ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

インターネットで人がつながるということ

「最近ブログつまらなくないですか?」の書き出しで始まるRTCカンファレンスの告知が発端となり話題となった「ブログ限界論」。いろいろなブロガーがエントリーを書いているのを、AMNの徳力さんが「今」のブログが面白いかつまらないかより、どうすればもっと面白くなるかを考えたい(tokuriki.com)でまとめてくれています。仕事とか、原稿とか詰まっていたりするのですが(関係者の皆様ごめんなさい)、ある人と会って、その話がとてもよかったのでRTCを前にブログに書き留めておきたいと思います。
その人は、地域社会でいろいろな活動をやっている方。グループの立ち上げや取りまとめもやっている中心的な存在です。仕事人間だったその人が、地域で活動することになったきっかけはパソコン通信との出会い。で、「パソコン通信には夢があった。何か社会を変えられるんじゃないかと思って始めたけれど、結局それは実現せずにしぼんでしまった」とおっしゃっていた。

徳力さんは、先に紹介したエントリーで

ブログを通じて感じた未来の変化に大いに期待をしていた(しすぎていたという方が正しいかも)、自分のような人間からすると、これまでのところブログが思ったほど大きな変化を引き起こしてくれていないように感じてしまうのも事実です。

と書いていましたが、私も同じように思うところがあり、その人に「ブログの世界でも同じような議論が起きています」と状況を説明してさらに話を聞いてみました。

未来の変化への期待や、一部のマスメディアが批判するようなネットだけで閉じこもっているユーザーがいることは「昔と同じ。そういうのが目立つだけでしょ」「パソ通時代に会った人はほとんどリアルで活動していない」。最終的には「現実に入らないと何も変わらない」。

なぜ、失望したけれど続けられたのか。「うーん、志かな。結局」

「ネットがなければこれだけの活動はできなかったと思います?」とも聞いてみました。「いや、ネットがなければとまでは言わないけど… もしかしたら規模が小さくなっていたかもしれない。ネットは便利で効果的なツールだから」「コミュニティを維持するのに重要なことは、きちんと連絡があること。情報発信をしていても人は忙しかったり、別のことに興味をもっていたりするもの。でも、情報が共有されていればいままで無反応だった人がイベントにやってきたりする。何かあるときに100人のうち1人が反応したらいいと思うと続けられる」

ブログやSNSは、人と人とをつなげるツールですが、情報発信していると時々反応がなくて「届いているのかな」と思うこともあります。で、ちょっと自信がなくなったりしてしまう。けれど、重要なことはつながりを信じて発信していれば、必ず見てくれている人がいるということ。この考え方には共感できました。

例えば、ネットではリアルでの行動を意識したり、ポジティブに発言したりするのは、あまり評価されない(というよりはネタになってしまう)と思っている人もいるかもしれませんが、ネガティブや冷笑からはあまり新しいものや良い出会いは生まれない。だから、誰かが読んでくれているのを信じて発信していれば、きっといいことがあると私は思っています。

それと、別れ際に失礼を承知で「パソコン通信をはじめたときに仕事の状況はどんな感じだったのでしょうか」と聞いてみたのですが。「うーん。ちょっとつまんなかったかな」と照れながら話してくれました。

人は悩んだり、壁にあたるとつながりを求めるものです。神経細胞がつながる瞬間みたいにぐっと伸びて、つながろうとするんだろうなと思います。そこでつながったっことで満足してしまう人もいるし、もっとつながったり、情報交換してそのつながりを太くする人もいる。人それぞれだから(期待しすぎて)「がっかり」しないで続けていけばいい。緩やかにつながっていれば、またそのつながりが復活することもある。でも、切れてしまえばもう一度つなげるのは大変です。

人と人との出会いやつながりは、いつの時代でも大事なことですが、パソ通、ホームページ、掲示板、ブログ、SNSとサービスが進化するにつれて、つながりやすくなっています。多くの人が色々なツールを使うことで、人生の出会いや幅、考えがちょっと広がって、豊かになるというのは、いいことだと思いますし、私もブログでもそういう経験ができたと実感しています。

新しいサービスやツールについてまわる夢に失望しても、前に向かって進めば、また新しく状況が開ける。「ブログ限界論」というのはブログを書いている人の限界でしかない。自身が新しい未来を望むなら「志を持ち、つながりを信じて、行動せよ」。そんなことを改めて教えてくれたような気がした、とってもいい出会いでした。
ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)
追記 夢と失望の話を聞いて、最近読んだ梅田望夫氏の新刊「ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか」が頭に浮かびました。
この話をしてくれた人も、パソ通に「夢がある」「社会が変わる」と(振り返ってみれば)勘違いしたから一歩が踏み出せた。そう考えると梅田氏の言葉を信じて何かに一歩を踏み出してみるのも悪くないのではないでしょうか。もちろん、最終的には自分自身が「何をするのか」にかかってくるわけですが、最初の一歩のために勘違いというのは案外素敵なんじゃないかと思ったりしています。