ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

トップの対応が流れを変える

「社員は悪くないんです」。自主廃業に追い込まれた山一證券の野澤正平社長(当時、現センチュリー証券社長)は会見で涙を流しながら社員の再雇用を呼びかけました。*当時の心境を語るインタビュー「山一證券の十字架を背負い続ける
そのおかげか、山一には多くの求人が寄せられました。さらには、冬のボーナスも支給されました(これは債務超過ではないという説明で行われたはずでしたが、最終的に山一は2000億円の債務超過日銀特融が焦げ付きました)。あの涙がすべてを覆い隠してくれました。本当はずさんな経営が行われていた山一社員一人ひとりが悪いのに、巷には「かわいそうだ」の声が広がりました。債務超過の責任追及もうやむやのままです。あの涙が「わざとらしい」とか「ウソ」だとか当時は言われましたが、真偽はどうであれ社員は本当に野沢氏に感謝しなければなりません。

昨日も日本銀行の不祥事で福井総裁が会見し、頭を下げて、記者の質問に答えていました。紙幣をすり替えた職員は諭旨免職。この処分について周囲に感想を聞いてみましたが「厳しいね」という声が多く聞かれました。政策面での評価は別にして、紙幣を発行する機関としての信頼は繋ぎ止められたように思えます。
組織の不祥事に対して、トップが謝罪したり、きちんと記者会見に応じるのは「当たり前」と言えますが、それがなかなかできない(特にひどいのは教員!警察ですら幹部が頭を下げるのに、教員不祥事ではトップは知らん顔。責任を取って辞めたというのもあまり聞かない…)。やっとトップに上り詰めて「どうして私が」と被害者感情すら持っているのが年功序列の日本社会のトップにありがちな反応で、中途半端な気持ちでマスコミと対峙して火に油をそそいでしまう場合もあります。エレベーターに乗り込みながら「私は寝てないんだ(でしたっけ?)」と言い放った雪印の社長などはその典型でしょう。
そしてNHK。会長である海老沢は国会ではテレビの放送と国会では説明していますが、記者会見は行っていません。私が「NHKの受信料を拒否するか」で書いたように、記者会見には関根総務局長が出席し、テレビカメラの持ち込みは拒否されています。「たかが選手が」でバッシングされたナベツネさんにしても、いわゆる「ぶら下がり」は受けていました。そういえば海老沢会長にぶら下がっている映像はあまり見ません(私があまりテレビを見ないせいでしょうか?ご存知であればそのときのやり取りや対応を教えてください)。あれは禁止されているのでしょうか?首都・東京でご活躍の新聞およびテレビの記者の方々。ぜひ「突撃」して海老沢にぶら下がって「生の声」を全国の人に伝えてください。