ガ島通信

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ソニーはブログ「炎上」から学ぶことが出来るのか

ソニーの新しいウォークマンを紹介するブログ・ウォークマン体験日記が炎上したことが、ブログ界を騒がせています。ユーザーがウォークマンを使っているというスタイルでウォークマンをPRしようとしたようですが「やらせ」と批判されてコメントが殺到、現在は『本サイトは終了いたしました。一部の方々に誤解を生じる可能性のある表現があったことをお詫びいたします。サイト終了に際し、皆さまには大変ご迷惑をおかけいたします。』との表示が残っているだけです。
googleのキャッシュが残っていますが、コメントは428件。『早速音楽をダウンロードする予定が、自分のパソコンがmacだったことに気づき、撃沈。。。windowsのパソコンを買って、やっとダウンロードしてみました』(11・20 23:48)などのエントリー内容に、『以前に写真に写っていたのはwinマシンのキーボードではないか?』『マックユーザーならiPod使ったら?』などのコメントが入ります。流れを決定付けたのは「いいわけじみた」下記のコメントであったようです。

先日写真は会社でこっそり撮ってたんです。
自宅のPCはMACのPOWARBOOKで、しかも1年以上放置状態でした。
なんだかいろいろと、ヘンな誤解を与えてしまったみたいで、本当にすみません。
写真も削除しました。(11・21 12:38)

夜になり、コメント欄にはアスキーアートが登場。

つくづくipod nano買ってよかったと思います。
sonyのipodって使い辛そうなのがよくわかりました。
これからも優越感に浸りたいと思います。
本当にありがとうございました。
by ここはひどい提灯ブログですね。 (11・22 08:32)

というコメントが最後です。

ブログ・Daze and Confusedでも、写真の光の不自然さから『Sonyに新しい販促ブログです。めちゃヤラセですね。』と指摘しています。

これは、ネット・ブログのリテラシーを示す例とも言えますが、マスメディアが取り上げたり、他の企業に伝わる際に、ネットのマイナスの部分を強調するものになる可能性があります。つまりネットユーザーは無法者で、怖いのでネットプロモーションはやめておこうというような姿勢です。しかし、この炎上をもって、ネット上でのバズプロモーションが危険だと決め付けるのは早計です。

今回の炎上の主な原因は、ウォークマンの対抗商品であるアップルを「貶める」記述でしょう。さらに、今回のウォークマンは操作性やAシリーズ用のソフト「CONNECT Player」などの評判が悪く、アマゾンasin:B000BHLSKI:titleでも評価は高くありません。そもそも商品の出来が悪いにもかかわらずソニーを持ち上げ、競合製品の悪口を言うブログというだけでも、かなりの怪しさです。このブログには、ユーザーを「簡単にだませる(馬鹿にした)」と思っていた、ソニーと広告代理店の姿が透けて見えてきます。その姿勢にネットユーザーは怒ったのでしょう。

ネットユーザーは増えているし、ブログなどの個人メディアは使いやすくなったおかげでネット上での発言は容易になっています。誰もユーザーの口をふさぐことは出来ません。

織田浩一さんは「webマーケティングの近未来」で

口コミ効果のみを追いかけて、ブロガーと対処することには問題がある。隠し事をせず、消費者と同じ目線で真摯に対応する態度が、ブログやSNS(Social Networking Service)などのCGM(Consumer Generated Media)が普及した環境での企業コミュニケーションに必要とされていることだと思う。

と書かれています。私も、講演などで話す際には「ユーザーに真摯に向き合う姿勢が問われます」と言っています。流行しているからと安易にブログを導入すると、逆に企業の姿勢が丸裸にされてしまいます。

ネットコミュニケーションの視点の徳力さんはブログ

何と言っても、炎上していると言うのは話題になっていると言うことですから、PR的には実は結構チャンス。
 今回の失敗に懲りて、二度とネットプロモーションにチャレンジしたくなるぐらいなら、とことんまで今回の失敗につきあった方が良いような気がしますが・・・

と書いていますが、今のソニーにユーザーに向き合う「気持ち」があるかどうか…

劇薬となったかもしれませんが、いかに自分たちがユーザーと向き合っていなかったのかを知るという方向になれば、ソニーは現状から脱皮できる可能性がありますが、難しいでしょう。ソニースタイルの「7 DAYS with WALKMAN」もかなりの寒さですし…

この炎上から学ぶことが出来るのか、炎上を真正面から受け止めることが出来るのか。ソニーの姿勢を見守りたいと思います。

この事件で、R30さんが、ずいぶん前に「ストリンガーさん、終わったかも…」というソニーネタエントリーを書いていたのも思い出したり…

こんな本も買ってみたりしました(そういう意味では、まだまだソニーブランドに力があるのでしょうね…)

ソニーとSONY

ソニーとSONY