ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

裁判原稿のコメントについて

読者の方から下記のようなご質問を頂きました。

裁判や警察(例えば、逮捕でも検挙でも)沙汰になった企業の取材をされていると思うのですが、「訴状を見ていないのでコメントできない」とか「連絡が取れないので具体的なことは報告できない」とか書かれていたり(新聞)、読み上げられたり(TV)する訳ですが、本当にそう言っているのでしょうか?コメントできないと言っていることをわざわざ言うのも「おかしい」ですが、そのとき、後で取材してコメントが述べられたことが無いのも「おかしい」と思います。あれは一体何なのでしょうか?私にはその場しのぎのマスコミのごまかしと思っています。

まず、取材はきちんとしているはずです。例え「コメントできない」という奇妙なコメントでも(コメントできないとコメントしてるじゃないか!)、勝手に書いてしまうと捏造です。抗議がくるでしょう。
民事訴訟の場合、訴えた側(原告)が、裁判所に書類を提出してから、訴えられた側(被告)に通知が届くまで時間がかかります。書類提出後に原告側が記者会見をして「今日、訴えました」などと発表するケースなどでは、被告側は本当に訴状を見ていない場合があります。マスコミからの電話で、初めて訴えられたことを知り「訴状を見たい」と依頼されることもあります。私が取材したケースでは、原告や原告側弁護士と相談して許可が出たので、ファクスで送り、コメントを出してもらいました。もちろん、見ているけれども、マスコミに「見ていない」と回答している企業もあると思いますが、マスコミ側はそれを確かめるすべはありません。

マスコミは両論併記ですので、原告側のコメントだけが載るのは、できれば避けたい。例え「見ていません」でも、被告側のコメントを聞いたことにできるわけです。被告側にすれば、コメントが裁判の行方に影響することも考えられますので、多くを語ることは得策とは言えません。「訴状を見ていないのでコメントできない」は、マスコミ、被告側の思惑の妥協の産物です。

もし、企業などが「訴状が届いていないので分からない。きちんと訴状を読んで、対応を決めてからこちらの意見を説明したいので、相手側の言い分だけを明日の新聞に載せるのはやめてほしい」と言えば、マスコミは対応に困るかもしれません。中には、「後日説明したい」というコメントを載せて、事足りると思っている、というよりも他社が書いてきたらどうしようという保身で一杯の「質の低い」デスクもいるでしょうが…(だいたい、こういう場合は、後日の説明も掲載さず、「裁判の中で主張すればいいじゃないですか」とか「裁判記事でフォローします」などと言う可能性が高い)。私は、管理職経験がありませんので、現役の管理職・デスクの方のご意見も聞いてみたいところです。

『なぜマスコミは特別会計をとりあげないのか』とのご質問もありましたが、取り上げてないわけではないと思いますが… 国民年金とか道路とかも特別会計ですし。私は国政の取材をしたことがないので、申し訳ありませんがよくわかりません。一般会計であれば、予算紹介が定例化しているので取り上げざるを得ないが特別会計はそれほどでもないのでスルー、たくさんの種類があって制度も複雑なので取材が面倒、官僚様にうまく丸め込まれている、記者の問題意識が低いなど、さまざまな理由があるでしょうが…、どうなんでしょう?