スタンフォード大学で開催された「The Computation+Journalism Symposium 2016」 に参加してきました。タイトルは「 Make it go viral - Generating attractive headlines for distributing news articles on social media 」で、藤代ゼミがNTTコミュニケーション科学基礎研究所(CS研)と行っている共同研究によるものです。昨年のデータマイニング系の国際会議CIKMに続いて、海外で成果を発表できました。
シンポジウムは、データジャーナリズムや人工知能による記事やタイトル編集といった、テクノロジーとジャーナリズムが融合した分野の研究成果や実践がテーマ。
参加者もニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストといったレガシーメディアのジャーナリストや研究者だけでなく、バズフィードやグーグルなどからと幅広いものでした。初日は会場の座席が全部埋まり、床に座って見ている人もいて盛況でした。
発表が割り当てられたセッション“How to Grab Attention”は、リオ五輪で話題になったワシントン・ポストの速報ボット、同じくワシントン・ポストのヘッドラインのサジェストシステムと一緒でしたが、これらは非常に興味深いものでした。
ワシントン・ポストの発表者のどちらも大学でコンピュータサイエンスを専攻していました。
このシンポジウムに限らず、国際会議のパネルや論文を見ると、特にアメリカを中心に、メディア内にいるコンピュータサイエンスの研究者やデータサイエンティストから、ニュースのタイトルやどう読まれるかや拡散に関するの研究が出始めています。
例えば、データマイニング系のトップ級国際会議KDDでは「How to Compete Online for News Audience: Modeling Words that Attract Clicks」という論文が出ています。執筆者はヤフー(Japanではない)と韓国の理工系トップ校KAISTの研究者です。
一方、日本では、メディア側もテクノロジーに興味が乏しく、研究者側もあまり盛り上がらず…というところなのですが、ジャーナリズム✕テクノロジーの分野は世界と戦える分野なのではないかと思っています。
真正面からデータマイニングやAIの研究をしても、アメリカ、中国、シンガポールの研究が圧倒的に強いわけです(昨年のCIKMでも日本からの発表者は非常に少なかった)。タイトルのサジェストや記事の要約、自動作成などは、確実に進んでいます。大切なことは技術をより良い報道、社会のために利用することで、コンピュータサイエンス側だけで進んでいく状況には危惧があります。
日本は報道に関する制約も世界に比べると少なく、ソーシャルメディアの利用も活発、コンピュータサイエンスの研究者のレベルも高く、条件が良いです。一緒に研究に取り組んでくれる企業や研究者を募り、ジャーナリズム✕テクノロジーの研究拠点を作って世界を狙っていきたいところです。
メディアのイベントなどにいくと、アメリカなどの海外事例をありがたがる「出羽の守」(アメリカでは、イギリスでは、という人のこと)人もいますが、未来というのは自ら切り開くものです。
その他、シンポジウムの様子も少しご紹介。2日間とも8時30分からスタート。建物の外に、パンやコーヒーなど軽食が並びます。初日は広大なスタンフォード大学内で迷子になるという失態…
ランチはGoogleニュースラボによるサポート。ケータリングが意外に美味しくて嬉しかった。
1日目の最後はいくつかのデモを囲みながらビール&ワインの交流会。日本からスタンフォードに留学して、たまたまシンポジウムを見た方に声をかけてもらい、少し話が出来ました。
写真では半袖の人がいますが、肌寒くてビールを飲む気にはなれませんでした…
参考:昨年のCIKMの発表論文はPDFが公開されています「Identifying Attractive News Headlines for Social Media」