ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

靖国参拝、官邸が小泉首相の記者会見を公開

官邸HPが小泉首相の靖国参拝時の記者会見を公開しています。「ぶらさがり取材」の中身がそのまま載るのは極めて異例で『全文が掲載された背景には、「マスコミ報道だけでは首相の発言がつまみ食いされるケースが多く、首相の率直な気持ちが国民に伝わらない」(官邸関係者)との判断が働いたという』(産経新聞)。テレビで生中継されていたので、だいたいは聞いたつもりでしたが、改めて文字に起こされると興味深いものがあります。

全文は官邸HPで見ていただくとして、私の興味があるところを抜粋します。

まず、小泉首相は自身で分析した靖国参拝への批判を3つに要約して、それぞれに対する自説を展開しています。

  • 中国・韓国が不快に思っている

『中国・韓国は不愉快であると反発しているからやめろという意見。これはどうですかね、私は日中・日韓友好論者なんです。就任以来、現に中国や韓国との友好交流、様々な分野で拡大を続けております。そういう中で、どの国ともね、一つや二つ意見の違い、対立あります。それで、一つの意見の違いがある、不愉快なことあると、それによって首脳会談を行なわないことが良いのかどうか』
『仮にね、中国・韓国が日本の安保理常任理事国入りに反対しています。これは日本にとっては不愉快だと、だから私は中国・韓国と首脳会談行わないといったらどちらを批判するでしょう。私は中国が反対しても、韓国が反対しても、首脳会談いつでも行いましょうと言っているんですよ』

『私はA級戦犯の為に行っているんじゃないですよ。多くの戦没者の方々に哀悼の念を表す。二度とこのような苦しい戦争をさせてはいけない、そういう気持ちで参拝しているんです』

  • 憲法違反だから

『憲法第19条、第20条、これを良く読んで頂きたい。私は神道奨励するために靖国神社行っているんじゃありません、今説明したように。また過去の戦争を美化したり、正当化したりするために行っているんじゃありません。また軍国主義を称揚する、そういうような気持ちで行っているのではありません』
『私は伊勢神宮にも毎年参拝しています。その時には何名かの閣僚も随行しています。別に私は強制していません。そして、皆さんの前で神道形式に則って伊勢神宮に参拝しています。その時に憲法違反という声起こりませんね。何故なんでしょうか』

その後、記者とのQ&Aになります。まず、8月15日に参拝した理由を聞いた記者には
『8月15日を避けても、いつも批判や反発、そして何とかこの問題を大きく取り上げようとする勢力、変わらないですね。いつ行っても同じです。ならば、今日は適切な日ではないかなと』

記者が、8月15日にこだわって内外で批判や騒ぎが起きるのは本心ではないと言ったのと矛盾するのではないかと質問します
『矛盾しません。それは過去5年を踏まえて、いつ行っても問題にして、混乱にしようとする勢力があるんです。それは仕方ないんです』
『いつでもこだわっているのはマスコミじゃないでしょうか、或いは、私に反対する方々じゃないでしょうか。そういうのも踏まえてね、これはいつ行っても同じだなと思いました』

さらに、ポスト小泉をめぐる自民党総裁選挙と靖国参拝の関係については
『それは総裁候補自体の考え方と、マスコミの皆さんが争点にしたがっている面が強いですから、それいかんでしょうね』

マスコミへの批判が目に付く気がします。テレビを見ていたときは、公約について話して、普段はマスコミは公約を守れと言うくせに、マスコミが気に入らないもので公約を守ったら批判するのはどうか、といったような発言があった気がするのですが、官邸が公表している文章にはないようです。ぼんやり見ていたので、別の記者会見と混同しているのかもしれません。

#はてぶ経由で教えていただいたのですが、公約の話はモンゴル出発前のぶらさがりインタビューでした。イザ!ブログで産経新聞の記者が全文を公開しています。
『メディアは『必ず公約は守るべきだ』という。守らないと批判する。守ると、自分たちの意見に反対するのは『守らなくていいんじゃないか』と批判する。そうすると、今度は仮に公約を守らないとね、『何で守らなかった』と批判するんですね』(小泉首相の発言)

私は気付いていなかったのですが、談話やメッセージなどはテキストで、「第164回通常国会終了を受けて」「イラク派遣の自衛隊撤収等」などの記者会見は、政府インターネットテレビ3チャンネル(ちなみに2チャンネルは、総理大臣の公務を紹介する「ビデオで見る総理」)で公開されています。

小泉首相以前がどうだったのか分かりませんが、裏総理となどと呼ばれて時々週刊誌をにぎわすことがある飯島秘書官のメディアコントロール(北朝鮮へのコメ支援をすっぱ抜いた日本テレビを取材同行させないと言ったなど)、昨年の総裁選挙におけるチーム世耕の活躍といった自民党のメディア対策の向上だけでなく、官邸のメディア化も進んだのでしょう。そして、産経の記者もぶらさがりのコメントをブログで公開する。ここ数年でメディアの状況はずいぶん変化している気がします。