「見出し」は著作権と認められず(知財高裁)
読売新聞社が、見出しの部分を使って「一行ニュース」を配信していたデジタルアライアンス社を著作権侵害などで訴えていた裁判の高裁判決がありました。記事は以下の通り。
『新聞社がインターネット上で配信している記事の見出し部分を無断使用し、利益を得ているのは不法行為に当たるなどとして、読売新聞東京本社が「デジタルアライアンス」(神戸市)に、損害賠償と記事見出しの使用差し止めを求めた訴訟の控訴審判決が6日、知財高裁であった。
塚原朋一裁判長は、デジタル社の配信事業を不法行為と認め、請求を棄却した1審・東京地裁判決を変更、約23万7700円の賠償を命じた。使用差し止めは認めなかった。
問題となったデジタル社の事業は、新聞社がインターネットサービス会社「ヤフー」などに有料で配信している記事のうち、見出しの部分だけを盗用し、「一行ニュース」と称して配信、広告収入を得るというもの。ユーザーが電光掲示板のように流れる見出しをクリックすると、ヤフーなどのホームページに画面が飛んで、記事の本文が読める仕組みになっている。
読売側は、<1>見出しは著作物であり無断使用は著作権侵害<2>新聞の最終成果物である見出しの無断使用はニュース配信事業を妨害する不法行為――などと主張していた。』(読売新聞、YOMIURI ONLINEより)
この裁判は、ネット上のニュースに関する著作権問題に大きなインパクトを与えると思われますが、この記事では、詳しい賠償の根拠が書かれていません。『デジタル社の配信事業を不法行為と認め…』だけでは、見出しの著作権が認められたのか、認められていないのかは分からないですし、使用差し止めが認められていないところを見ると、有料配信が問題になったのかもしれません。詳しく書いていないところを見ると読売側に都合が悪い理由があるのかも…。
追記 各社の記事が出てきました
●毎日新聞 『知財高裁「記事見出し、法的保護の対象」と初判断』
『インターネット上で配信した新聞記事の見出しを無断で使用し収入を得ているのは不法行為だとして、読売新聞東京本社が情報サービス会社「デジタルアライアンス」(神戸市)に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が6日、知的財産高裁(知財高裁)であった。塚原朋一裁判長は、読売側の請求を棄却した1審・東京地裁判決(04年3月)を一部変更し、記事の見出しを法的保護の対象と初判断し、不法行為を認めて23万円余の支払いをデ社側に命じた。
判決は、見出しについて「相応の苦労・工夫により作成され、それ自体からニュースの概要について一応の理解ができ、法的保護に値する」と判断。デジタル社の行為は「営利目的で、特段の労力もなくコピーしている」と、民法上の不法行為(営業妨害)にあたると指摘した。
読売側が主張した著作権侵害については「見出しの表現によっては創作性を肯定し得る余地もある」と、著作権成立の可能性を認めながらも「本件見出しが創作性を有するとはいえない」と退けた。不法行為に基づく無断使用の差し止め請求は認めなかった。』
●時事通信『記事見出しは法的保護対象=ネット無断使用で賠償命令−著作権は認めず・知財高裁』
『ホームページ(HP)上の記事の見出しを無断で使用されたとして、読売新聞東京本社が、情報サービス会社「デジタルアライアンス」(神戸市)を相手に、差し止めと損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、知財高裁(塚原朋一裁判長)は6日、「見出しは法的保護に値する」との初判断を示した。その上で、請求棄却の1審判決を変更し、約24万円の支払いを命じた。
塚原裁判長は「見出しは多大の労力、費用をかけた報道機関の活動の結実。それ自体有料で取引され、独自の価値を持つ」と指摘。「営利目的によるデ社の無断配信は許容の限度を超え、原告の利益を侵害する不法行為」と述べた。
損害額は読売新聞と他の業者との契約料金を基に1カ月1万円と算定した。
一方、読売側の著作権侵害の主張について、表現によって創造性を肯定できる余地もあるとしたが、「本件見出しには認められない」として、1審同様に侵害を否定。差し止めも認めなかった。』
●朝日新聞『ネット見出し無断使用に賠償命令 著作権認めず 控訴審』
『インターネット上の記事の見出しを別のサイトで無断で使われたとして、読売新聞東京本社がサイト運営会社「デジタルアライアンス」(神戸市)を相手に、計2480万円の損害賠償などを求めた訴訟の控訴審判決が6日、知財高裁であった。塚原朋一裁判長は読売側の請求を全面的に棄却した一審判決を変更。「無断かつ営利目的で見出しを使い、社会的に許される限度を越えている」としてデ社の不法行為を認め、1カ月あたり1万円、計約24万円の損害賠償を命じた。
著作権侵害については一審同様、「訴訟で問題となった見出しには創作性がない」として認めなかった。見出しの使用差し止め請求も退けた。
ただ、「ニュースの見出しは創作性を発揮する余地は少ないが、表現次第では創作性を認める余地がある」とも指摘した。
塚原裁判長は「ネット上の記事の見出しは報道機関が多大な労力と費用をかけた活動が結実したもので、法的保護の対象になり得る」との初判断を示し、一定の条件のもとでは無断コピーが不法行為となると述べた。
問題となったのは、デ社が自社サイトで電光掲示板のように流している見出し。ヤフーのサイトに読売側が提供している記事の見出しをデ社が許可なく使ったため、読売側が提訴した。
塚原裁判長は「デ社はニュースの鮮度が高い時期に特段の労力もなく無断で複製し、反復継続して使い、読売の業務とも競合している」として不法行為の成立を認めた。』
やっぱり、見出しの著作権は認められていなかったのか… 読売の記事は「自社の主張」は書いているけど、それが知財高裁にどう判断されたか書いていなかったので、怪しいと思っていました。
判決文を読んでいないので、詳しいことは分かりませんが、営利目的に使うのはダメだということでしょう。ということは、グーグルニュースなどは検索目的だから大丈夫という言い訳ができなくもない…。また逆に言えば、商売に使う場合の見出しの相場は現状では1ヵ月、1万円ということも「(暫定)決定」です。見出し1万円、安いのか、高いのか、やっぱり安いですかね…