「ニュース」は書き手と読者と素材の接点にあり
3月末の合宿から始まった大学生向けのジャーナリスト育成プログラム「スイッチオンプロジェクト」の第2回の全体ミーティングは「文章の構造を学ぶ」と題して行いました。
「ニュースとは何か」「メッセージを伝える手法(見出しの重要性)」「文章の構造」と大きく3つの内容で、大学の講義であれば最低5、6回必要な内容を半日に詰め込んだプログラムで、参加学生にとっては最も難しいものになったかもしれません。
ニュースとは何か、いろいろな意見があります。文字通り「新しい」ということですが、新しいというのは誰にとって、何にとって新しいことなのか、単に新しいだけでもニュースなのか、などです。
私は、書き手、読者、題材(事象やインタビュー相手など)の三つの接点がニュースだと考えています。
下記の図は昨年度の北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)選科B受講生が、成果発表の際に作ってくれたものをアレンジしたものですが、書き手が「面白い」とか「重要だ」と思っているだけではダメで、読者が面白いと思うだけでもダメ。題材が不十分であってもダメで、重要なことは3つがバランスよく組み合わされることです。
読者(ターゲット)が変わることで、ニュースが社会性・公共性を帯びるかどうかが変わります。ある年代、地域、性別などさまざまなターゲットが考えられます。重要なポイントは、読者が家族や友人であっても、やはりこの三つの接点は重要だということです。自分のことばかり話す人は嫌われますが、それは読者に接点、つまりニュースがないからです。話を伝えようとするときに人は知らず知らずの間に接点を探して、コミュニケーションしているのです。
一部のマスメディアの論説や市民メディアによくありがちなのが自分の意見の押し付けです。これは読者の円が欠落しているパターンで、場合によっては題材すら自分の土俵に持ち込んで円がひとつということすらあります。結論ありきで、要素を当てはめていく決め付け取材だとそうなります。
また、読者を意識すると話すと、「アクセス数ばかり気にして読者にこびるのか」「視聴者至上主義はジャーナリズムをダメにした」と言う人がいますが、それもまたバランスを欠いた議論です。
書き手のところに(自分の土俵)とあるのは、接点を広げるために自分の土俵を広げることが重要ということです。知識、経験、価値観、興味、問題意識など、複眼的な視点を持つことが、幅広いニュースを扱える条件になります。
「メッセージを伝える手法(見出しの重要性)」と「文章の構造化」についてはここでは詳しく触れませんが、構造化について関心がある方は、自己紹介の「before&after」で紹介した文章構成のためのフレーム「モジュールライティング」を参考にしてください。
自己紹介とインタビューや通常の記事で異なるのは、上図の円が通常3つに対して、2つ(書き手と題材が重なっている)であるということです。インタビューは相手があるのでより難しくなります。
ちなみに、プログラムに関西から通ってくれているid:comajojoの「編集」で「読める記事」にする(coma memo)レポートの「集めてきた情報の9割は捨てろ」の部分
9割っていうフレーズが出た際、藤代さんは「くはぁー」と吹いていた。さすがに9割は捨てすぎなんだろう。恐るべし日経BP
なぜ吹いていたかと言うと、新人のころ「10聞いて1書くのが新聞記者だ」と言われていたのを思い出したということ&「そういうこと言うと学生がビビルじゃないですか川上さん」という苦笑いです。ちなみに、9割捨てろというのではなく、それぐらい調査しろという意味ですので間違えないように。
【関連エントリー】
- そこに「読者」がいなければジャーナリズム足りえない〜スイッチオン「記事の書き方」ワークショップ(ニュース・ワーカー2、美浦デスクのレポート)
- 第二回全体ミーティングの模様(学生運営委員のブログ)
- スイッチオンPJ 良いインタビューのための3カ条(第1回全体ミーティングの様子)