ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

13・5文字でニュースを伝える 「ヤフー・トピックスをつくろう」ワークショップ報告

日本ジャーナリスト教育センター(Japan Center of Education for Journalist)の設立を記念した3日連続講座の最終日は「ヤフー・トピックスを作ろう」でした。編集方針、読者を決め、ニュース記事を選択して13・5文字の見出しをつけるワークショップです。ヤフー・トピックスのノウハウを学ぶのではなく、トピックスを作るプロセスの一部を経験することで、視点や考えの違い、制限された文字でいかに伝えるかを学び合うことが目的です。

参加者は、ポータルサイトのニュース担当者、PR会社や広報業務の担当者、編集者、新聞記者、大学生・院生ら40人。5−6人に別れ、7つのグループでディスカッションしました。
ゲストは、ヤフー株式会社メディア編集部のトピックス担当編集者の伊藤儀雄さん。新聞社を経てヤフーに入社したという自己紹介の後、ヤフーニュースの概要を説明して頂きました。
1996年からサービスをスタート。月間44億5000万ページビュー。100を超える報道機関と提携し、1日3500本の記事配信を受けています。24時間365日、3交代で運営。取材はせず、何が伝えられているか伝える「メディア」。グルーポンお節や新宿殺害予告など伝統的なメディアが取り上げないニュースも取り上げています。
ヤフー・トピックスの作り方 (光文社新書)
配信された記事を編集者が人手でピックアップして、関連ホームページを付け、見出しを13・5文字で決めて、チェックをしてヤフーのトップページに掲載されます。詳しく知りたい方はヤフーニュースの奥村さんが書かれた「ヤフー・トピックスの作り方」を参考にしてください。
説明の後、ヤフーの伊藤さんから60本の記事が配られます。参加者はグループごとに編集方針を決め、その方針にマッチするように60本から5本を選び、見出しをつける作業を行い発表しました。たとえば…

  • 編集方針は、ツイッターのホットワードを参考に気になる情報を提供。読者はツイッターユーザー、ツイッターをやっていない人も口コミするだろう。選んだ記事は、AKB48が早稲田に合格(早稲田合格のAKN、サイゾー)、「金親子罵倒」ツイッター放置(北朝鮮ツイッターに異常事態、J-CASTニュース)など
  • 編集方針は、残念な人を紹介するニュースポータル。自分より不幸な人を見て元気になりたい人。シニカルに笑うようなものを見出し。選んだ記事は、ウガンダ大統領ラップに活路(ウガンダ大統領のラップ、ロイター)、変節の嵐反河村だった前市議(変節に擦り寄りの嵐、週プレNews)など
  • 編集方針は、ネガティブなニュースを扱わない。読者は暇つぶしだがテンションが下がりたくない人。選んだ記事は、虫歯の原因解明予防に前進(時事)、納豆日本一宮城に決まる(産経)など
  • 編集方針は就職活動生。孫社長の最終面接に使えるニュース。読者は今日面接を受ける人。民衆が国を守ったエジプト(毎日)、A案不老不死 B案世界征服(ドラゴンボールが7つ集まったらどん願いを叶えますか?、ガジェット通信)など


模造紙に書いた編集方針や見出しを見ながら質疑や意見を出し合いました。各グループの編集方針もさまざまで、配信社や同じ記事でも見出しのつけ方が異なっていました。
議論が白熱したのは、記事内容と見出しの関係について。
例えば、ウガンダ大統領の活路について、「活路はピンチに陥った際に使う言葉だが、記事を読むとそうでもない」という意見に「記事を呼んだ際に活路を見出したいと思った」、「事実は違うのではないか」とのやり取りがありました。見出しで読者が誤解したら責任は誰が取る、なぜ?を使うのか、言い切るのか、など意見が交わされました。
ピックアップされた5本の記事に「政治が少ない」という意見もありました。都知事のニュースは選ばれていましたが、テレビや新聞がトップで報じている民主党の内紛がなかったことに「民主党の内紛で生活が変わると思わないから」「騒いでいるものをあえて選ばなかった」「政治は選ばれている。都知事選や名古屋での状況をレポートする記事がある」といった具合。
多様な参加者が、誰に向かって伝えるのか、ニュースとは何か、といった部分がディスカッションされることで、テレビや新聞で報じられている所謂「ニュース」という前提を疑い、洗い出していくことができるのではないでしょうか。
ワークショップの進行、会場の手配や受付までヤフーの皆さんに協力いただきました。本当にありがとうございました。

JCEJでは来月から第1金曜夜と第3土曜午後に講座を行っていきます。
3月4日(金曜)は電通総研の方をゲストに「日本の広告」を考える、3月19日(土曜)は動画、4月1日(金曜)はカンヌ審査員による広告とコピーを予定しています。
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