ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

朝日新聞記者にみる傲慢

朝日新聞記者が道交法違反で罰金を受けたことで3ヶ月の停職となりました。 朝日の記事によると、夜間通行禁止の道路を自動車で走り、警察官の取締りを受け、その際「記事にする」と言って反則切符への署名を拒んだとのこと。確かに法律的な罪(普通はこの程度では起訴されたりしないが…)そのものはたいしたことがないですが、メディアそしてジャーナリズムに与えた「罪」は重大です。

「記事にする」との言葉からは、自分の特権的立場を利用して警察官に圧力をかけ、取締りから逃れようとするこの記者の姿勢が透けて見えます。すべてが推測ですが、この記者は「新聞記者である俺がなんで捕まらなきゃならないのか」という拡大した自我や自尊心だけでなく、「警察の点数稼ぎの取り締まりに文句を言ってやった!」ぐらい思っていたかもしれません。大いなる勘違いのまま、反権力ぶってた可能性すらあります。これこそ私が何度も指摘してきた「特権階級に甘んじる既存メディアの傲慢」で、本質的にはナベツネの「たかが選手」発言と変わらないものです。

新聞は普段から「弱者の視点」や「市民の声の代弁」ということを主張しています。9月30日から神戸で開かれたマスコミ倫理懇談会全国協議会は、「ジャーナリズムの原点へ」をテーマに開かれ、開催地の神戸新聞社長が「報道の本質は社会悪に立ち向かうことだ」とあいさつしたようです。だからこそ、この朝日記者のニュースは痛い。特権階級の記者に弱者の視点などあるわけがないし、勘違いした反権力の立場では、本当の社会悪に立ち向かうことはできません。いくら「誠意あるジャーナリストたち」が「努力している」と言っても、一人でもこのような記者がいることで、誰も信用しようとはしないでしょう。そして、追い討ちのように同じ朝日の記者が「強制わいせつで逮捕」のニュース。三菱自動車とふそうのように「だめな会社だな〜」とレッテルを張られてしまうと、信頼を取り戻すのに途方もない労力が必要です。

この朝日の記者に新聞記事を書く資格はないと思います。そして、このような勘違いをした記者を東京経済部に引き上げた(まるで保護しているように見える)朝日新聞は、ここ数週間の読売新聞よりも罪深いのではないでしょうか。

色々な方からのコメントありがとうございます。朝日の記者が過去に信号無視や速度違反を繰り返していたことは調査不足で知りませんでした(「あざらしサラダ」さんありがとうございます)。私は駆け出し時代3年間警察・司法担当をしていましたが、このような微罪で公判請求(裁判になること)されることはほとんどありませんでしたので、記者の悪質性については経験による推測でした。結果的に当たっていたのかもしれませんが、暗い気持ちになってしまいました。
このようなある種の勘違いというのは、私も心当たりがあります。事件では刑事と一緒に「悪いやつを逮捕し」裁判ではまるで自分が裁判官のような気になって「裁く」。日本の司法制度の原則は推定無罪であることなどきれいに忘れ去っています。逮捕時点では罪は確定していないにもかかわらず、その時点で社会面に「やはりあの人が」とか「黒い実態が明らかに」などの記事をみたことがあると思います(今回の朝日問題でも判決が出てから私は書くことにしました)。その割りに、判決時点では関心は次の事件に移ってしまい扱いが小さくなっていたりします。検事に「裁判や法廷でのやり取りをもっと大きく扱うべきだ」と提案されたこともあります。
「tjst」さんの「ネガティブキャンペーンの常套句」との指摘ですが、確かにそういう側面はあると思います。「だから偏向朝日はダメなんだ!」という感じでしょうか。ただ、道交法違反と強制わいせつは質が違っていると思います。強制わいせつはまさに「たまにいる変な人」だと思いますが、道交法はそこに既存メディアの持つ体質と構造問題が染み出しています。たまたま朝日でしたが、これは全国紙や通信社、地方紙、テレビ局すべてに共通する問題だと考えています。
最後に「聞きかじり」さんの温かな配慮に感謝です。