ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

ファクタの「スクープ」にみるメディア遣いの上手さ

みずほ証券が、誤発注で404億円を東京証券取引所に請求する」との記事が、ファクタのスクープであることを同誌の阿部重夫編集長のブログ「勝利宣言―予告スクープを各紙追っかけ」で知りました。

このスクープは
編集長ブログに「予告」を掲載(21日)

定期購読会員限定のメルマガで配信(22日午前6時)

編集長ブログで勝利宣言とメルマガの内容を公開(23日)

という流れだったようです。

1ヵ月に一度しか発行できず、編集作業にも時間がかかる紙媒体とネットメディアを組み合わせて、スクープがあったときにすばやくユーザーに届ける。それも、届くのは年間予約購読をしている会員のみ。ファクタのような雑誌を講読しようと考えている人は、投資家や金融関係者、企業の総務担当者、アンテナの高いビジネスマンなどでしょうから、いつメールで発信されるかわからないスクープを読むためにも購読しようというインセンティブが働くでしょう。

今回のスクープの打ち方は、ファクタの取材力、媒体の特性、ユーザーの行動を考えたメディア戦略と言えます。まだまだ知名度のない紙の良いパブリシティになったのではないでしょうか。

阿部編集長も予告の中で

ご購読者に一足先にサービスしようというものですが、ご購読者以外を締め出すわけではありません。このスクープが新聞やテレビ等で後追いされましたら、このブログでも無料公開します。これはスクープに自信のあるFACTAならではの試みです。
今回お送りするスクープは本物ですが、メルマガによるスクープ発信はあくまで市場調査を兼ねた実験です。今後も随時発信して定着させていく予定ですが、メルマガの配布をご希望される方は、このサイトのご購読申し込みページで所定手続きをお願いします。

と購読もPRしています。

先日、ファクタ編集部に勤める知人の紹介で、幸運にも阿部編集長にお会いする機会がありました。お忙しいところ、メディアの特徴、特にインターネットについて色々な議論をすることができ、私にとっても刺激的な時間でした(話がファクタのプロモーションになった際に、その場で思いついた「過去のバックナンバーを見たいこともあるので、時間を経過したらバックナンバーアマゾンで取り扱って、編集長ブログなどで紹介すればいいのではないか」との稚拙なアイデアも、真剣に聞いていただきました)。

ちなみに、ファクタで私が楽しみにしているコーナーは「メディアの急所」。最新の9月号は「共同通信がヤフーに逆襲」「日経持ち株会社の目論見」の2本。共同通信が全国の地方紙を連合して「日本一のニュースサイト」を作るプロジェクトを開始、ヤフーへのニュース配信を止めるように加盟社に呼びかけているとのこと。さて、どうなるやら。続報にも期待しています。

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