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ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

非営利団体の運営にも経営視点や資金が必要という当たり前のこと

2011年1月20日のツイートを再編集しています。
このエントリーは @newsworker さんこと美浦さんの『マスメディアが担ってきたような組織ジャーナリズムは今後は非営利(NPO)化でやるしかないのかもしれない』『だから新聞社経営の話じゃないんだけど…。新聞って営利企業でしかできないのかな』とのツイートに端を発したものです。いくつかの意見がツイッターで交わされていますので確認してください。
非営利団体と経営の話が無関係であるというツイートは非常に残念な気持ちでした。アメリカのように、組織ジャーナリズムを非営利団体が担う可能性は日本でもあると思いますが、その実現を阻むのは非営利団体だけでなく勉強会のような団体運営にも、経営視点や資金が必要という当たり前のことが理解されない現状ではないでしょうか。
まず、議論の前に非営利という言葉からイメージされるNPONGO活動の財政状況を確認しておきます。有名なユニセフは年間168億円、日本フォスター・プラン協会(プラン)は35億円の募金を持ちますが、欧米には5-600億円の募金を集める団体もあり、日本はファンドレイジング(寄付を集める、つまり資金調達)が弱いとされています*1
非営利であれば、なおさら経営的な考えが必要です。
まず、組織がある時点でマネジメントが必要になります。いくら崇高な目的があっても人が参加し、自発的に動いてくれるとは限りません。お金や地位というインセンティブがある企業とは違い、非営利の場合は目的やモチベーションが重要です。上司や部下の関係もつくりにくく、指示しても話を聞くとは限りません。
次に活動維持の資金が必要になります。人が動き、集まるだけでお金がかかります。都内であれば打ち合わせの会議室代、マックやスタバも飲食費が必要になります。
人のコストもあります。集まって話しているということは学生ならアルバイトなど収入を得ることが出来ません。大企業やマスメディアにいるとこの部分のコストに気付かない人がいます。平気でベンチャー企業家やフリーエディターやコンサルタントをご相談などといって呼び出すのはここが分かってないから、フリーの人にとっては時間が最も貴重です。蛇足ですがここがコストという理解がないので無駄な会議が減らない…
未来をつくる図書館―ニューヨークからの報告― (岩波新書)
活動資金集めは、ベンチャー企業だけの課題ではないのです。
アメリカ公共図書館を取材している菅谷明子さんの「未来をつくる図書館ーニューヨークからの報告ー」には資金調達や広報を専門に行う担当者がいて、工夫を凝らしてお金を集めていることが書かれています。とてもよい本なのでぜひ読んでください。
非営利活動だけでなく公共セクターもそうですが、いわゆる「いいこと」をやっている団体が多くありますが、だからと言って人がお金を出すかというとそうでもありません。営利企業よりむしろ資金調達は難しい。その理由は、日本ではお金の話をすることが嫌われる傾向にあるからです。
最近のタイガーマスク運動にしても、金を出すのではなく物を贈ることがニュースになる。取材に対して必要なのは資金と人材(人を雇う予算ということであった)と率直に語る施設もありましたが、結局のところ美しい物語として消費されそうになっています。「活動するのでお金が必要」とストレートに言いにくいのは施設だけでなく、あらゆる活動に通じます。
美しい物語を増産するマスメディアは、活動に何の有益性もないどころか害悪でしかありません。資金について話しても記事にならない、世のため人のためにお金もかけずにやっているという美しい記事の枠にはめられて困っている団体運営者にも会ったことがあります。ジャーナリズムには、本質的な問題を取材し、世に問うのが役割のはずです。
私自身もいくつかの団体を立ち上げたので経験していますが、「活動資金が足りているか?」「出そうか?」と言う人は驚くほど少ないのです。中には、いつも活動にきて何にも手伝わないのに運営を批判する人がいます。経営は、人・金・物といわれますが、物はまだしも人と金の問題をストレートに言いにくい中で、活動されている非営利団体、特に常勤の職員を持っている運営は本当に大変でしょう。
ですので、非営利団体の活動は尊敬していますが、問題がないわけではありません。お金や人の管理が甘く、活動が続けられなくなってしまう団体も多い。あとは自分達はいいことをやっていると自家中毒になっているタイプも。お小遣いで飲んだり食べたりしながら活動するのは「趣味の団体」「自己満足」です。これでは活動が広がりません。
非営利に、マネジメントも経営も無関係と思っている人は、一度目的に即したグループを作って活動してみるといいでしょう。給与や地位・肩書きがある企業で、マネジメントやリーダーシップが出来ていると自信がある人も、企業組織による底上げがなくなった時に人としての実力がわかります。会合、イベントの収支計算をやってみてください、活動を周知する広報はどうでしょう、団体のブランディング、戦略は、考えることは山ほどあるし、鍛えられるでしょう。

ツイッターでの反応で気になったものをピックアップします。

@nyantomoco:米国のNPO系メディアは市民や地元企業や富豪に支えられてます。ファンドレイジングは当たり前の活動でボランティアがそこに参加します。
@nyantomoco:アワプラの最新レポ(米国の非営利NPOやメディア教育)も参考になりますよ。→躍進する非営利メディア〜米国メディア報告(2)(OurPlanet-TV)
@beicun:小さな非営利活動に複数かかわってきた経験から、継続して金が回る仕組みをまず作らないと持続しない。それが実は最も重要。
@beicun:ちょっと手伝ってくれる人の中にすごいクレーマーが出ることも。自分が支えているという意識が強く、しかも使われている身ではないので指揮命令を受け入れる心構えがない。
@masumind:日本では非営利という名称が誤解の元では。とにかくお金取っちゃいけないと思われがち。ボランティアも日当は無償でも経費は必要というのが判って貰えません。事務スタッフの人件費は別途必要です。サービス=無償というのと同根の様に思います。
@tacohtk:非営利は配当しないって意味なんで、マネジメントできないのは組織じゃないんで
@assamtea:まだまだNPOという存在や市民参加の仕組みづくりというものを社会に広めてゆかねばいけない状況と理解しています。自分が活動したり楽しんだりする場のコストは自分が負担するものという意識を皆が持てるようにしたいものですね。

@hopetrue こと宮島さんからは、私が活動のメリットを享受しながら批判する人をフリーライダーと呼んだことに、変化の可能性や多様性確保、寛容性が必要ではないかとの指摘もいただきました。
その必要性は認めています。対話をすべきというのも非営利的な団体に求められがちなことです。しかし、経営基盤が脆弱な組織にとってちょっと手伝ってくれる割りに批判を言う人と対話するのはコストが高すぎます。
対話のコストという言葉だけでも批判されそうですが…どんな人とも対話して、関わりを増やすのは理想的だし、やれるならやりたい。でも、そういう人に対応るすために積極的に参加してる人が疲れたり、離れてしまったりすることもあります。
組織の規模や資金、体制を無視して、「○○しなければならない」と決めてしまうと、結果として運営の選択肢を狭め、持続的な活動から遠ざかる気がします。負担が重いのに、周囲は「やるべき」と言い、団体も引き受けてしまうよりも、出来ないことは、出来ないと言って、周囲もサポートするほうがプラスのスパイラルとなるのではないでしょうか。自分が学ぶ場は自分たちで負担していくという意識が広がることを願っています。
非営利組織の経営―原理と実践
私が運営している「日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)」は、ジャーナリストという個が切磋琢磨する場です。参加は広く呼びかけますし、業界や年齢を超えてどのような人にも開いていますが、学ぶ意思がない個人まで引き受けることは現状難しいです。このように運営の方針や現状を明らかにしておくのは大切だということも改めて知ることが出来ました。
最後に、非営利と経営が関係ないと思っていた方に、ドラッカーの「非営利組織の経営―原理と実践」を紹介しておきます。あまり人気がないようですが、非営利に限らず組織マネジメントにも大変参考になります。そういえば、ベストセラーのもしドラの舞台も非営利(公立高校野球部)でしたね…
【関連エントリー】

*1:[http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shimin/oda_ngo/shien/fund_raising/:title=国際開発センターによる我が国における国際協力NGO等によるファンド・レイジング方法に係る調査]より