ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

マスコミ倫理懇談会で毎日「WaiWai」問題について話をしました

新聞、テレビ、出版各社が組織している「マスコミ倫理懇談会」の第52回全国大会の分科会「ネット社会とメディアの倫理」に出席して、毎日新聞「WaiWai」問題をケースにしてネット社会の動きや課題について話をしてきました。

講師は、ゼロスタートコミュニケーションズ伊地知晋一さんと、ITジャーナリストの趙章恩さんの3人。分科会の参加者は約50人(全体では約300人)、見た感じですが40代後半から50代ぐらいの方が多く、女性は数名でした。
趙さんは、IT-PLUSでのコラム「IT先進国・韓国の素顔」を読んでいたのですが講演を聴くのは初めて。
ネット先進国と呼ばれる韓国の状況について「コメント欄に悪質なことを書かれたタレントの妻が自殺、実名を強化しても悪質コメントは無くならない」「電凸で新聞広告をやめた企業の株が1.5倍に」といった話があり、軽い衝撃を持って受け止められているようでした。
個人的に一番心に残っているコメントは「韓国にマスメディアはない。どの世代に伝えたいのか考えないと生き残れない」というもの。もはや一億層中流ではなく、クラスター化が進む日本でもメディアマーケティングの重要性はこれから高まっていくでしょう。
伊地知さんからは、一度ネット上でネガティブ情報が広がってしまうと検索エンジンの上位に表示されてしまう「ネガティブSEO」で長い間効果が続くこと、まとめサイトを使った「攻撃」が威力を増していること、などが話されました。「既にネットユーザーが多数になっていることを直視する必要がある」「ネットでは大勢の視点に立った中立的な発言が存在しにくい」と丁寧に話していたのが印象的でした。
参加者の状況を見てのことだとは思いますが、これも趙さんが指摘する「マスがなくなっている」ということにつながる話でしょう。

参加されている方からはWaiWai問題にとどまらないさまざまな質問が出て、関心の高さを感じることができました(時間オーバーした唯一の分科会だったそう)。懇談会の様子は北海道、河北、宮崎日日などにも掲載されています(共同通信の配信記事)。また、テレビと全国紙の取材も入っていたので、また後日特集などに掲載されるかもしれません。

マス倫懇全国大会始まる ネット社会など論議」(北海道新聞

毎日新聞社の英文サイトにわいせつな記事が掲載された問題をめぐり、ネットユーザーが同紙の広告主に電話をかけ、広告の継続をただす「電凸(電話突撃)」が相次いだ事例は「ネット社会とメディアの倫理」の分科会で取り上げられた。
講師のウェブコンサルタント伊地知晋一さんは毎日新聞社のケースを踏まえ「ネットユーザーはマイノリティーではなく、その威力は侮れない」との見方を示した。
ネット事情に詳しいジャーナリストの藤代裕之さんは「英文サイト問題への謝罪が十分とは受け止められなかった。ネット社会を特集した連載記事へのネットユーザーの評判が悪かったことも影響したのでは」と指摘。毎日新聞社はこの問題についての報告を、「時期尚早」として見送った。

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