活が抱えている大きな問題と同じ気がしている。いかに小手先で乗り切るか、楽できるか考えて本質的な問いに向き合わない→だから就活がうまく行かない→もう自分が何をやりたいのかさっぱり分からない…となる構造だ。もう何がやりたいのかさっぱり分からない段階に来て、「君は何が好きなんだ?」と聞くのは最悪だ。だってもう何が何だか分からないのだから…

就活生がいきなり自己分析(最近は他者分析なんかもあるらしい)するのは、作りたいサービスもないのに市場・競合分析するようなものだ。やりたい事があるから、分析するのである。だからこそ、自分の軸を先につくっておく必要がある。

「面白い」を大事にする授業に

なんだかまとまらない文章なのだが、改善点をまとめておきたい。

まず、面白いと思う事を徹底的に話し合わせるようにする。「それ、本当にオモロイの?」と何度も聞く嫌な教員になろうと思う。特に個人からチームになったときに、しっかり議論を交わす事が出来るようにしたい。それと、スムーズに行き過ぎないように早い段階で壁に当たるようにしたい。面白い!と思える事に学生が気付く前に、テクニックの有用性を言い過ぎないようにもしたい。テクニックはあくまで手段で、学生自身が何かをやりたいと思った時に「あの授業が役に立った」と思ってもらえるようなものにしたい。

藤代ゼミ課題図書「変化するメディアを知る7冊」

代ゼミの2年生向けの課題図書です。書籍の選択理由は、読みやすくインターネットやソーシャルメディアの登場によるメディアの変化や構造が理解できる、社会とメディアとの関係や課題が書かれている、実践にあたり参考になる、Amazonの中古で安価に売られている、です。

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さとなおの愛称で知られるコミュニケーション・ディレクターの佐藤さんの著書。自身でウェブサイトを運営、電通時代はその名前を冠した「サトナオ・オープン・ラボ」が開設された。冒頭のラブレターの話から、分かりやすくインターネットの登場によって変化するメディアと人々との関係を描く。スラムダンクの事例など、広告、メディアへの愛あふれる本。

Web2.0というバズワードのきっかけになった本。梅田さんは「日本のウェブは残念」という迷言?を残したが、この本で書かれている変化への洞察は色褪せていないし、当時の雰囲気も分かる。楽観主義だけでは社会を変えることはできないという反省の書としても良い。

津田さんは多作でどれを選ぶか悩んだが、リアルタイムで双方向なソーシャルメディアの変化をいち早くつかんでまとめたこの本にした。扱っている分野もジャーナリズム、政治、ビジネスと幅広い。最近あまり語らないtsudaるに関しての項目では、情報をまとめて伝える技術が紹介されている。

7冊の中では最も新しい。ソーシャルメディアやスマートフォンの登場で、現実空間の中にウェブが入り込むことで「現実の多孔化」していると指摘する。社会学、メディア論として学ぶところが多い。教科書として各大学で使われるのは間違いない。

ビジネス系サイトNo1に躍り出た東洋経済オンラインの若き編集長佐々木さんの本。海外次の事例も多く紹介されている。これまで多かった「マスメディアもうダメだ」本ではなく、サバイバルのためにメディア運営者が何ができるのかという視点で書かれた本は少なく参考になる。次世代ジャーナリストの10の生き方、の分類も面白い。

ライティングの授業でいつも参考書にしている。テーマと論点の違いなど、普段は何気なく書いていることを整理してくれる。「なぜ抗議の声は届かないのか」「正論を押し付けても意味が無い」。相手の立場にたち、根拠を示すことの大事さを説く。お願い文、議事録、など実践編もあり。

著名な文化人類学者で、国立民族学博物館の初代館長、「情報産業」という言葉の名付け親の梅棹さんの短編をまとめている。7冊の中で最も古いが、いまだに色褪せない情報に関する深く、鋭い洞察が並び、読みなおすたびに新しい発見があるまさに名著です。

上記の書籍を毎週1冊読み、小レポートを提出してもらう「秋の読書祭り(注:白いお皿は当たりません)」を実施しています。理由は、広告業界に関心があるのにさとなおさんの『明日の広告』を読んでいないゼミ生がいて衝撃を受けたこと&ゲスト講師に来てもらったヤフーの伊藤さんからニュースや社会事象について関心がやや乏しいことを指摘されたこと、です。

ゼミでは知識と実践を掲げているのですが、やや実践に偏りすぎていたと反省してます。来年度は早い段階でゼミ生には課題図書を読んでもらうつもりです。

沖縄でゼミ合宿を行いました

法政大学藤代ゼミでは、沖縄で初のゼミ合宿を行いました。 台風の影響で飛行機が遅れることはあったものの無事に終了しました。
合宿の行き先、テーマはゼミ生が考えた、沖縄のイメージとギャップ。役場や観光施設、メディア、米軍基地、商店街、などで取材活動を行いました。取材に応じて頂いた皆様、ありがとうございました。

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「いいですね海」と何人かに言われたのですが、観光や懇親ではなく取材が中心です。ゼミ生は日中は各地で取材をグループまたは一人で行い、夜は宿舎に集まり報告などのミーティングを行いました。取材方針や翌日どこを調査するかなど、深夜まで議論を行いました。
ゼミ生が日中どんな活動をしているか、本当に取材しているか、同行していないので分かりませんが、夜のミーティングで出た意見を聞けば、問題意識を持って取材をしている様子がうかがえました。最終的には2,000字から3,000字の原稿を書いてもらうことにしているので、出来映えが楽しみです。

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ゼミ生が予想以上に自立的に活動してくれたので、空いた日中の時間を使い、久しぶりに旧知の地元紙関係者に会ったり、ソーシャルメディアの活用状況のヒアリングを行ったり、することが出来ました。ゼミ生の原稿は良いものがあればブログなどで紹介する予定です。

オープンキャンパスの取り組みが町田経済新聞に掲載されました

8月3日に行われた法政大学のオープンキャンパスで取り組んだ「記者体験プログラム」が町田経済新聞に掲載されました。

高校生が記者体験-法大生が企画、箱根駅伝チームに取材も(8月6日)

オープンキャンパス体験授業の一環で、社会学部メディア社会学科のゼミ生が企画・運営・広報を全て担う初の試み。同大箱根駅伝チームの協力を得て、選手の記者会見を準備した。

 オープンキャンパスの企画、運営、広報活動はすべてゼミ生が担当。ツイッターでのお知らせや新聞やニュースサイトへの取材依頼も取り組んでもらいました。

取材に来て頂いた、町田経済新聞の宮本編集長によると、法政大学は町田の西端にあること、最寄り駅の京王線めじろ台や中央線西八王子駅の担当は八王子経済新聞になるので、取り上げることが少ないといのこと(ちなみにもうひとつの最寄り駅、横浜線相原は町田市だが…)。

当日の模様は、法政大学社会学部オープンキャンパス2013の様子(ブログ)でも紹介しています。