ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

ニュースとは何か 新聞記事から考える

学習院大学法学部政治学科の講義「メディアリテラシー 情報を読み解く力をつける-」では、新聞記事からニュースを考えるグループワークを行いました。300人近い受講生がいるのでグループワークは苦労するのですが、学生の協力によって進める事が出来ました。

学生には新聞記事を切り取り、その記事の概要となぜ気になったのかの理由を書くという事前課題に取り組んでもらいました。学生が選んだ記事は多様で、法学部ということで裁判関係もあれば、東日本大震災もありました。ジャンルも政治や経済から暮らし、町紹介まで。このような多様な「気になった記事」から共通的に考えられるニュースとは何かをグループで議論します。定義を学ぶのではなく、議論から多様な視点を知りながらニュースが何かを考えるのが狙いです。
学生のフィードバックシートの反応が良かったのは、「ニュースは電波であり、人によっては圏外にもなる」という結論。
4人が選んだのは
1)扇風機旋風(朝日新聞)概要:節電で扇風機が売れている、理由:こんなところにまで影響が出ているとは思わなかった。自分も扇風機を倉庫から取り出したと共感した
2)ハーグ条約 親権制度の違いに配慮を(産經新聞社説)概要:国際結婚が破綻した場合の子供の国外連れ去りに対処する条約への加盟を正式表明した、理由:国際結婚が増えてトラブルが起きやすくなったのではと考えた
3)TSUBAKI露でデビュー(産經新聞)概要:資生堂がロシアで高所得者向けだけでなく中価格帯に力を入れる、理由:自分が使っているTSUBAKIが話題になっている。海外でも価格が重要であることが分かった
4)ひちょり小谷野が場外乱闘!?(日刊スポーツ)概要:プロ野球交流戦でのエピソード、理由:観戦していた出来事が記事になった。脚色されているなあと感じた。
これら4つの経済、社説、スポーツの記事。グループの学生はお互いに記事を知らなかったことから、「まだ一般に広く知られていない情報」と考えます。それから、発信者が伝えたいと思ったことが情報、需要はあるが万人の需要があるとは限らない、ニュースは堅苦しいものだけでない、報道とニュースは違うのか、歴史になるものだが未来予測もある…、ニュースは波紋のように広がって行く、だがニュースは多様でひとつに絞れない、などを経て「ニュースは電波のようなものである」に「人によっては圏外もある」付け加えられました。
他にも「周りの空気を読んだ上で受け手に伝えたいと思って発信されたこと」「発生した事案自体はニュースとは成り得ず、第三者に触れることでニュースとなる」「誰かと共有したくなる自分にとって新しい情報」「ある事象を人々の興味にする手段」など、それぞれのグループごとに議論の結果が提出されました。
ジョージ・バーナード・ショーの有名な言葉がある。「新聞とは、自転車事故と文明の崩壊の区別がつけられない道具である」。この言葉は「文明の崩壊」よりも「自転車事故」のほうをずっと「ニュースの価値がある」と見なしかねない新聞に対する批判を含んでいる…』と皮肉で始まる「ジャーナリズム用語事典」のニュースの項目は、研究を紹介した後『せわしないニュース・ルームに慣れようとする新人記者にとって、少なくとも最初はニュースの判断速度はめまいがするようなものだし、ニュースがニュースとされる理由もまったく不透明である。こうした場合、ニュースとはニュース編集者がニュースだと言うもののことである』としめられています。
皆さんにとってニュースとは何でしょうか。