ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

コミュニケーションの会社のコミュニケーション下手

mixiのことです。
「新プラットフォーム発表」ということでmixiにお邪魔してきました。噂されていたFacebookページと同じような機能を持つmixiページの発表ということで、その内容はネットニュースサイトなどが報じていますし、mixiにもページnaviがあります。戦略的に見ても手堅い方向だと感じましたし、詳しくは日経電子版の「ソーシャルメディアの歩き方」で書く予定です。

気になったのはコミュニケーションについてです。
まず、この発表会には質疑がありませんでした。その代わりに発表会の後に笠原社長と原田副社長と話す懇親会が設けられていました。発表はUstで生中継されていましたが、ユーザーからの質問もなしで、懇親会は中継なしでした。そのUstも音声がうまく出力できずに、新機能よりもトラブルへのコメントが多く見られました。
mixiではデザインや規約変更でユーザーから反発を受け、最近では足あと機能問題につていてもユーザーから意見が寄せられていました。

質疑があれば必ず足あとについて記者から質問が出たでしょうが、質疑がないのでユーザーの前で語られることはありませんでした。前日発表されたこのコメントで終わりなのかもしれません(mixiサービスの方向性について)。
足あと機能について前日コメントを出し、新機能を発表すればメディアは書かないし、ユーザーも話題を変えると思っているのかもしれませんが、対応を忘れない人もいます。
2006年にmixiで起きた事件をある媒体に書いた際には、広報が「そんなことはなかった」と記事にクレームをつけてきました。雑誌では「深夜まで連絡してくる非常識なマスコミ」と語っていたこともありました。むろん、マスメディアの記者側にも問題があったのかもしれませんが、雑誌で言うべき話なのか…
では、広報部門の問題なのでしょうか。広報の担当者とは取材の際にお世話になることもありますが、熱心に対応してくれます。
原田副社長は「皆さんと話す機会が取れず、お時間を取った」と言ってましたが、その一方でこんな発言もツイッターに残ります
『「アクティビティ機能に反対していた人たちはmixiをコミュニティー中心で利用しているユーザー層。彼らはmixiのユーザーの数%程度しかいないんだけど、ネット上での声が非常にでかい。大きい声に惑わされず運用するのが大切」』
色々なことを言う人は、企業にとっては確かに対応が難しいし、原田副社長が言うように、ネット上の声ばかり聞いても運用できないこともありますが、このコメントを見てユーザーを切り捨てているように感じました。これも外で言うべき話なのかどうか…
mixiが方針を転換するのは企業ですからあり得ることですし、他のSNSと言われた企業がゲームに傾き、大きな利益を上げる中でプラットフォームにこだわる判断もチャレンジングで、個人的にも応援している部分です。私も含めてユーザーは色々なことを言うでしょう。マスメディアもコンサルタントもです。経営者はその中で判断が求められる孤独な仕事です。mixiの方針が理解されず、焦りがあったのかもしれません。自分自身も小さな団体やサービスを運営していても、色々な声に迷い、理解されていないことを残念に思う時もあります。上場していて、日本を代表するネット企業を運営するプレッシャーは相当のものでしょう。だからといって理解してくれる人、自分が思う通りのコメントをしてくれる人ばかり周りにおいてしまうと裸の王様になってしまいます。
実名署名した人をはじめ、色々言う人はmixiを好きで、愛してくれているんだと思います。そしてユーザーの声にはヒントも多く眠っています。何より提供者側はユーザーあってこそ。何も言わずに離れて行くほうがよほど恐ろしい。
記者と懇親を深めて、理解をしてもらうのも大事ですが、ユーザーに正面からコミュニケーションしてもらいたいものです。ユーザーの一部は方針転換を認めない強硬派もいるでしょうが、その人たちにも理解を求め、語り続ける姿勢を他の多くのユーザーは見ているのではないでしょうか。戦略に反対しているのではなく、ユーザーは運営側が離れていくことが悲しいのだとすれば。思いはすべて「声」になるとは限りません。
コミュニケーションは、良い事ばかりではありません、傷つくし、理解されなくて辛い時もあります。だけどやっぱり人とつながりたい。だから相手を信じてコミュニケーションする。コミュニケーションのプラットフォームを運営している人たちがユーザーと向き合わないなら… せっかくUstもあり、ユーザーに直接話す機会があったのに残念でした。