ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

Googleに関するエントリーについての反応

Googleという反社会的企業」というエントリーを書いて、ストリートビューGoogleの企業姿勢や広報対応についていろいろな反応がありました。Global Voicesで「Japan: Street View and Public Space」という記事にもなり、議論が広がっています。
エントリーにも書きましたが、「反社会的だからGoogleを使うな」と言うつもりもなく、「文句言う人はGoogleを使わなければいいのに」といった極端な反応も不毛だと考えていて、ウェブ検索というもはや生活基盤・インフラになっている企業だからこそ社会的な責任を果たす方向に議論が進むことを望んでいます。それを踏まえていくつかの反応について書いておきます。
まず、「組織体制の脆弱さに起因するもの」「電話対応は会社全体の意見を反映していないのでは」といったコメントについてですが、Googleはプレスセンターやブログといった自社メディアを持っており、高木さんの記事が間違っていれば意見を表明することもできます。もし、Googleが日本のウェブユーザーと誠実に関係を築きたいと考えているなら、もう少し違った対応をするでしょう。
もはや社員数人のベンチャー企業ではなく、雑誌などにはパブリシティを展開している(例えば東洋経済の「グーグル10年目の大変身」にはグーグラーが紹介されており、相当手厚く協力したことが伺える)ことを考えれば、体制が整っていないというのは言い訳になりません。

海部さんは、ストリートビュー騒動の根底にあるのは『「グーグル一人勝ちで、思い上がってんじゃないの?」たは一人勝ちで大丈夫なんだろうか、という不安なのだと思う』と書かれていますが、勝ち組を引きずりおろすというよりも「何もかもが可視化されていく」というネットの本質をむき出しで見せられたことへの不安もあるのではないでしょうか。
それに、ビジネスをやっている人たちだけが「リスク」をとっているわけじゃなく、普通の人が巻き込まれている「リスク」があるから問題になっているわけで…(また、個人的にはドンキ君がいるから新たなビジネスやイノベーションが起きると思っていますが、話がずれるのでやめます)

自動車の速度についての記述がありました。確かに、日本のような狭い国で200馬力や300馬力も出る車を売って何になるのだ、重大な交通事故の要因になっている、といった批判はありえるでしょう。しかし、自動車メーカーが「実際のところみんなスピード違反して走ってますから150キロ出しても問題ないですよ」とか「制限速度というのもとくに法律で定められているものではないかと存じますので、とくにその必要もないかと思うんですけども。あはは」などとは言わないでしょう。
前のエントリーでも、ストリートビューのサービスそのものについての評価は書いておらず(プライバシーに関しては人それぞれ許容レベルが違うし)、「公道私道に法律の区別はない」と言い切る企業姿勢について問題を指摘したつもりでした。 が、メッセージをいただいたり、リアルで意見交換したりする中で「Googleの姿勢はシーシェパードグリーンピースと同じ」とおっしゃられた方がいらっしゃいました。
確かに「思想問題」になれば「世界中の情報を整理する」という思想や企業姿勢にシンパシーを感じる人は法律について多少の問題も気にしないので議論がかみ合わない可能性があります。

インターネットは、これまでにはない状況を生み出しており、既存の制度や組織とコンフリクトを起こしながら進んできました(それを見て、書いていくのも自身の仕事のひとつと考えている)。楠さんが指摘するように、Googleがやらなくても問題は起こり得るので、ストビュー的なサービスの先に何があるか想像力を働かせ、政策的な課題を洗い出していくことは重要です。だからと言って、現状日本の法律を軽視してもいいわけではありませんので、起業姿勢について明確に意義を唱えておいた上で、制度設計について引き続き考えていきたいと思います。

ちなみに前回書きそびれましたが、ITmediaの「Googleストリートビューの画像を削除してもらうには?」の記事に関して。Googleの製品企画本部長が『消費者センターや地域の行政窓口に連絡し、代理で画像を確認してもらった上で、グーグルに連絡を取ってほしいとして』と発言したと報じられ、高木さんが「辻野晃一郎製品企画本部長の発言は本当なのか、グーグル株式会社に電話で確認した」で確認を行いGoogle側も認めていますが…

記事初出時、「消費者センターや地域の行政窓口に連絡し、代理で画像を確認してもらった上で、グーグルに連絡を取ってほしいとしている」と表記していましたが、その後の追加取材で、グーグルではそのような案内をしていないことを確認いたしましたので、訂正してお詫び申し上げます。

ITmediaの元記事に追記されたのはなぜなんでしょう。辻野氏が発言していないことを書いたなら捏造ですが、高木さんの取材にGoogle側も発言を認めているわけで… なんだかGoogleを巡る情報については良く分からないことが多いような気がします。