ガ島通信

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日本総合研究所「日本の進路を決める2007年参議院選−国民の正しい選択はマニフェストから−」

安倍政権の実績評価については日本総研の提言からは離れて客観的に進めた。政権公約のサイクル(未着手→構想→検討→成案→法案成立・決定→実施)は27点。マニフェストを受け止めて発展させているかを、政権公約一つ一つについて計算した。「政治主導体制の仕組みと運用」は、進めたフェーズの中で政治が主導の果たしたのはいくつあるか評価して26点。合計53点となった。
フェーズの数を考えると、安部政権は9ヶ月なのでフェーズの数が少ないので、アンバランスな結果が出そうなので調整係数をかけた(戦後総選挙が2、3年周期で行われてきたことを踏まえ、前回総選挙からの期間と安倍政権の担当機関の比率から2.2としている)。

安倍政権の政策実績に関する総合評価」については、実績を最も重視するので配点を60にした。外からみて、どこまで実績を作ったのか。郵政民営化の関連法案は6つ通って、着々と進んでいるが、事業間のリスクの問題の懸念は残る。中身について割り引いて考え、実績は38点。実行過程と説明責任は20点ごとの配分で各10点として、合計が58点。

「安倍内閣の政策実績に関する分野別評価」で、最も低いのは地方分権改革で51点。安部政権では進捗がなかった。評価が高いのは教育改革の66点。

参院選の各党の公約検証は、自民53、公明、民主が各51点。国民が関心があることを分かりやすくメッセージを出しているという点ではマニフェストの重要な用件を充足しているといえるかもしれないが、全体像というのはどうか。成長戦略、歳入歳出は踏み込みがほしかった。

人口減少のなかで、成長戦略は重要なテーマ。行政改革、成長戦略は様相を異にする。行政改革は定員を減らすなどすぐに効果が出るが、成長戦略は何かやれば効果が出るわけでない。多くの国が成長戦略を重要な政策と位置付けておりグローバルな競争になっている。状況変化に応じた柔軟性や戦略性、限られたリソースの中で最大限の力を出すための強い推進基盤が欠かせない。
パーツも大切だが、全体の枠組みのメッセージがかけていたらマニフェストにならない。年金問題や国民の安心、安全の観点から「セイフティネットを」と書いてあるが、政府は万能でなく。財政の裏づけが欠かせない。
個人のリスクを社会全体でシェアするとすれば、就労、成長、スキルアップの社会人教育も含まれる。そういうったものの中で、セイフティネットに対する日本の財政規模は多くない。アメリカをも下回っている。政府のセイフティネットが脆弱な上に、民間のセイフティネット、地縁、血縁、社縁が崩壊の危機にきている。国民の幸福指数は90位のランキングで平均以下。
こういうものに対してどうするのか。北欧をモデルとしていくのか、であれば高負担をを求めることになる。小さな政府で豊かな個人を増やすのもある。両方のいいとここどりもある。つまみ食い的にセイフティネットを言うだけでは訴求力がない。財政の裏づけがないのは絵に描いたもち。
国民が懸念している一つ一つの問題に分かりやすいメッセージを出していくのはマニュフェストにとって大事だが、全体像、推進のプラットフォームをどう作っていく、欠かせない。一ヶ月残っている。そうしたメッセージをぜひ追加していただきたい。