ガ島通信

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瀬戸内寂聴さんの携帯小説「あしたの虹」

あしたの虹
はてなブックマークでも話題になっていた、作家・瀬戸内寂聴さんの携帯小説「あしたの虹」(携帯サイト、アクセス数は120万を越えている)を空港の待合いロビーで一気読みしました(本当は原稿を書く予定だったのに…)。妊娠、突然の死など、携帯小説的と言われるメソッドがちりばめられています。この作品の文学的な評価はよくわかりませんが、全体を通して優しさや希望を感じられる作品でした。
「小説ではない」など批判も多い携帯小説ですが、瀬戸内さんは『日本の文学を悪くすると言われていますが、読まれているのには理由があるはず。なぜ読まれるのか知りたくて書いてみた』(ケータイ小説では「ぱーぷる」86歳瀬戸内寂聴さん衝撃告白・産経新聞)と話しています。
瀬戸内さんは、源氏物語を現代語に訳し、文化勲章も受け、文化人として評価されています。社会的に高い評価を受けている人が、評価が定まっていない分野に挑戦するというのは、「もし失敗したら」「評価を失ったら」というリスクもあり、なかなか出来ることではなく、すごいとしか言いようがありません。
瀬戸内さんは徳島県出身で、講演の取材やインタビューをさせてもらったことがありますが、若い人が好きで、好奇心にあふれた方という印象があります。
新しい表現は、評価の定まらないところから生まれ、無視されたり、批判されたりして、やがて社会に定着していくものですから、何歳になっても「壊し」ながらチャレンジする瀬戸内さんは根っからの表現者なのでしょう。止まってしまったら新しいことは生まれないですから。