ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

「サブカル・ニッポンの新自由主義―既得権批判が若者を追い込む」

佐賀で先月開催された第3回地域SNS全国フォーラムをきっかけに、日経IT-PLUSにメディアとコミュニティの関係について書きました。

サブカル・ニッポンの新自由主義―既得権批判が若者を追い込む (ちくま新書)
そのフォーラムでパネリストとしてご一緒した鈴木謙介さんの新刊が「サブカル・ニッポンの新自由主義―既得権批判が若者を追い込む」。コラムに書いたコミュニティにおける「緩さ・弱さ」の重要性にもつながるものがあり、大変参考になりました。
鈴木さんがまえがきで「本書は、思想の本であり、社会分析の本である。あいつが悪い、こう変えろ、といった主張をするのではなく、そうした主張そのものも分析の対象にしながら、議論を展開していく」と書いている通り、最近の新書にありがちな分かり易さとは無縁です。なので、答えを求めている人にとっては何とも暗い気持ちになるかもしれません。
内容も多岐にわたっているので紹介するのが難しいですが、これまでのロスジェネ世代の格差社会批判にありがちな「旧世代が悪い」「あいつらの取り分を奪えばうまくいく」といった既得権益批判は問題の解決にならないということ。そして、個人の能力が評価軸の中心となったことで競争に駆り立てられマッチョであることを要求される社会に「対抗」するために、生存がそのままで承認される共同体の必要性を提唱しています。
ネットコミュニティにも言及されていて、オンラインは資源が複製可能ゆえに「分け合いの共同体」の可能性があり、それが「弱虫」を承認する領域にもなり得ると言いつつ、その承認の共同体の危険性にも触れるなど注意深く可能性を探っていくので、議論が蛇行しているように感じられます。結論が明快だと読んだほうもすっきりしますが、慎重に書き進めているのが鈴木さんの誠実さなのではないかと思ったり…