ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

ジャーナリスト教育の新たな試み

NHKのクローズアップ現代で「変わる巨大メディア・新聞」という特集が放送されました。新聞社の経営が苦しくなる中で、ジャーナリズムを守るための試行錯誤が取り上げられていましたが、批判的な声もあったようです。アメリカでは記者が解雇されていることもあり独自のネットワークや大学との連携も試みられていますが、日本では新聞社の連携といったコストカットの側面が多く、ジャーナリズムではなく新聞社の生き残りという側面が強かったからかもしれません。

個人的には、ゲストの立花隆氏が番組の最後にコメントした「既存メディアがなくなってもジャーナリズムはなくならない。ジャーナリズムはそんなにやわじゃない(うろ覚えなので正確ではないですが…)」と同じで、多くの人がネットで情報発信できる時代に、新聞社やテレビといった従来のマスメディアだけがジャーナリズムを担う必要もないとの考えです。ただ、ジャーナリズムにかかわる取材や執筆といったノウハウの多くは新聞社内に残っており、学ぶべきものは多いと思っています(もちろん古びたり、問題があったりもします)。
以前からブログで紹介している、大学生向けのジャーナリスト育成プログラムとして始まった「スイッチオンプロジェクト」は、そのようなノウハウを生かしつつ、新たなメディア環境に対応するジャーナリズムのあり方を探る試みであり、ジャーナリスト同士がメディアや組織を超えて個人として切磋琢磨できる「場」の実現を目的にスタートしました。
朝日新聞ジャーナリスト学校が発行する「Journalism 11月号」に「ジャーナリスト教育の新たな試み 記者と学生の127日間 スイッチオンプロジェクトの実験」というタイトルで寄稿したレポートの冒頭を一部抜粋すると

ジャーナリスト教育という言葉から何を連想するだろうか。「居酒屋での先輩の自慢話」を思い出すのは筆者だけか。記者の教育システムはもっぱらOJT(オンザジョブトレーニング)だ。経験が頼りで、原稿の書き直しはデスクは先輩によってまちまち、指導は時に過去の自慢話に…
それでもジャーナリスト教育に取り組むことになったきっかけは、インターネットの登場にある。メディア環境が変化して、個人であっても、多くの人々(マス)に対して情報発信できるようになった。企業内ジャーナリストであろうと、フリーライター、ブロガー、市民記者であろうと、情報発信をすれば個人として読者に直面し、力量が問われるようになってきた。

と書いています。問題意識から、プロジェクトがスタートするきっかけとなった河北新報寺島さんとの打ち合わせ、学生の募集、インタビューや執筆といったプログラム、成果発表といった流れ、メディア・ジャーナリズム系大学の課題や大学との連携、そして今後の課題も書いています。関心をもった方は「Journalism 11月号」をご覧ください。スイッチオンでは、今年度もさまざまなプログラムを展開していく予定です。アメリカのようなダイナミックさには欠けるかもしれませんが…「ジャーナリズムの危機」を語るだけでなく、小さな取り組みでも始めてみる事で、見えてくることもあります。連携・協力していただける大学やメディア、ジャーナリストの方がいらっしゃればご連絡ください。
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