ミュージカルのパンフレットに解説を寄稿してほしいー 宛先を間違えたのではないかと思うようなメールが届いたのは11月初旬のこと。送って頂いた脚本を読み、稽古を見学し、ミュージカル「GREY(グレイ)」のパンフレットに無事に解説は掲載されました。「GREY」は、リアリティ番組とSNS社会をテーマにしています。
招待頂き六本木の俳優座劇場に観に行ったのですが、SNSの誹謗中傷が次々と表示される中で歌うという演出は衝撃的でもあり、私たちが作ってきた社会の過酷さがズシンときました。脚本・演出の板垣恭一さんも「あそこは早くから考えてたとこです」とおっしゃってました。
ただ重いというのではなく、主人公のshiro役の佐藤彩香さんの透明感に救われ、各所での小ネタでちょっと笑い、素敵な音楽に包まれ、エンタテインメントとしても楽しめるものでした。ラストシーンに近いところで、矢田悠祐さんと高橋由美子さんが二人で歌うところが特に良かった。
メディアやネットに関わる人は必見だと思いますし、若者たちの生きづらさを描くという点においても、一緒に観に行ったゼミ生が「自分のことのように、とても刺さった」と話していました。
ミュージカルで現代社会を扱うというのが興味深く、プロデューサー宋さんに取材記事も書きました。宋さんには、こういうテーマを扱ってくれたことに感謝したいともお伝えしました。
普段はフェイクニュースなどのSNS社会の課題を、新聞や雑誌に書いたり、テレビで解説したり、しています。2021年はフェイクニュース研究を『フェイクニュースの生態系 (青弓社ライブラリー)』にまとめて出版したのですが、それほど大きな反応があったわけではありません。ミュージカルでこれまで届かなかった人たちにも考えてもらう機会を届けることができることに、エンタテインメントの力を感じました。
ここ数年は研究に集中していたのですが、仕事の幅を広げろというメッセージと受け止めて、2022年からは本質的でありながら、面白いこと楽しいことを忘れずに、新しいことに取り組んでいきたいと思います。