ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

「説明」しても意味がない場合がある

ニッポン放送を買った直後あたりから、フジの対抗策が発表されるまでの堀江社長の態度は「説明しても分からないでしょ」と半ば、説明をあきらめているように見えていたのです。

これまでテレビ画面から伝わる堀江社長のイライラは、特定の構図に持ち込みたいアナウンサーや記者の質問にも原因があったと思いますが、それだけではなかったと思うのです。「ネットは新聞を殺すのか」は、堀江社長について『相手が近未来のデジタル社会の話を理解しないとバカにしたような態度を取ってしまう』と書いていますが、この例えはデジタルに限らないと思います。これは私個人の経験ですが、中高生向け紙面をリニューアルした(*参考エントリー「小さな勝利宣言」)ときは、表に裏にバッシングを受けました。「レイアウトが新聞らしくない」「昔のほうが面白かった」「新聞はお前一人のものじゃない」などなどです。最初は「紙」の現状やリニューアルのコンセプトを丁寧に説明していたのですが、しばらくしてやめました。そういう人は、はなから私の話など聞く気がないことに気づいたのです。それから私は「評論家はお断り。文句言うなら対案を出してください」と言うことにしました。対案を出せば「当事者」になってしまい、責任が生まれます。結局、評論家だらけの新聞社内でアイデアを出してくれたのは、リニューアルを見守ってくれた同期や後輩たちでした。文句を言っていた人たちは、ある程度実績を積み上げるととたんに表立っては黙ってしまうのです(多分裏では悪口言っている「調子に乗ってる」だのなんだの)。

成功すれば皆黙り、失敗すれば「落ちたムネオを叩くように」大バッシング。要するに成功すればいいのです。フジテレビ日枝会長の「歴史がない」発言からも分かるように、フジ&ニッポン放送には最初からまともにライブドアの提案を聞くつもりなどありませんでした。堀江社長は「ライブドアニッポン放送株を買って、利益が生まれればそのうち皆黙るだろう」と思っていたのではないでしょうか(完全な想像です)。話を聞く気もない人に説明するのは時間の無駄です。もちろん、堀江社長と私では経験に雲泥の差がありますので、バッシングの大きさなどは比べるべくもありませんが…。それがフジの自爆的対抗策の発表で風向きが変わりそうな予兆が生まれた。説明して損はない。例え今回の買収が失敗しても、「きちんと説明しているのに、聞いてくれなかった守旧派に敗れた人」というイメージは残る。そんな変化もあったのかと…。

「お買い得」と思って、競売で安く買った物件に893さんが住んでいた。的な感じになってきた今回の騒動。ビジネス的な側面を考えればTOBに応じて、いったん撤収するのもアリかなと思いますが、ライブドアはどうするのでしょうか。

追記 関西電力や大和証券SMBCがフジのTOBに応募するということです。これまでにもいくつかの企業が応じていたと思いますが、フジのTOB価格より現在の株価は高いわけで、関電や大和は普通に株を売るよりは損をする可能性があるわけですよね? 何故フジのTOBに応じたか関電や大和はそれぞれの株主に説明する必要があるのではないでしょうか?(それとも、どこかでしてるんですかね?。株主じゃないけど知りたい…)。