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ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

イノベーションはイラっとする G1サミット「インターネットが変えるメディア」パネル報告

12-14日まで小淵沢にある「リゾナーレ」を会場に行われたG1サミットに参加してきました。G1サミットとはグロービス経営大学院の堀義人学長が中心となり、今後の日本・世界を担っていくリーダーたちが学び、交流する場を提供する「日本版ダボス会議」です(参考・G1サミットとは

お声かけいただくまで存在を知らなかったのですが、プログラムを見ると経営者や政治家、研究者による経済、政治、科学、スポーツなどをテーマにしたパネルが朝からぎっしり。夜はピアノリサイタルやワイン、ウィスキーを楽しむイベントが用意されています。
今回からツイッターとブログが原則解禁となったということで私も積極的にツイートしました。ハッシュタグは #G1summit です。 @Globis_IMBA_Stu さんによってTogetterにまとめられています。「G1サミットまとめ(2/11)」、「G1サミットまとめ(2/12午前)」「G1サミットまとめ(2/12午後)」、「G1サミットまとめ(2/13)」。
2日目に開かれた「インターネットが変えるメディア」に登壇しました。パネリストは夏野剛さん、TBSの丹羽多聞アンドリウさん、モデレーターはSFCの国領二郎教授です。写真のようにリラックスした雰囲気、かつ真剣にディスカッションは進みました。
私の登壇部分は出来なかったので、自民党の世耕弘成さんらがツイートしてくれていました。話した事は正確に覚えていないので、ツイートをひもときながら何を考えて話したのかをまとめておきます。なのでここに書かれていることは当日私が話したことだけではありません。
パネルは国領先生の「ウィキリークスのアサンジは、英雄か、許せない、どうしようかな、3つから選んで」との投げかけで始まりました。夏野さんが「2010年は大きな転換点だった。小沢さんのニコニコ動画出演と尖閣YouTube」と続けました。確かにテレビや新聞もネット上のソースを示して報じるようになりました(参考・既存メディアを揺さぶるネット「流出・内部告発」Journalism 2011年1月号)。
まずジャーナリズムとの関係について。
いまの新聞を中心としたメディアとジャーナリズムは近代の成立という枠組みと強く関係しています。要するに国が決めた情報を日本の各地へ知らせるという役割です。官公庁の情報が多いのもその一つ。権力の一つの役割を担っているからこそ、ジャーナリズムは反権力が重要という事になるのですが、ネットはグローバルでウィキリークスなどは、まさに国境を越えて国を揺るがしています。メディア状況が変わればジャーナリズムにも新しい役割を持つ事になるが、いまは正直なところ分からないと発言しました。
もしネットによってメディアにイノベーションが起きているとしたら、それは全然違うところから起きるので、いまのメディア状況を前提として考えることはあまり意味がありません。逆に中心にいた人たちがネットメディアの存在に腹が立ったり、ざらっとした感じを持っているとしたら、それはイノベーションです。新しいことはこれまでの文脈で理解できないから新しいのです。考えてもいなかった分野や業界から潜水艦のように突然水面に浮上するのです。
なぜイラっとしたり、腹が立ったりするか。自分の領域に何らかの影響を与えそうだということが、直感的に分かっているから。後はそれを排除するか、向き合えるかです。

@mayokajima 理解できない、イラっとする、ざらっとしている、と感じるのは新しいものだから。それがイノベーション(藤代さん @fujisiro)
@SekoHiroshige 藤代さん @fujisiro 「メディアは変わる。イノベーションは『違うところ』から来る。非連続の変化だ。新聞やテレビを変えるということは諦めた」

世耕さんのツイートを補足すると、新聞やテレビという産業を変える、というのは担って来た企業を変えるということです。マスメディアであっても企業なので変化に対応できなければ淘汰されるだけです。次のツイートを見てください。

@SekoHiroshige 藤代さん @fujisiro 「ネット情報が多すぎて全部見る時間はない。知っておくべき事をまとめてくれる機能と特定の情報を深掘りしてくれる機能が求められる。そういう意味でマスメディアはなくならない。どっちつかずの中間のメディアはなくなる」

メディアの話をすると、メディアの役割と現在そのメディアを担っている企業の生き残り話が混在してしまいます。マスメディアがなくならないというのはブログが出て来た2004-05年からずっと言い続けています。メディアの役割はなくならないし、新しい企業と古い企業が並走することもあるでしょう。
ネット時代の競争の最も重要なキーは時間です。膨大な情報は全て見る事が出来ません。人間に等しくある24時間をどう奪うのか。
メディアの進む方向は2つ。多くの人が知りたい情報を幅広く集める=マスメディア。ただし数は非常に少ない。テレビならNHK、紙なら読売ぐらいが権利あり。それ以外はいかにユーザーに刺さる、熱狂的なファンをつくる、深堀タイプ(丹羽多聞アンドリウさんの取り組みである「ケータイ刑事」など)。
いまの新聞やテレビは紙(文字が大きくなってから特に)の制約もあり中途半端なものになってしまっていて

@agitadashi 藤代さん @fujisiro 例えばサッカー。プロの記者が「あそこで一歩が出ないのが日本のうんぬん」くらいしか言えない時に、練習までベッタリくっついてるファンが、ブログなどで正確で深い情報を流してくる。

となってしまい、プロなのに薄っぺらい記事しか書けないとバカにされてしまう事態が既に起きています。
会場からも貴重な意見や質問を頂きました。SFCの村井純先生が来られていて、日本の人が見えない月刊「文藝春秋」電子版をパワーポイントで映しながら、「技術はどんどん進んでるのになぜやらない」とアクションを求められていました。またngiの西川潔さんからは、日本のメディアへの信頼の高さとメディアの世論誘導の危険性について質問を頂き、「きちんとした報道をしないというメディアへの批判をする割にメディアへの信頼が高いというのは、最終的に判断をゆだねているという証拠。無責任さはメディアと私たちの共犯関係がある。ネットによってメディアも相対化されているので、それぞれの個人が色々なメディアを見て最終的に個として自分で決めるという時代になってほしい」と言った回答をしました。

G1サミットではマスコミやジャーナリストは基本的には評判が悪いです。日本を変えるためのボトルネックの一つとする登壇者もいました。マスメディアを批判するのは簡単ですが、変える為のネックならアクションが必要です。ネットメディアとして初めてピュリツァー賞を受賞した「プロパブリカ」の主な資金源は、銀行業で富豪となったサンドラー夫妻が運営する「サンドラー財団」で年間1000万ドル(約8億円)です。グーグルもジャーナリズム活動への資金援助を始めています。日本では新しいメディアへの投資はようやく始まっていますが、社会の機能としてジャーナリズムを守るための動きはまだありません。ただ「アメリカでは」と嘆いてもしかたがないので、仲間と取り組んでいる個としてのジャーナリストを鍛えるためのJCEJの活動を知ってもらうために、色々な方とお話をさせてもらいました。
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他のセッションもある中、参加して頂いた皆さんありがとうございました。お誘いただいた国領先生、そしてこのような貴重な場を提供している堀さん、グロービスのスタッフの皆様、リゾナーレのスタッフの皆様、ありがとうございました。

ところで、2日目の昼食は1食につき20円の寄付金が発途上国の子どもの学校給食になるプログラム「table for two」が紹介されました。
コンビニでも対象商品が売れるという効果も出ているとのこと。理事である浅尾慶一郎衆議院議員、高島宏平オイシックス社長、藤沢久美シンクタンク・ソフィアバンク副代表、松田公太参議院議員らが前に立ち、協力を呼びかけていました。特に松田さんは、自分が子供のころ住んだセネガルの話で一気に引き込んでいました。
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