ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

華氏911

マイケルムーア監督の「華氏911」をようやく見ました。月曜日の昼間だったのですが、その週末に911の特集番組などが報道されたためか、劇場は6割ほどの入り。中高年の方が多かったように思いました。


公開前から賛否両論あった内容ですが、個人的には、ムーア監督が「ブッシュ再選阻止映画」と公言しているとしても、あまりに露骨な「ブッシュ悪!」に、正直どうかな?と思いました。前半の石油会社とのつながりやブッシュのアホぶりはユーモアがあって面白かったのですが、後半のイラク戦争の部分はマジすぎて、ちょっと気分が悪くなりそうでした。どんな気持ちだったかは分かりませんが、途中で何人か出て行ってました(単に退屈だっただけかもしれませんが…)。映像には、日本で大手メディアが流さなかったものも多く含まれていました。黒焦げになった死体、家族を失って泣き叫ぶ人…。戦争をする国(最近の論調でいくと一人前の国家)の影で泣くのはいつも比較的貧しい庶民であるという、当たり前の現実を改めて突きつけられました。また、日本人人質が銃を突きつけられて半狂乱になっている映像もあり、あの映像が流されていれば(多分日本では使われなかったと思う)「自己責任」バッシングのトーンも多少変わっていたのではないでしょうか?


メディアは編集で何とでも世論を誘導できる怖さを改めて実感しましたし、どんなに残忍なものであろうと、目を背けず流すべきだと思います。判断するのは、テレビ局や新聞社の社員ではなく視聴者や読者であるはずです。ただ、見終わった後無力感にも襲われました。「アメリカが石油利権のために戦争したことは分かった。ブッシュがアホなことも、サウジとつながってることも分かった。戦争で大企業がガッポリ儲けていることも、戦争は悲惨なことも分かった。で、どうなの? ケリーになったらアメリカは戦争やめるの?」そんな感じです。


つまり「ネオコン的ニヒリズム」by宮台真司 です。クーラーの効いた部屋で環境問題を語るな!お前も自動車に乗ってるんだからアメリカの石油利権の一端を担ってるんだろ、批判できるのか?ーそんな議論。映画の公式HPでも結構そんな議論が巻き起こっているようです。あそこまで舞台裏を見てしまうと「誰がやっても同じだよ…」とニヒリズムが拡大して、結果的に現職のブッシュ有利になってしまうだけのような気が…。この映画のことを同僚と話したら「ムーアってブッシュとつながってるらしいじゃない?」(まったく裏とれてません)と言ってましたし…