札幌市円山動物園での取材を前に企画を考える
5月からスタートした北海道大学の科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)の「選科B演習(サイエンス・ライティング)」での講義も5回目となりました。次回は札幌市円山動物園にお願いして取材させてもらえることになっているので、企画を考えて取材依頼書に落とし込むのが今回の内容でした。
受講生の皆さんには課題として「こういう記事がかけそう」という取材メモを出してもらいましたが、結構面白いものがありました。課題の条件は、動物園に関するニュース記事を書くのが前提、切り口は「科学」(幅広い意味で取ってよい)であることの二つ。個人的に気になったメモをいくつか紹介します。
- 世界各国からお取り寄せ?動物たちの食生活(動物は世界各国から来ているので、日本では手に入りにくいエサが必要なのではないか)
- うんちの行方(毎日大量に出る動物の排泄物をどう処理しているか。天王寺動物園ではゾウのうんちを堆肥にして無料配布しているが円山ではどうか)
- 動物園に見る建築デザイン(動物園の施設は何をコンセプトとしてデザインされているのか、今後どうなっていくのか)
取材対象が動物園ということで、動物そのものや飼育係に注目したものも多くありましたが、私は天邪鬼なのでちょっと外した切り口のものを選びました(王道の話題がニュース性がないわけではありません)。
「世界各国からお取り寄せ」はキャッチコピーがうまい。同じテーマを扱ったメモでは「エサのフードマイレージ・ランキングから見る動物園」というのもあり、こちらは原油高騰という話題を絡めて時事性もありました。
建築デザインは、不確定要素が多いですが社会における動物園のあり方を映し出す可能性があります。施設系では「水利用」「臭い対策」「危機管理」といったものもありました。動物園なのに植物担当者に注目したものも面白かったです。
臭いやうんちについては、身近な話題なので言われてみれば「そんなの皆関心あるよ」という人もいるかもしれませんが、実は意外にニュース記事にはなっていません。受講生も事前調査のために記事や資料を調べていますがネット上にはあまりなく苦労しているようです。
「なぜ?」「どうなっているんだろう?」と思うアンテナ力が、良いニュースを掘り起こす力になります。ライティングの講義にもかかわらず、6回目になってようやく取材と記事執筆に取り掛かる理由は、この思考力の鍛錬にあります。
もちろん事前の取材、実際に取材してみたらまったく予想と違っていたというのは良くある話なので、取材をしてからも試行錯誤が続くわけですが、実は書く前にアウトプットの質はある程度予想できます。取材メモを見て「つまらない」と感じれば、実際に取材したところでヒット記事になる確率は低い。まず、自分自身がワクワクしていないとみずみずしい記事にはなりません。
面白そうな話題、切り口を見つけたら、「なぜ」「どうして」自分がそれを面白いと思っているのか、他の人も思うのか、その理由は、社会的な意味は、と思考していくことでクオリティを上げていくことができます。
受講生の皆さんから面白い切り口が出ているのは、これまで取材・執筆に手をつけずにワークショップなどをやってきた成果がでていると感じています。動物園での取材では、自分の思いをカタチにしていく楽しさと難しさを感じてもらえればいいなと思っています。
そういえば社会部に配属された新人記者は必ず見たという(今は見ないと思うけれど、私が記者になったころは記者クラブに積んであった)元読売新聞記者の大谷昭宏氏の漫画「こちら大阪社会部」でも谷やんが動物園取材をしていたなぁ〜
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