ガ島通信

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「パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本」海部美知

パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本 (アスキー新書 54)
暮らしやすい日本に閉じこもり、産業はそれなりの大きさを持つ日本市場でビジネスができてしまうことによって世界的な競争力を失ってしまう… パラダイスなはずなのになぜか閉塞感がある。海部美知さんの「パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本」を読んで改めて「パラダイス鎖国」という言葉が、いまの日本の状況を端的に表現していると感じました。
現状に不満を感じていない人には無用でしょうが、閉塞感や将来への不安を持っている人、パラダイスが行き着く緩慢な死を受け入れたくない人にとって本書は価値あるものとなるでしょう。
海部さんは専門分野である携帯電話端末の状況から「パラダイス鎖国」という言葉を生み出したわけですが、それを日本の地方都市に当てはめて日経IT-PLUSにコラムを書いたこともあり、著書の発売にあたり海部さんから献本を頂きました。ありがとうございます。
それにしても「パラダイス鎖国」という言葉はインパクトがあります。地方都市だけでなく、組織・企業いろいろなところにパラダイスがあり鎖国を進めている気がします。いまや日本では非正規雇用が3分の1を占めているわけですが、それは冨山和彦氏が「会社は頭から腐る―あなたの会社のよりよい未来のために「再生の修羅場からの提言」」で指摘したようにカイシャコミュニティを守るための鎖国なのでしょう。新聞業界などのマスメディアも同様です。衰退が見えているのに給与、社会的な地位があるだけに現状に安住してしまう。
1億総逃げ切り体制に入りつつあるなか個人はどうすればいいのか。パラダイスでゆで蛙にならないように、変化の時代を面白く生き、「ゆるやかな開国」を目指すためにはどうしたらいいのか、この本にはヒントがたくさん書かれています。

日経IT-PLUSのコラムでは、パラダイス鎖国問題の根深さや、それに対して地域や組織、個人がどう変化していけばいいのかも書いています。

おもてなしの経営学 アップルがソニーを超えた理由 (アスキー新書)
アスキーの編集部からは、同時発売の中島聡氏の「おもてなしの経営学 アップルがソニーを超えた理由」も同封されていました。ブログLife is beautifulでも展開された中島氏の「おもてなし」に関する考察、さらに、西村博之・古川亨・梅田望夫という今を代表する3人と中島氏のメジャー級対談も収録されています。こちらもよろしければぜひ。