「プロフェッショナル広報戦略」世耕弘成
当たり前のことを、当たり前のようにさらりとやり遂げる。実は、これが最も難しいことではないかと思います。世耕弘成という人はそれが出来る人。それも相手の立場を考えた上で出来る。これはすごいことです。
自民党のブロガー懇談会(参考・自民党の「第2回メルマガ・ブログ作者との懇談会」に行ってきた)で、参加者に出されていた紅茶が前回は砂糖の入ったものからストレートに変わっていたのに気付いた人(泉あいさんだったと思う)がいて雑談の中で世耕議員に尋ねたとき、「砂糖が入っていると糖尿病の方は飲めないですから変えました」と答えたのを聞いて、小さなところをしっかりとフォローしている世耕という人の気遣いにうならせられました。直接お会いしたのは2度しかなく、いずれも短い時間だったのですが、背が小さくニコニコしている。「切れ者」というイメージがないのも広報マン向きです。
- 作者: 世耕弘成
- 出版社/メーカー: ゴマブックス
- 発売日: 2005/12/20
- メディア: 単行本
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「プロフェッショナル広報戦略」は、主に夏に行われた参議院議員選挙の裏話とNTT広報時代の体験談が主で、「プロ広報」のハウツーを期待していると中途半端な印象を持つかもしれません。文章がわかりやすいこともあり、さらりと読んでしまうと「当たり前のことばかりじゃないか」と思いがちですが、参考になる考えがたくさん詰まっています。
特に、NTTという巨大組織にいた経験から、組織を動かす重要性や組織の中でアイデアを実現していく大切さを語っています。あとがきで、ゴルバチョフ理論というものを紹介し、『改革の準備は怠らず、普段の仕事も手を抜かず、しかし改革実現のチャンスがきたときは一気呵成に』と語っています(ただし、改革のチャンスが来ない組織もあることを忘れてはいけないと思う)。詳しくは本を読んでいただくとして、組織内広報は雑誌やテレビで紹介されるような華やかな一面だけでは決してないということがわかります。
『一議員がボランティアで旗を振っても誰も動かない』ことから「党職員を動かすには肩書きが必要です。私を正式なポストに就けてください」と主張し、広報本部長代理や幹事長補佐に就任したことも、組織の動かし方を熟知した世耕議員らしいと語られることがあるのですが、これは実は経営者(この場合は党幹部)の判断と資質が問われているエピソードです。普段は広報を軽視していながら、何かあれば「広報は何やっているのだ!」と叱責する経営者もいるそうですが、それでは良い広報はできません。広報担当者だけでは何も出来ないのです。
ほかにも、『スタッフのモチベーションを上げる方法のひとつに「危機感の植え付け」があるが、人は危機感と言うムチだけではモチベーションを維持できない』など、改めて言葉にされると気付かされることが書かれています。広報担当者だけでなく、経営者、そして「改革を望む人(本では改革の同士と書かれている)」にもどうぞ。