ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

受験生を増やす 学習院大学のキャッチコピーを考える

学習院大学法学部政治学科での講義「メディアリテラシー −情報の受け手から発信者へ−」は、中間レポートとして、学習院大学のキャッチコピーを考えました。目的は受験生を増やすことに設定。思い付きにならないように、理由やターゲット、どう伝わり、キャッチコピーのどの部分が効くのかも考えてもらい、ゲストを迎えて「課題大喜利」で議論しました。

課題大喜利は、ツイッターでのやり取りで着想したもの。
学生にお題にそった事前課題を出してもらい、面白いものをピックアップしてコメント、学生には質問して理由も聞きます。ツイッターでは「サンデルメソッド×ケータイ大喜利」と書き込まれていましたが、事前課題に突っ込む形式なので100人を超える大教室でもインタラクションが生まれ、ゲストが複数いることで多様な観点から議論が行え、メディアリテラシーの観点からも有効でした。
ゲストは、思いつきのアイデアにツイッター上でからんでくれた、境さん(@sakaima)、森永さん(@lO_olx_xlo_Ol)、吉川さん(@yoshikma)、細川さん(@bmidvar)、佐藤さん(@hinasoyo)、山口先生(@HYamaguchi)の豪華メンバー。まずゲストそれぞれが、面白いと思うキャッチコピーをピックアップし、気になったポイントを説明、学生に質問します。どんなやり取りがあったのか一部を紹介します。
細川さんは「近い」に注目。目白駅から近い、駅前大学、新宿駅から約10分など、複数の学生が指摘していました。その中で

  • 全てに「ちかい」学習院。
  • 近い…近すぎる

をピックアップ。細川さん『「ちかい」がひらがなだったので、誓いも含まれているのかと思ったがどうか。「近い…近すぎる」というのは危険な感じがある。何がすぎるのか?』。近い…近すぎるを考えた学生は、こんなストーリーをコピーに込めたそう。

新宿から電車に乗る女の子。目白駅を出たところで、雨が降ってくる。「あーあ」
年上の男の子が話しかける「傘、入る?」
女の子「先輩!」(笑顔)傘に入って歩きながら「最近、学科のほうはどうですか?」
男の子「楽しいよ。夢に向かってるって感じかな。」
女の子「へぇ…(かっこいい←小声で)」
雨強くなる 距離が近くなる けれどもう校舎  
女の子 「近い…近すぎる」

なかなか意味深で、学生は『駅から近い、先輩や友達との距離が近い、先生との距離が近い、自分の夢への距離が近い』と説明したのですが、女の子が「もう少し距離が長ければ」と思うぐらい近いというアピールも出来そうです。
森永さんは、学習院の競合校を質問。「MARCHは競合?」に半分以上が挙手。『受験生を増やすとしたら、何にひっかかって受験するのか、どこと比べるのかを考えるのが大事』とアドバイス。

  • 宮崎駿を生んだ目白の杜でキャンパスライフ
  • 巨匠・宮崎駿を生んだ豊島区細大の緑地〜目白の森〜

について『宮崎駿は受験生にどんなメリットがあるんでしょう』。学生は『卒業生ということで宮崎さんを選んだ。ジブリはイメージがいい。他の大学と比べて都心にもかかわらず緑が多い、そのイメージを受験生や両親に持たせたい』『受験生というよりも親のイメージを大事にした。学習院の卒業式に親や祖母・祖父が来ていることもある。親が大学選びに口を出すので、親にターゲットを絞って、ジブリと環境のよさをアピール』。
境さんは「あざとい」と言いつつ

  • 「学習院大学の。。です。」って何かよくないですか? 。

学生は『大学のオープンキャンパスに行ったことがあるが、膨大な資料をもらって読むが、入学するまで分からないことがたくさんある。一番分からないのがネームバリューと考え、親や自分が紹介するときに、学習院大学の。。と説明したらいいと思う』。
山口先生は

  • みんな大切な私の家族だよ。お帰りなさい

に『だよ、というぐらいだから女の子イメージだと思うが。どんなキャラですか?』と突っ込み、学生は苦笑い。
細川さんは

に『オレンジデイズ何か分からないので教えてください』とわざとなのか、天然なのか分からない話を振ると、学生が『テレビドラマです。妻夫木聡柴咲コウが出てます。駅から近いや、就職率も大事だけど、高校生が気にしているのは遊びもある。憧れ、楽しいイメージを連想させる。楽しいという言葉を使わずに。ドラマでイメージでき。憧れ・楽しい=オレンジデイズというキーワード。ターゲットはそんな華やかな大学生活に憧れてる高校生』。
細川さんが『短いコピーですべてを伝えるのは難しいから、イメージを借りて伝える手法はある』、佐藤さんも『タレント広告も同じ構造。この商品はこの人が使っている。ただ、オレンジデイズ=学習院でいいのかというのは気をつけたい』。

ゲストが学生を放置気味で盛り上がったのが

  • 希少な男女比率5対5、調和のとれた学習院

『5対5といっても女性が早稲田に取られる』近いネタにからんで『ポンジョ(日本女子大)が近いのほうが魅力では』という男性目線に置いてけぼりとなった女子学生に配慮したのか、境さんが提案した「これは男性側からのキャッチコピー。女性向けメッセージをつくるとなると」にゲストが挑戦。森永さんが「婚活、ワンランク上」「最後に選ばれるのは学習院女子(ブランド)」、細川さん「学習院女子の私を着て歩こう」、境さん「みんな大好き学習院女子」と脱線。ここからなぜか、狸の話に。

  • ぼくと、わたしと、あなた。と、たぬき。

の理由を聞くと学生が『たぬきを付け加えて、これは何だろうとネットで調べてほしいと思った』と話したことで、吉川さんが『いままでの広告コピーは、自分はこうだと主張するものが多かった。これって何だと突っ込みを入れさせてくれるのがいい。意外にやりよります、新しい品格とか、何だろうと思ったコピーが気になる』と反応。学生に聞くと「コピーに全部メッセージを込めた」が3割、「調べたり、検索を意識した」が4割でした。
良かったのは、6人のゲストがそれぞれの視点があるので、普段一人でやっているときには選ばないだろうと思うようなコピーがいくつも紹介されたこと。メディアリテラシーにとって、多様な視点は大事ですが、「大事ですよ」と話していても実感が乏しいところを、目の前で見せることができました。
ゲストが、驚いていたのが、学習院が第一志望の学生が少なかったこと。そこで、第一志望の受験生を増やすキャッチコピーを考えてもらう事に。
ゲストからは「学習院が好きでない人は好きになって、好きな人はどうして好きなのか考えて」「学習院かーと人に言われたとき、イラっとすることは何か。そのとき何と言い返したいか?を考えて」「学習院のことをよく知らない人のことも意識して」「世間のイメージに対して強調するのか、対抗するのかも大事」とのアドバイスが。
また、授業の終了後にゲストの方と意見交換したのですが、学習院が好きという学生が多いにもかかわらず、不思議なほど学生に自信がなく、コンプレックスがあることが残念という話になり、「もしかしたら、学生ほど教員や大学職員が学習院を好きでないのでは?」「GMARCHという位置付けを受け入れるのではなく、別の価値をアピールしたらいい」と議論も盛り上がりました。お忙しい中、講義に参加して頂いたゲストの皆様、本当にありがとうございました。
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