ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

福知山線で列車事故(追記あり)

追記(5月2日)事故発生から1週間が過ぎました。最も責任が重いのはJRであることは確かです。原因がどのようなものであれ、100人以上が死亡する事故を起こしてしまった以上、経営陣が責任を取らなければ、だれが責任をとるのかと思います。三菱、JALもトップがかわっても同じようなことを繰り返していますので、JRもトップをかえるだけでは組織の体質が変わらないかもしれませんが、問題を起こせばクビになるというプレッシャーは少なからずあるのではないかと(期待薄ですが…)。原因については、ダイヤ優先、経営効率、民鉄との競合などが指摘されていますが、国鉄時代から競合路線での特別運賃が存在した京阪神エリア。運賃はJRが高いケースも多いですが、スピードや乗り継ぎ(JRと民鉄の中が悪いためJR・民鉄間の駅間移動が不便なケースがある)を評価するからこそJRの利用が増え続けているわけですから、それをすべて「悪」と決め付けるわけにはいかないと思います。

それに、ときどき「昔(国鉄時代)はよかった」「JRになって余裕がなくなった」というようなニュアンスの記事がありますが、組合闘争と非効率な運営、劣悪な窓口サービスなどを批判し、民営化を歓迎したはずです。確かに、何かに追われ、余裕のない現代はどうだろう?という素朴な疑問はありますが、時代を巻き戻すことはできません。どうしてJR西日本で事故が起きたのか、他の鉄道会社はどんな事故防止策をしているのか? 他でも事故がおき得るのか? そのあたりも検証しなければ、単なるJR西日本バッシングで終わってしまいます。同じ関西の企業ですが、原発で死亡事故を起こした関西電力の安全管理のその後を取材しているマスコミはあるのでしょうか?

そのマスコミですが、下記で紹介しているようにいくつもの「結果誤報」の可能性がある記事を書き散らしています。ブレーキ痕はどうなったのでしょうか? 玉突きは? 他の300Rのカーブの制限速度やカントの角度を検証は? ハインリッヒの法則という言葉がいくつかのブログで紹介されています。今回は、もしかしたら重大な誤報記事はないかもしれませんが、事件・事故の大きな流れの中で、再び松本サリン事件のようなことが起きるかもしれません。JR西日本はあらゆる企業にとってだけでなく、メディアにとっても他山の石のはずです。

「ミッドナイト・ホームレス・ブルー」さんからのTBに付け加えれば、今日各紙に掲載された「後続の特急あわや衝突」という原稿も、もっと早く出てもいい原稿です。なぜ、横並びなのでしょう? 記者は現場で特急も見ているはずです(電柱同様)。

追記(4月28日) 「先頭車両が急ブレーキなどで減速、後続車両が玉突き状態を起こしたことが尼崎東署捜査本部の調べで分かった」(共同通信)。あまり詳しいとは言えませんが、小さなころから鉄道が好きな私としてはかなり違和感を感じます(辞書で調べたところ、〜感じるでも良いそうです。きちんと調べてから訂正すべきでした。ご指摘ありがとうございます)。電車のブレーキは各車両の車輪についていたはず。急ブレーキで玉突きというのは、考えにくいのではないでしょうか? もし玉突きだとすれば、先頭車両が脱線したので抵抗がかかって急激にスピードが落ちたため、後続車両が玉突きしたというのが可能性が高いように思えるのですが… 「スピード超過」「急ブレーキ」など、どんな事象でも運転手の技術的側面に結びつけていくのは、恣意的過ぎるのではないかと思いますが…。もし、専門的な知識のあるかたがいらっしゃいましたら教えていただけませんか?

今日は一日中会議が入っていて、福知山線での列車事故発生を知ったのはお昼を過ぎていました。元同僚から「後輩が巻き込まれたらしいが、大丈夫みたい。それにしても、血が足りないとか、代替運手の状況とか知らせればいいのに、相変わらず現場と病院で…」と携帯にメールが入りました。夕方6時からのニュースをザッピングしましたが、唯一読売テレビ(日本テレビ系列)が事故情報(死傷者数やJRの対応窓口の連絡先、収容病院など)をテロップで流していましたが、交通情報はゼロ。これは、私が昨年台風被害にあって書いた「災害報道にこそ!」と同じ問題を抱えていると思いました。マスコミの取材や報道は、悲惨で見た目が派手な現場などに偏りがちですが、テレビを見ながら「どうやって帰るんだ?」と疑問に思っている人たちも、困っているはずです。TBをくれたブログDE未熟庵さんは『冷酷なようやがどんな大きな事故であろうと日々の生活続く。その人々の役に立たないでなんの情報や?結局、今回もマスコミの「すごかった、我々はよく報じた」的自己満足報道かなぁ。』と書かれていますが、とても共感できました。


マスコミは、何も分かっていない段階で「運転手のスピード違反か?」「線路に置石か?」「民営化の人件費削減が原因か?」などの憶測を流しまくって、しばらくすれば何ごともなかったように収束。それが間違っていたか、合っていたかの検証もなしに…。事故原因は事故調査委員会が分析して、いずれ分かるでしょう。本来はそこから、事故調の報告の検証も含めて、どうやれば事故を防ぐことができるのか、今回の事故をどう未来に生かしていくのかしっかり組み立てて行かなければならないはずです。しかし、一時的には盛り上がって、ニュースを消費してしまうのはブログ界も同じかもしれません。先日の「募金祭実行!」でも、相当反応が少なかった(いつもあんなに即レスの7743氏はどうしたのでしょう? 「この偽善者が」と言い放つかと思っていましたが…)。忘れてしまうことは人間が生きていく上で大切な要素であると聞いたことがあります。生きていくのは大変です。マスコミは、ときどき事件や事故を振り返って、しっかり検証する。そして人々が思い出して、少しでも社会が前に進む。そんなマスコミであり、読者であればいいと思っています。



追記(4月26日) 知人に確認したところ、ラジオ(NHK)は交通情報を繰り返し流していたとのことです。テレビは関西ローカル番組が見える地域です。

事故情報や交通情報に関しては少し言葉足らずでした。普通の人は、テレビをずっと見続けているわけではありません。ニュースのひとつのコーナーで「交通情報」を流すだけでは、伝わらないことは、これまでの災害などでメディアは経験済みです。なので、読売テレビは画面を小さく分割したテロップで、病院の搬送先やJRの連絡先を流していたのだと思います(例えば、関東では交通情報は流さないという判断もできます)。他のメディアも事故発生時の夜までは、せめてニュースの時間ぐらいは交通情報を流すべきだったと思います。読売テレビであれば、テロップに代替輸送の情報なども入れてほしかったという意味です。誤解を生んでしまったようです。すいませんでした。

被害の影響範囲で言えば、福知山線が不通になることで万単位の人が影響を受けるでしょう。これを、大きいと思うか、小さいと思うかは各自の判断ですが、万以上の人に一度に情報を伝えることができるのもマスメディアの特徴です。JRも事故対応などに追われており、知人が巻き込まれている可能性がある人ならいざしらず、単に帰宅する人にとって交通情報を駅に電話するのは気が引けるのではないでしょうか。当事者(この場合はJR)に何もかも押し付けるのではなく、メディアとしてもやれることがるのではないか、いつもそう思っています。


追記(4月27日) 昨日、ブレーキ痕について異なった情報がありました。「県警捜査本部の調べで現場のカーブ手前に非常ブレーキ痕があることがわかった」(朝日新聞)、「鉄道事故調査委員会は、現場でブレーキや石粉砕痕を確認できなかったと発表」(共同通信)。いったいどちらが正しいのでしょうか? 不思議なことに、二つの記事は事実が異なるのに、「運転手のミス」を補強するために使われています。トラブルを何度も起こしたとされる運転士への予断があるのではないでしょうか? 「時速100キロ」も本当に確認して、報道しているのか疑問です(どうして疑問なのか、どのように事件・事故時の報道が行われるか、また詳しく書く機会があると思います)し、「ブレーキ痕」報道について検証されることもないのでしょう…。それでは、永遠にマスコミの「書き得」(どうせなんだか分からないのだから、とにかく片っ端から書くこと)が続くことになります。