ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

記者会見オープン化、記者クラブ批判や解体が目的ではないはず

記者クラブは封建的」と話した亀井金融相が、記者クラブ加盟社を除いてフリーや外国通信社の記者を相手に別の会見を開いたとのこと。

岡田外相の会見オープン化に続いての展開で、ネットでは亀井金融相の行動を評価する声が多いように思います。基本的には、既存メディアの既得権益化した現在の記者クラブのあり方は問題が多く、オープン化への対応も不十分だと考えていますが、少し冷静に考えたいのはクラブ批判や解体が目的なのかということです。
日経IT-PLUSのコラム新政権の記者会見オープン化 抵抗勢力を見極めよに書いたように、政・官の会見や情報に誰もが自由にアクセスできるようになることで切磋琢磨が行われ、多様な情報が人々に届くようになることが重要なはずです。亀井金融相の会見は限られた人によるもので本当の意味で「オープン」とは言えませんし、これからの参加条件もよく分かりません(外務省の場合はホームページに掲載されている)。開放方針がいつ方針が変更されるかも分かりません。手段の変化に目を奪われ過ぎて、本質が忘れ去られているように思います。
逆に既存メディア側は、記者クラブという仕組みを維持することが目的化しています。
ネットでは公開されていませんが、7日の朝日新聞「メディアタイムズ」が亀井金融相の会見におけるクラブのやり取りを報じています。見出しは「会見オープン化で波紋」で、フリー記者が大臣会見に出席・質問することについてマスコミ各社がどう考えているかの表もありました。
朝日の記事によると、亀井金融相は、会見に参加することは出来るが質問することが出来ないオブザーバーとして参加しているフリー記者の例外扱いをやめ、外務省方式(主催は外務省に、事前登録すれば質問もできる)を導入するように記者クラブに要請。クラブ各社での議論はまとまらず、幹事社が裁定して要請を拒否する合意をまとめた。朝日は「主催者として事前登録に関与できるようにすれば、オープン化を断る理由はないのでは」と主張したものの、合意には異論は述べなかったとのこと。
記者クラブと記者会見については「記者クラブに関する日本新聞協会編集委員会の見解」があり、解説に「「閉鎖的」「横並び体質」「特権意識」などという記者クラブへの批判にも、謙虚に耳を傾け、改めるべきものは改めることにした」と書かれおり、それなりに対応している内容となっています。市民からの情報発信に対して記者クラブは開かれているとした上で、会見が公的機関の一方的な判断によって開催が左右されてしまう危険性を考え、記者クラブが主催すべきとしています。
ただ、朝日の記事を見ると、金融庁のクラブはこの見解の「記者クラブは、その構成員や記者会見出席者が、クラブの活動目的など本見解とクラブの実情に照らして適正かどうか、判断しなくてはなりません」という部分を引用して拒否したようですが、それによって会見の主催が大臣や省庁に移動したり、第二の会見が行われて権力側に付け入る隙を与えてしまっては本末転倒ではないでしょうか。
これまでのやり方を変えず、既得権益を守ろうとして会見が分断されてしまったのでは意味がありません。そもそも記者クラブは、力の弱い記者が団結して権力に立ち向かう機関として生まれたわけで、新旧メディアやクラブ員vs非クラブ員の二項対立は、振り返ってみれば、メディアが分断され、政と官に都合よく使われたということになる可能性もあります。
記者クラブ維持、解体という話ではなく、切磋琢磨が行われ、多様な情報が人々に届くように、つまりジャーナリズムの質を向上させるためにどのような仕組みがあるのか、考えていくことが大事なはずです。

・大臣会見へのフリー記者らの参加についてのマスコミ各社の見解(朝日新聞記事より)

朝日 出席者を記者クラブ加盟社に制限すべきではない
毎日 記者クラブが判断すべきだ
読売 報道の実績があり、報道倫理を共有していることを前提とすべきだ
産経 記者クラブにおいての議論や見解を尊重したい
日経 事情が許すなら、参加を制限する必要はない
東京 国への情報開示などの観点から、原則認めるべきだ
共同通信 報道活動に一定の実績があるなら、原則オープンにするべきだ
時事通信 理想論だけで結論を出せる問題ではない
NHK マスコミ各社の議論を踏まえて、対応を検討する
日本テレビ 記者会見側と大臣側が協議することが大切
TBSテレビ クラブの状況を勘案して適宜対処すべきだ
フジテレビ 回答なし
テレビ朝日 知る権利への奉仕は、多様なアプローチがあってしかるべきだ
テレビ東京 基本的に認めてもいい

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