ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

2012Springレポート 「メディアは出ていって下さい」のソーシャルゲームセッションで語られたソーシャルと世界の話

「Infinity Ventures Summit(IVS)2012 Spring」。昨年からメディア枠で参加しているIVSですが、ソーシャルゲームに関わるDeNAGREE、gumi、gloops、モブキャスト、芸者東京の経営陣が揃ったセッション「ソーシャルゲーム・サバイバル ソーシャルゲーム市場の今後の行方」を紹介します。
日本のソーシャルゲームは世界でも通用するという話から、ディズニーを中心にハリウッドを巻き込んだエンタメ業界の大再編が起きるという予測まで。田中さんのファンタジーにより多彩な話題が壇上で繰り広げられましたが、抜粋して会話形式でまとめました*1

<スピーカー>

  • 株式会社ディー・エヌ・エー取締役 小林賢治 氏
  • グリー株式会社執行役員 メディア事業本部長 吉田大成 氏
  • 株式会社gumi代表取締役社長 国光宏尚 氏
  • 株式会社gloops代表取締役社長 川方慎介 氏
  • 株式会社モブキャスト取締役 佐藤崇 氏

<モデレーター>

  • 芸者東京エンターテインメント株式会社代表取締役 CEO/ファンタジスタ 田中泰生 氏

日本で当たったら世界でも当たる
田中:「はい!ソーシャルゲームサバイバルってことで」
国光:「サバイバルだっけ?」
田中:「日本はサバイバルになってきますね。ところで、メディアの人いますか?出ていって下さい。ちゃんといい事書いて下さい。僕からの注意事項です(笑)」「では、海外はどうなんですか?」
小林:「いいですよ」
田中:「ドヤ顔で言う話じゃないんですけど」
小林:「日本で当たったものが、海外でばっちり当たるということ。日本人は島国の特殊な人達だから何か変えなきゃいけないと悩みすぎでは。堂々と出せばいい。堂々と出したら、堂々と一位でしたという話」
田中:「モバゲーランキングだと10位ぐらいでいが、アメリカだとAndroid1位ですよね。GREEはどうですか」
吉田:「トップ20に入ってます」
田中:「Zombie Jombieは?」
吉田:「日本人ぽいなというのはあったが、ダウンロード数は多い。出してみないと分からない」
田中:「国光さん海外は?」
国光:「海外やってます」
田中:「海外拠点は何でいるんですか?日本で作ったものが通用するならいらないのでは」
川方:「現地のメンバーで作るコンテンツと、日本から持っていくのと両方ある」
田中:「独立リーグのモブキャストさん」
佐藤:「プロ野球ゲームはいいです。ディー・エヌ・エーさんやGREEさんとやらないのは機会損失じゃないかという話もあるが、自分でやっているとユーザー指標もとれる。テレビCMの反応とか」
田中:「プラットフォーム手数料を宣伝にまわすと。CMの打ち方を工夫しているそうですけど」
川方:「日本で一番放送されたCM。継続率が10%向上している」
小林:「CMの効果は色々ある」
吉田:「CMの打ち方も変わる。ゲームの使い方を紹介することから、昔のユーザーを呼び戻すようなものへ」
川方:「自社で打つのか、モバゲーのゲームと紹介するほうがいいのかという悩みはある」
いまはCMじゃなく規模で勝負する時期
国光:「CMではなくて開発の体制を大きくして海外に突っ込んでいくほうがいいのでは。ソーシャルゲームの戦いは規模になっている。ヒットするコンテンツをたくさん持っているのが勝負。ジンガ4000人いる」
田中:「言うてもボロボロのベンチャーだったわけですよねGREEも。KDDIから3億円ですか調達して、20−30人がいまこんなふうになる。パワーゲームになるのが分からない」
国光:「あの時は勝ち方がまったく分からない状態だった。いまのソーシャルゲームはパワープレー」
吉田:「デバイスシフトは大きかった。ガラケーからスマートフォンに移った」
田中:「GREEディー・エヌ・エーはチャンスをついてきますよね」
小林:「デバイスの変化でチャンスが増える。スマホは表現力が増えるので3Dとかやろうとするんだけれどそれは違う 。ソーシャルゲームはスキマ時間をうまく使いビジネスさせるというもの。遊び方として旧来型のゲームとは違うので、その良さは失わない。フューチャーフォン時代からやっているところは自信を持っていい。海外もそうなる」
佐藤:「うちもっと人を増やしたほうがいいんですかね?」
国光:「おもいっきり増やしたほうがいい」
小林:「突っ込む前にはテストしている。何でもいいから人増やしとけというのではない。多面的にポートフォリオを展開しているのと、突っ込むのは違う」
国光:「ジンガ、ジンガ言い続けてきたけど見えてきた。真面目な話世界をとれる。孫さんも三木谷さんもまだまだのところ、世界目前に見える。大企業は年間予算の範囲内でやってしまうので、本格的にベンチャーが頑張ったら予算で負けることはない」
田中:「ジンガを倒したと思ったら、ディー・エヌ・エーGREEがいるんじゃないの」
国光:「いまはソーシャルゲームの戦いだけれど、大手や家庭用ゲームを巻き込んでいくことになる」
田中:「それって昔堀江さんがメディアと融合したいというのと同じでは。もうGREEディー・エヌ・エーはやってますよね。しかるべき単価を払ったらできる」
ハリウッドも含めた大再編が起きる
国光:「エンタテインメントは、ハリウッドでも映画やテレビといったパブリッシュ、流通を抑えたところが勝ってきた。本質的にはユーザー接点が大事になってきている。めっちゃ端折るとディズニー」
田中:「ディズニーだよね」
国光:「ディズニーだけが残って、ハリウッドも含めてエンタメ大再編が起きる」
田中:「そうは思えない。別に10年前はエンタメ業界じゃなかったディー・エヌ・エーってオークションだし」
小林:「ゲームは作ったことがなかった。ただ、日本のエンタメがうまくいかなかったのは個別にいって撃破されたから。プラットフォームとして一緒に行く。エコシステムをどれだけ輸出できるかが大事」
田中:「ソニーや任天堂でやってきたことをソーシャルでもう一度やるということですよね。エコシステムで行った」
田中:「コンプガチャの問題。一部の人だけしか被害を受けていないのに、業界全体が悪というのは、メディアにも真面目に考えてほしい」
小林:「3000億円というのはすごい市場で、ユーザーはたくさん使ってもらっている。応援メッセージもたくさんもらった」
会場から質問:「カードバトルはウェブコミュニティだと思う。はてな村とかが共産主義とすると、カードバトルは資本主義みたいな」
田中:「みんな定義すきですね。ソーシャルがどうとか」
小林:「烏龍茶は普通に買ったら150円、でも飲み会だと高くなる。社会的な対価の中でお金を払いたくなる。ソーシャルも同じ。誰かの家に言ってマリオをやる、ゲームセンターでスト2で対戦する、ポケモンを交換するというのはソーシャル。マネタイズするというのが直接関連してなかっただけ。ゲームがやりきれてないことはいっぱいある」
国光:「もっと昔から囲碁とか将棋、かくれんぼまでそうですよね」
国光:「まきが入ったのでこれだけは言っときますけれど日本は暗い。みんなで協力して世界をとりに行こう」
田中:「それぞれの流派で世界を取りに行って日本を明るくしましょう」
【追記】田中さんの発言については冗談交じりでしたが、前向きなことばかりを書くのがメディアの仕事ではありません。登壇者からはメディアの報道姿勢への批判がありました。悪意を持った報道や当局に規制を促すような報道が一部にあることは確かですが、ベンチャー企業の社会的責任や倫理観の未熟さ、社会的なコミュニケーションの不十分さも原因のひとつです。少し厳しいことを記事で指摘すると取材をシャットダウンする会社すらあります。世界にチャレンジすることは素晴らしいし、日本も出来るという前向きなメッセージには共感しているだけに、もっとメディアと向い合ってほしいと思います。

*1:流れはなるべく再現していますが、壇上でのやり取りを正確に反映しているわけではありません