ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

準備してきたことが「形」になった2009年をベースに、より発展させる2010年にしたい

明けましておめでとうございます。2010年をスタートさせるにあたり、ここ数年準備したり、動いてきたことが、「形」になった2009年を振り返り、今年の活動のベースにしたいと思います。

最も大きなものは、大学生向けのジャーナリスト育成プログラムとして始まった「スイッチオンプロジェクト」です。
初めての試みながら、趣旨に賛同するデスクが15人集まり、41人の大学生が参加(修了28人)、文化通信、新聞協会報、朝日新聞に取り上げて頂き、朝日新聞ジャーナリスト学校が発行する「Journalism 11月号」に「ジャーナリスト教育の新たな試み 記者と学生の127日間 スイッチオンプロジェクトの実験」というタイトルでレポートを書くことが出来ました。
目標に掲げる、ジャーナリスト同士がメディアや組織を超えて個人として切磋琢磨できる「場」のさらなる実現に向けて、今年は大学生向けに加えて若手向けのプログラムを行う予定です。
もうひとつが、WOMJ(WOMマーケティング協議会)の発足です。アメリカの業界団体WOMMAのサミットに参加したのが2006年末、2008年のPRブロガー新年会がきっかけで勉強会がスタート。個人的に関心を持ってから、約2年半をかけて立ち上がったWOMJでは、理事には入りませんでしたが、ガイドラインプロジェクトを担当しました。ガイドラインは3月に行われる予定のWOMJイベントで発表する予定です。

さらに、NTTドコモモバイル社会研究所の研究会での議論が「地域メディアが地域を変える」という本になり、第6章・魔法の杖はない ―地域活性化のためにメディアを使うを執筆。2008年度から非常勤としてサイエンスライティングを担当した北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)の成果をまとめた、「モジュールライティング」の開発と文章教育における実践事例(リンク先からPDFでダウンロードできます)が、CoSTEPのジャーナル「科学技術コミュニケーション第6号」に掲載されました。
これ以外にも、米子での地域メディア合宿(8月)、母校広島大学での講義(9月)、山陰中央新報での講演(10月)といったイベント。早稲田大学、上智大学ではスポットながら非常勤講師も務め、毎日新聞のメディア時評も担当するようになりました。
振り返ってみると、色々な場所で、色々な人に出会い、刺激を受け、多くの仲間に恵まれ、アドバイスを頂き、支えて頂いたおかげで、これだけのチャレンジができたのだと改めて思いました。本当にありがとうございました。

スイッチオンですが、誕生日でもある2月1日にブログで公表。15人のデスクと学生運営委員に支えられながら、3月末から8月までを乗り切りました。7月からgooニュースに掲載することにしていたものの、想定していたレベルに達せず直前に苦しみましたが、学生が書いた原稿がgooニュースでデイリーのアクセスランキング1位に輝くという実績を残しました。新聞社、通信社、雑誌社からプロの記者が書いた1000本を超える原稿が来ている中、誇れる結果でしょう。
ランキング1位となった、スタジオジブリの鈴木さんの記事を書いた佐藤君は、ジブリのアルバイターになり、スイッチオンの学生運営にも加わり中核メンバーになりました。佐藤君だけでなく、第一期の修了生や成果発表を見て運営に加わった学生がスイッチオンをより面白くするために活動してくれています。

北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)での講義は09年度前期で終えました。初めての大学で通年の講義を担当しただけに、3月にあった2008年度の成果発表は思い出深いものになりました。受講生は「厳しい」講義に応えてくれ、任意で行った合宿にも多くが参加してくれました。これまで前例が存在しなかったライティングをスキルとして教えながら、同時に構造化・体系化していくという試みは、モジュールライティングというメソッドとなり、そこで学んだことはスイッチオンへと引き継がれています。

地域メディアが地域を変える
地域メディアが地域を変える」の第6章・魔法の杖はない ―地域活性化のためにメディアを使う、では地域のメディアの役割やコミュニティのあり方について、改めて見つめなおす機会を得ました。第6章の項目は下記のようになっています。

1. 地域メディア、期待と失望の中で
2. メディアをどう創るのか、地域の現場から
3. 利用者から見た地域メディアの「弱さ」と「強さ」
4. 地域メディア、成功へのヒントを見出す
5. 地域活性化のためのメディア設計、七つのポイント
6. ヴァルネラビリティへの共感、メディアの役割

これを書いたことで米子の合宿が実り多いものとなり、日経IT-PLUSのコラムで「地域の課題を解決する」中海テレビ 変化するニュースメディアの生態系をまとめることが出来、NHK放送文化研究所の方から「放送メディア研究」への執筆依頼を頂きました。

最後にメディアの変化について。特にニュースメディアは、マスメディアの厳しさが目立つ一方、確実に新しい動きがあると感じたので、日経デジタルメディアの編集者にお願いして「変化するニュースメディアの生態系」というコラム内企画を作っていただきました。

09年の後半は、事業仕分けという政治イベントとの相乗効果もありtwitterが大きく勢いを伸ばしました。

新しいニュースメディアやtwitterに加え、政権交代時の記者クラブ問題では、ジャーナリスト高野孟氏らが作ったブログサイト「THE JOURNAL」が情報発信の中心の一つとなりました。変化するニュースメディアの生態系でも取り上げたライブドアも「BLOGOS(ブロゴス)」をスタートさせています。ブログやメディアネットワークがどのような動きを見せるのか、収益・ビジネスモデルが厳しさを増すマスメディアがどのような手を打ってくるのか。IT-PLUSのコラムでは、引き続きインターネットを中心に、ニュースメディアの変化について追いかけていく予定です。

スイッチオンのような「場」「ネットワーク」づくり、大学での講義や学会での発表といった研究活動、そしてジャーナリストとしての取材、執筆活動の3つの軸を2010年はさらに発展させていきたいと思っていますので、引き続きよろしくお願いいたします。

【関連エントリー】