パネルディスカッション「違法・有害情報と匿名性」を見てきました
情報ネットワーク法学会の第7回研究大会に参加してきました。このところいろいろあり、スケジュールが厳しいのですが、パネルディスカッションの「違法・有害情報と匿名性」が見たかったので、日帰りで新潟に足を伸ばしてきました。
パネリストは、池田信夫さん(上武大学)、石井芳明さん(総務省)、小倉秀夫さん(弁護士)、町村泰貴さん(北海道大学)、丸橋透さん(ニフティ)、吉川誠司さん(インターネット協会)
コメンテータが岡村久道さん(弁護士・国立情報学研究所)、山口厚さん(東京大学)、司会が森亮二さん(弁護士)でした。
さらに、会場から、高木浩光さん@自宅の日記、弁護士の落合洋司さん、同じく弁護士の奥村徹さん、壇俊光さんがコメントするという豪華さでした。
内容は、ブログ炎上、匿名の問題、2ちゃんねる、ウィキペディア、発信者情報開示請求、有害情報の線引き、アーキテクチャ、フィルタリングなど多岐に渡りました。
実際に被害を受けている(もしくは被害を受けていると感じている)ことへの解決策を探ろうとする小倉さんと池田さんと、町村さんやサービス提供者の法務担当の丸橋さんとの議論が「かみ合わない」のは仕方がないところかなと思います。
例えば
小倉 違法行為を防ぐのは理性や道徳心に頼るというのでは…。理性や道徳心が弱い人たちが、怒りにまかせて、おもしろ半分で書き込んでいる。問題が発生したときに現行の法制度に乗せていくことができればいいが現状は難しいし、違法情報を流通させるのは業者の助けがなければできない。
丸橋 立法論なのか道徳論なのか分からない。
小倉 ウィキペディアやはてなブックマークに誹謗中傷を書き込むという相談、アマゾンの書評欄に個人攻撃を行うという相談もあるが、はてなやアマゾンは発信者情報を開示しない。「犯罪を行っていないという証拠を出せ」と言ったり、アメリカの会社だから日本の法律には従わないと言ったりだ。
丸橋 開示したいのは山々だが、事実関係などを書いていない人が多くて開示できない。弁護士が誤解していることも非常に多い。
といった感じです。
どちらもお立場を考えればそれなりの合理性があり、さらに表現の自由や個人情報の保護といったこともあり、着地点を見出すことが難しそうです。
法律的な観点からではなくて、池田さんが既にブログに書かれていますが、インセンティブ設計を見直すというやり方もあると思います。池田さんが提案している、「言論の質を高めるインセンティブがない」という現状から、クオリティを高めないと評判が落ちるという状況にしていくというやり方は個人的にもありと思います(すべてのブログサービスをそうする必要はないし、個々のブログごとでも良いでしょう)。
法務担当ではなく、サービスのプロデューサーや営業担当も交えて、匿名・実名問題をやるとまた違った角度から議論できるかもしれません。
懇親会では、高木さん、町村先生、小倉さん、壇さんともお話でき、さらにブログを何度か見させていただいていた一戸信哉さんと名刺交換して、大手町ビジネスイノベーションインスティテュート(OBII)について話したりと、短いながらも充実した新潟滞在でした。懇親会場には地酒が並べられるなどホストとなった新潟大学の皆さんの「もてなしの心」が伝わりました。
最終の新幹線に乗る前に、駅のスーパーで南魚沼産のコシヒカリを購入したのは言うまでもありません。ちょっと重かったですが…