ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

東国原知事に学ぶメディアリレーションとメディアリテラシー

先日宮崎県知事に当選したそのまんま東(東国原)氏の活動がメディアから注目されていますが、東国原知事のイメージメディアリレーションの力量(地方政治、地方自治の力量ではないです)の一端が宮崎県がホームページで公開している知事記者会見の動画から垣間見えます。


YouTubeにもアップされていますが、やりとりの一部を抜粋するとこのような感じ。

知事:アンケートもなくあなたはいま反対が多いとおっしゃっている。何を根拠におっしゃっている?

記者:先ほど言いましたよね、わが社に少なからず電話がかかってきています。

知事:賛成の電話はかかってないでしょ。

記者:賛成かかってきますよ、比率が極めて少ないというだけで。賛成する人はわざわざ電話かけてこないですから。

知事:ですね。公平、公正、中立なアンケートに基づいて発言をお願いします。

宮崎県のHPでも確認しましたが、このやり取りは副知事の選任問題についての質疑。東国原氏が選挙戦で戦った対立候補を副知事に起用するということに、反対する世論が多い(会見の前のほうでは有識者や街の声を聞くと「リコールに相当する」という声もあるがとの質問もしています)が、どう考えているのかと記者が質問したことに答えています。改めて言うまでもありませんが、記者の発言の根拠のなさは知事によって論破されています。

まだまだ判断材料は少ないですが、とりあえず現時点では東国原氏のメディアリレーション能力は高いように思われます(ただし、つい調子に乗ってしまってうっかり発言というのも良くある話)。

記者会見は、動画にテロップで突っ込みを入れられるニコニコ動画でも紹介されています。
タイトルは「東国原知事2007/2/5記者会見 粘着して副知事の質問をするマスコミ」。

一言突っ込みは「報道被害の正しい用法」「年下が知事に対する言葉使いか!!!」「何この記者の態度」「この記者態度悪いな」と辛らつな批判が並びます。

これらの動画を見ても分かるようにマスコミは本質とは違ったところで、記事になる「おいしい言葉」を虎視眈々と狙っています。これは企業にとっても他人事ではなく、絶好のメディアリレーションの題材になると思います。

一方、読者や視聴者にとっては、マスコミがどのような取材を行ってから記事や映像になるのかが分かります。私たちはマスコミやブログ(このブログもそう)といったフィルターを通して情報を得ているので、メディアがどのような意図やフレームを持って伝えているかを知るのはメディアリテラシーの観点からも有益と言えるでしょう。

この記者会見、記者クラブ加盟社以外のメディアも参加しているらしく『加盟社外の方がこの会見を報道する際は、各社の質問の背景を十分汲み取っていただいた上で報道してもらいたい』と予防線をはっているわけですが、記者会見のやり取りが自治体から公表されるようになった今、記者にも背景や意図を十分に説明した上での質問を行う能力が求められているような気がします。大変な時代になりました…

◇参考になる本をご紹介しておきます◇
マスコミ対応緊急マニュアル―広報活動のプロフェッショナル
マスコミ対応緊急マニュアル―広報活動のプロフェッショナル」広報の観点から見たクライシスマネジメントがまとまって紹介されています。チェックリストもあり、実用的です。










メディア・リテラシー―世界の現場から (岩波新書)
メディア・リテラシー―世界の現場からメディアリテラシーの教科書的存在。外国の事例が中心ですが参考になります。