ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

絵文録ことのは・GripBlogで起きたことへの私見

ブログ、絵文録ことのは、GripBlogをめぐってさまざまなことが起きています。この問題で両ブログが批判されている主な理由(批判の常で、議論は道をそれたり、広がったりしていますが)は、絵文録ことのはを執筆している松永英明氏が犯罪を起こした宗教団体に所属していたということ、そしてそれを明らかにせず活動し、民主党の懇談会に出たこと。GripBlogの泉あいさんは、そのような「問題がある人物かもしれない」松永氏を民主党の懇談会に出席させたことに対する責任と説明がすぐになされなかったことである、と理解しています。以下に私の個人的な意見を述べておきます。大変難しく、微妙な問題ですので、できる限り丁重に書いているつもりですが、間違いがあればご指摘ください。
人は過去から逃れることはできません。所属していた組織や団体が、たくさんの被害者を出した犯罪を起こしたものであれば、宗教であれ企業であれ世間の風は冷たいし、ブログ界での論調もそうならざるを得ない。私の家族や友人には事件の被害者はいませんが、不幸にして被害に遭われた方が身近にいれば団体は許せないし、それにかかわった人も許せないという気持ちは分かります。松永氏は批判を受けとめなければならないでしょうが、だからと言って「自ら名乗って活動すべきだった」というような意見には私は賛同できません(「許されない」という人がいることを否定するつもりはないです)。

犯罪を起こした人や犯罪組織にいた人(犯罪的な行為を行った国というのもありえる)の再起やチャンスのことも考えるべきです。実刑判決を受けた人であれば、刑務所に入って更生したとみなされれば社会復帰の道が確保されるのが社会というものではないのでしょうか。たとえば、就職活動をする際の履歴書に「傷害罪で懲役3年」と書き込む人は正直かもしれませんが、ほとんどいないでしょう。しかも、松永氏は事件にかかわっていないようですし、有罪判決を受けたわけでもないようです。被害者や遺族の方は複雑な気持ちでしょうが「罪を憎んで人を憎まず」、許すことがなければ未来へ進むことはできません。

それゆえに、私は松永氏がどのような過去を持っているか明らかにせず執筆活動を行っていたことは問題ではないと考えます。また、疑惑が報じられた後、カミングアウトを迷っていたようですが、それも仕方のないこと。自分がその立場だったら悩むはずです。何を言われるか、どのようなことが起きるかは想像できますし、怖いでしょう。しかし、最終的には自分の言葉で過去を説明したわけですから、後は言葉通りに松永氏が行動しているかどうか、見て判断すればいいのではないでしょうか。それは松永氏が一番分かっているでしょうから、行動で示してくれると期待します(というほど私は偉そうな立場にいるわけではないですが)。

民主党の懇談会に出席したことはどうなるのか。過去を公表する必要はないので、人選した泉さんの責任はないと考えています。仮に民主党が「不審人物」の出席を防ぎたかったのなら、泉さんに参加者の人選を丸投げするなどということをすべきではありませんでした。泉さんだって、私は何度か会っていますがどのような素性や過去を持つ人なのか知りませんし、それはあの時出席したBigBangさん、R30さん、DANさんらもそうで、私も同様です。皆さんが「不審じゃない」と言ったところで証明できるものはなにもない。名刺なんていくらでも偽造できますし、そもそも来ているブロガーが書いている本人そのものかどうかもわからない。結局は信じるしかない。この「信頼」で世の中は動いています。疑い始めれば切りがありません。それでもやっぱり問題だという人がいるのなら、民主党の危機管理を問うべきです。

不思議なことは、自民党の懇談会への参加があまり問題になっていないことです。野田氏のブログには3月6日に「民主党本部を直撃」とのエントリーが上がっていますが、この直後の7日に開かれた自民党のブロガー懇に松永氏は出席しています。それも自民党が選んで出席している。泉さんは知らなかったかもしれませんが、自民党の事務局は知るチャンスがあったわけですから、罪があるならより重いはずです。泉さんを攻撃されている人はなぜ自民党を批判しないのでしょうか。

GripBlogのコメント欄では公安について書いている人がいましたが、野党である民主党と与党自民党を比べれば、警備的な重要度は格段に異なります。警備の発想から言えば民主はどうでもいい存在です(前原代表がいたから多少は重要になるだろうが)。自民党は懇談会出席者に、幹部の会議室や総裁室も案内しています。もし、何かあったらどうしたのか。また公安当局が松永氏の情報を事前に知っていたにもかかわらず「泳がせ」ていたとすればこれは職務怠慢でしょう。ここまでくるとなんだか陰謀説みたいになりますし問題の本論ではないので、やめたいと思いますが、可能性というのは、疑い同様、考え始めれば切がない。もう一度言いますが、私は基本的に信じることでさまざまな関係が成り立っているとの考えです。

GripBlogと泉さん周辺で起きている状況は残念でなりません。泉さん側の対応は少しナーバスすぎかもしれませんが、コメント欄での議論は無責任すぎます。ブログやコメント欄で松永氏が過去を明かさなかったことを批判している人は自らの過去のマイナスも明らかにするべきですし、「説明しろ」と声高に疑惑を指摘している人が疑惑を指摘されればやはり説明すべきです。相当ひどい内容のブログもあるようですが、言われなき誹謗中傷には断固たる対応をすべきです。

「自分は批判だけはする」というのは通用しません。言葉は発した人に返っていくのです。

私の考え方に異論がある方もいるでしょうが、それはそれでかまいません。世の中の意見は多様であってほしい。そう願っています。