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ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

藤代ゼミ課題図書「メディアの今を理解するための7冊」2017版

代ゼミでは、春学期・秋学期のスタート時に、7-8冊の指定図書をゼミ生全員で読む「読書祭り」というイベントを行っています。春学期のテーマは「メディア」、秋学期は「ジャーナリズム」です。2013年に一度指定図書を紹介したのですが、少しずつ書籍を入れ替えているので、改めて2017年版を紹介します。

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さとなおの愛称で知られるコミュニケーション・ディレクター佐藤さんの著書。早くからウェブサイトを開設し、電通在籍時代はその名を冠した「サトナオ・オープン・ラボ」が開設された第一人者。冒頭のラブレターの話から、分かりやすくインターネットの登場によって変化するメディアと人々との関係を描く。スラムダンクの事例など、広告、メディアへの愛あふれる本。まずは、この本からスタートです。

人工知能(AI)による記事作成、名場面の自動編集、広告配信など、メディアに関係するAIのニュースもたくさん報じられるようになりました。分かるような、分からないような…言葉だけが先行しているようにも見えるAIについて整理されている分かりやすい入門書。ゼミでは、機械学習を用いたニュース研究もやっているので、他のチームでもこの本の内容ぐらいは分かっておいてもらわないと、という感じです。かなり分厚いですが『ポスト・ヒューマン誕生 コンピュータが人類の知性を超えるとき』をじっくり読むのもいいでしょう。

社会学者北田さんの著作、2002年に出版、2011年に増補版が出ています。パルコに代表される80年代的な広告に触れながら、巨大なメディア空間である都市の変化を追っています。広告論としても読めますが、都市論としても面白く読めます。2020年の東京オリンピックに向けて大きく変化する渋谷、そして東京を見ながら、この本で80-90年代を振り返るというのはとても意味があると思い、今年からラインナップに加えました。『都市のドラマトゥルギー』の併読をオススメ。

活動家であるパリサーは、グーグルの検索結果が閲覧履歴によってひとりひとり異なり、他の人が見ている情報ではない自分の好きな情報に囲まれるフィルターバブルが起きていると警告しています。2011年に出版、邦訳は2012年と、フェイクニュースやネットによる社会の分断が話題になる前に書かれているので、やや細かいところが気になる方もいるかもしれませんが、見通しが興味深いです。

「予言の書」と言われるこの本は、「ほぼ日刊イトイ新聞(ほぼ日)」を始めたばかりの糸井さんが、ネットでつながるという価値や社会の変化について2001年に「やさしく」書いたものです。読んだ時に「なんだ、当たり前のことを書いている」と思い、発行年を見て驚いたのを思い出します。「おいしい生活」という西武百貨店のコピーを生み出し、消費文化の担い手となった糸井さんの経歴を踏まえ、インターネット的を読んでから『広告都市東京』を読み直すと新たな気付きがあるでしょう。

ソーシャルメディアスマートフォンが登場した社会を俯瞰的に捉える本として鈴木さんの「ウェブ社会のゆくえ」を選びました。鈴木さんは、現実空間の中にウェブが入り込むことで、公私の境界があいまいとなり、目の前にいる人ではない人と携帯でつながるような「多孔化」を生んでいると指摘しています。社会学、メディア論として学ぶところが多くあります「多孔化」した社会をどう生きるのか、自分の「リアル」に引きつけて読んでもらいたい一冊です。

例年、最後に読んでもらう不動のトリ本がこちら。著名な文化人類学者で、国立民族学博物館の初代館長、「情報産業」という言葉の名付け親の梅棹さんの短編をまとめたものです。7冊の中で最も古いのですが、いまだに色褪せない情報に関する深く、鋭い洞察が並び、読みなおすたびに新しい発見があるまさに名著です。多くのゼミ生が苦戦するのですが、何度も読み返すうちに理解が進みます。簡単に読める本なんてつまらない、歯ごたえがあるから面白い。文体や事例が古いのに「今」なんて分からないではなく、共通項を見出して欲しい一冊です。

 

書籍の選択理由は、読みやすくインターネットやソーシャルメディアの登場によるメディアの変化や構造が理解できる、社会とメディアとの関係や課題が書かれている、実践にあたり参考になる、Amazonの中古で安価に売られている、です。 例えば、キャス・サンスティーンの『インターネットは民主主義の敵か』も良いのですがAmazonで見ると高騰しているので手が出ません…なお、『明日の広告』、『ウェブ社会のゆくえ』、『情報の文明学』の三冊は読書祭りスタート時から変わらずに残っています。

  

秋学期の「ジャーナリズム」課題図書は以下の記事を参考にしてください。今年はジャーナリズム関連の良い書籍が多く出版されているので入れ替わる可能性が高そうです。

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