ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

北海道大学・CoSTEPセミナーに参加してきました

北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニットCoSTEP(コーステップ)セミナー「メディアの未来 コミュニケーションの未来」に参加してきました。

ブログやジャーナリズム、メディアの未来についてブログ「5号館のつぶやき」運営者でコーステップのスーパーバイザーも務める栃内先生と司会の新聞記者を交えてディスカッションするというもの。
セミナーは合唱団によるクリスマスソングでスタートです。さすが、歌って踊れる科学コミュニケーターを養成しているだけはあります。
それから「民主化するジャーナリズム」というタイトルで20分ほど私からメディアインフレーション、ミドルメディアなどの状況を説明しました。

セミナーの模様は、毎日新聞の柴沼さんがブログ「小盛ほっかいどう」にアップされています。

栃内先生はブログで、ポスドクオーバードクター問題に関してさまざまな問題提起を発信していて、コメント欄はこの問題を語り合う「場」になっていますが、別の記事「政治に翻弄される科学者(横田めぐみさん遺骨事件)」では、書いた1年後から反応が出始めてメディアも取り上げるようになったといい、ウェブの特徴であるアーカイブと検索が生きた事例と言えるでしょう。

柴沼さんのエントリー中にも紹介されていますが「ジャーナリストの書いたものよりも、栃内先生のブログの方が信用できる」という発言がありましたが、これはマスメディアとジャーナリズムを取り巻く状況を端的に表しています。
私はサッカーをする人がサッカー選手と呼ばれているように、自身の伝えたいことを伝えようと文章を書く人はすべてジャーナリストであるとの立場です。
本来はマスメディアに所属するジャーナリストは、高い質と強度を保たなければならないのに、書いていることが信用できないと言われている状況は恥ずかしい限りです。いつまでもマスメディアのOJT(がそもそも崩壊している)とジャーナリストを目指す人の自主的な努力に頼っているとレベルは上がりません。このままでは、メディア産業だけでなくジャーナリズムそのものが信用を失ってしまう。だからこそ新しい制度設計が必要なのです。

後半は、受講生の方からの質問を交えて進みましたが、的確な視点から多数の質問があり、時間をオーバーしたディスカッションになりました。
ブログのおかげで誰もが発信できる時代になりました。制度に加えて、次は質と強度を底上げしていく技術が必要です。
サッカーでも、競技人口の増加と技術指導が両輪になり競技レベルが向上します。ジャーナリズムも同様に、書いて人に伝えることが好きになってもらう普及活動、そして技術の底上げが必要です。そういう意味でもコーステップのような取り組みが重要になってくると感じました。

栃内先生が翌日広島大学(私の母校でもある)で開かれるサイエンスカフェに出席されるにもかかわらず、深夜2時まで話しは尽きず大いに盛り上がりました。コーステップの受講生、スタッフの皆さんありがとうございました。そして合唱団の皆さん心に残る歌声でした。

【参考エントリー】
入れ替え戦でジャーナリズムの質を高める、「ネット社会の情報と言論〜新聞ジャーナリズムの将来」(下)