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ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

ソーシャルメディアとPR(Public Relations)と口コミ

media literacy

学習院大学法学部政治学科の講義「メディアリテラシー -ネット時代の情報発信力-」の学生からのフィードバック(講義後に書いてもらうもの)をツイートしたところ、土肥さんから「xx PR」(Bondgirl.com)というエントリーで取り上げて頂きました。ありがとうございます。
直接のお返事になっていないかもしれませんが、ツイートの背景である講義で話した内容と問題意識について書いてみたいと思います。
ツイートはこちら

学習院のメディアリテラシーの講義で、ソーシャルメディアとPRについて扱ったら、複数のフィードバックシートに、口コミづくり(まずいやつ)のアルバイト経験ありとの記述。何も知らないから仕方ないとはいえ、対応は考えねば。WOMJとして大学生向けのプログラムも検討したいなあ

まず、学生のシートに書かれていた具体的な内容ですが、「アルバイトで@コスメ対策にメールアカウント100個作りました」「アメーバで書いている芸能人ブログに内緒でサンプルを配った」「ブロガーとして記事を書いていたが、お店や商品をよく書くのが大変で自分の書きたいことが書けなくなったのでやめた」といったものです。
いわゆるステルスマーケティングに大学生が無自覚にアルバイトとして関わっているというのに、メディアリテラシー教育として課題を感じたのでツイートしました。講義の目的やその日の流れは下記の通りです。

  • 講義の目的や問題意識

誰もが発信できるソーシャルメディア時代に対応できるメディアの担い手を目指している。メディアリテラシーはこれまで良き情報の受け手としての教育が行われてきたが、発信者として自覚や倫理も議論している。この日はソーシャルメディアの課題についてPublic Relationsの観点から口コミを取り上げた

  • 学生

約300人の受講者がいた前期と異なり、30人程度の少人数で議論しながら進めている。ゼミではないが、ワークショップあり、課題あり、フィードバックシートも毎回しっかり書き込む学生が多く意識は高い

  • 講義の流れ
    • PRの説明。プロモーションではなく、パブリックリレーションズであり、人々との良好な関係作りという双方向性を持っている
    • しかしながら、PRという言葉は、一方向の情報発信やニュースのような話題を作って人々に認知を広げる仕事であると誤解が生じている
    • ソーシャルメディアの登場によって、情報発信する人々への注目が高まっている。ソーシャルメディアでの話題づくりがPRという誤解もある
    • ソーシャルメディアは新しく、活用について明確な倫理や規定がなく試行錯誤の段階
    • 課題としてPPP(Pay Per Post)がある。検索エンジン利用者側の視点から見ると、リンクを購入した(前週が検索エンジンの仕組み)サイトが上位に表示されるとどうか。Googleでは禁止している
    • アメリカでは公正取引委員会(FTC)が「推奨」に関するガイドラインを作っている。日本ではFTCほどの厳しいガイドラインは今のところないが消費者庁は関心を持っている
    • 日本ではWOMJという口コミに関する団体があり、自分がガイドラインを担当している。アメリカにもWOMMAという団体がある。WOMJには多くの広告代理店が加盟し、自主的に努力している。罰則規定はない

講義はメディアリテラシーで、マーケティングや広報、PR論ではありません。講義の目的にもあるように学生が情報発信者として、メディアの担い手として当事者意識を持って考えてもらうものです。
土肥さんがブログに書かれている、どこまでがマーケティングなのか、というのはWOMJのガイドラインを作る際にもかなり議論してきました。ソーシャルメディアに限らず、例えば店頭での試食ではどう表示するのか、ゲリラライブが口コミを起こすことを目的に開かれている場合は、など少し極端と思われるようなものも含めて多様な手法が議論され、最終的に情報の受け手(消費者)が判断できることが重要だという、まとめが行われWOMJのガイドラインとして2009年に基本理念が、2010年に活動ガイドラインが作られました。いまでも議論を続けています。
そもそも、なぜ私がWOMJに関わっているのか(設立メンバー)分からないという人もいるでしょうが、誰もが情報発信できる時代の、信頼される情報発信のあり方、倫理、そしてジャーナリズムについて考えるためには、ビジネス側の考えを理解しなければ空論になってしまうと考えたからです。
2006年末にアメリカのWOMMAサミットに視察に行った際に、ブロガーを交えたジャーナリズムのセッションがあることに驚き、業界を超えて考えていくことの重要性を学びました。WOMJ設立に向けた勉強会で広告代理店やPR会社などの担当者と話して、マーケティング活動をする際には、信頼できる情報発信者が不可欠との意識があることを知り、PPPによって「ブログがコピーばかりで参考にならない」と言われて悔しいなど、ソーシャルメディアを大切にしたいという気持ちを共有してきました。そのため、事例共有や効果測定といった委員会だけでなく、ガイドライン委員会があり、情報発信の透明性、信頼性をどう確保するかについて話し合っています。
土肥さんはブログに「ジャーナリストの力を信じている」ということを書いてくれています。それがどういう意味なのかは、正確には理解していないかもしれません。
ジャーナリズムはマスメディアの成立とともに一部の限られた人々のものとなりましたが、再び時代はめぐりジャーナリストに誰もがなれるようになりました。ただ、ジャーナリストの役割や担い手が変化しても、ジャーナリストの力や重要性は信じています。
発信が誰かの手に委ねられるより、自分の手にある。ジャーナリズムは誰かに委ねるのではなく担うもの。だからこそ、ソーシャルメディアを大切に使ってほしい。それがWOMJを仲間とつくり、大学でメディアリテラシーを講義し、最近では「発信力の鍛え方」を書いたモチベーションでもあります。
土肥さんとどこかでお話することを楽しみにしています。
<追記>書き忘れていましたが、@コスメでは作られた口コミは利用者が化粧品などを選ぶ際に参考にならなくなるので、使用した人による口コミを大事にして、ステルスマーケティング対策を実施しています。@コスメを運営するアイスタイルはWOMJの会員で、ガイドライン委員会にも参加してくれています。WOMJの会員は代理店が多いですが、ソーシャルメディアや口コミサイトを運営する事業社にも参加して頂きたいと考えています。
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