ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

あっという間に読めるけど一行ごとに面白い『「ない仕事」の作り方』みうらじゅん著

文藝春秋の方から頂いたみうらじゅんの『「ない仕事」の作り方』。テレビに出て変なことを言ったり、雑誌でよくわからない連載をしている人だなあ、ぐらいの印象だったのですが、すいませんでした。真面目に書くと、ゆるさの裏に努力有りということだと思いますが、その努力というのが半端ないのです。

「ない仕事」の作り方

「ない仕事」の作り方

 

本にはみうら流、「そこがいいんじゃない!」とどんなに下らないものでも、面白さを自分で見つけ、そして好きだと思い込み、編集者を接待して売り込み、周囲を巻き込んで、世に出して仕事にしていくノウハウがたっぷり詰まっています。ここまで書いて良いのか?というぐらい詰まっています。

書かれてるアイデアや名付け(ゆるキャラとかマイブームがみうらさん作で流行ったもの)のほとんどんが、まったくと言って良いほど世の中に採用されていません。例えば…

  • 親孝行は照れくさい→親コーラー、エナリスト
  • 暴走族を格好悪い名前にしたらなくなるのでは?→オナラプープー族
  • ぐっとくる海士→AMA(エーエムエー)

こんな恥ずかしい言葉をつくって流行らなかったら、心折れると思うんですが、それでもみうらさんは「ブームになればいい」と次々と言葉を作り出していくのです。その飽くなき執念を支えるのは「ブームは誤解から生まれる」という確信。そのために自分を「絶対に流行る」と洗脳する…面白いので、あっという間に読めてしまうのですが、それは孔明の罠。面白エピソードの間にはさまれたノウハウの中で一番凄いと感じたのは

  • 就職試験に落ちた後、誰かの原稿が落ちるかもしれないと考えて知り合いの編集部に出入りするようにしていた

というエピソード。なんというセコさ、マメさ。この本は、ゆるーく面白い話題を散りばめて「そこがいいんじゃない!」と読者が簡単に思えるようにして試しているんだ(確信)。笑いながらすかっと読むもよし、丁寧にノウハウを拾うもよし。とりあえず、よくわからない名前のチームを作って活動しようと思います。