ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

フォロワー獲得や急増を約束するのはツイッターのスパム行為

委員長として運営を担当しているWOMマーケティング協議会のガイドライン委員会を開催しました。ゲストに、デジタルガレージ・Twitterカンパニーの佐々木智也さん、ドワンゴ・ニコニコ事業本部 アライアンス事業部長の岡村裕之さん、アイスタイル・@cosme(アットコスメ)主宰の山田メユミさんの三人を迎えて、口コミに対する考え方や運営方針、広告についての考えをお伺いしました。

ところで、皆さんは話題のツイッターの、基礎知識や不具合、商標、著作権、プライバシーについて「ヘルプセンター」に詳細な説明があることをご存知でしょうか。佐々木さんから「ヘルプを読んでいますか。ここにスパム行為などの説明があるんですが」と会場に聞くと、ソーシャルメディアに関心があるはずの参加者でも数名しか手が挙がらなかったところを見ると、意外に見落としている人が多いかもしれません(私もよく見ていませんでした)。
ツイッターでのスパム行為についてもタイムラインで意見が流れることもありますが、それもTwitterルールに具体的に列挙されています。いくつかをピックアップして紹介すると…

  • 短期間に、特に自動化された手段で、フォローおよびフォローの解除をした場合(過剰にフォロワーを増減する行為)
  • フォロワーを増やしたり、自分のプロフィールを注目させるなどの目的でフォローおよびフォローの解除を繰り返した場合
  • 多数の人にブロックされている場合
  • 「#」(ハッシュタグ)を使用し、そのトピックとは関係のない投稿を複数した場合
  • 多数のユーザー向けに、同じ内容の@付投稿をした場合
  • 「フォロワー獲得」などをうたうサードパーティのサイトを利用したり、促進したりすること(フォロワートレインや、「フォロワー急増」を約束するサイト、その他自動的に自分のアカウントにフォロワーを追加するようなサイトなど)

時々みられますが、フォロワーを増やそうとフォローの解除を繰り返すのはマナー違反ではなく、スパム行為としてツイッターによって調査が行われアカウントの凍結などの措置がとられる事が明示されています。ツイッターをマーケティングに利用する人や企業は必読ですし、ユーザーも知らない間にスパム行為を行っていることがないように注意したいところです。このヘルプはこれからも見直されて行くということです。

ツイッターだけでなく、@コスメ、ニコニコ動画ともに、ユーザーが不利になったり、不快になることはやらないという、ユーザー視点を大事にしており、それぞれ、@コスメ宣言ニコニコ宣言をして、約束をしています。
ニコニコ動画は、提供しているサービスをユーザーから見て宣言に即しているかのレビューも公開で行っているとのこと。ユーザー視点の徹底ぶりが半端でない。
化粧品という敏感な口コミが集まる@コスメには、@コスメ宣言で「私達は口コミの強要や恣意的な評価操作を断固として認めません」と書いているにもかかわらず、ユーザーにレビューの点数を「○点としてください」や「(サンプル配布なのに)購入したことにしてください」との指示をする事業者もあるそうです。これらはユーザーの通報で明らかになることが多く、ユーザーが「場」を大事にしていることを忘れ、商品の良い評判を広げよう、押し付けようとする企業は一時的に評価を得たように見えても、最終的に信頼を失っていくことになるのでしょう。
ニコニコ動画の岡村さんもおっしゃっていましたが、「ユーザーを悪意の存在と思わない。ユーザーはコントロールできません」という大事なところがソーシャルメディアを活用する、となったとたんに人間というが消えてしまう。山田さんも「悪い事を指摘してくれる人がいるというのが価値。生活者との対話で商品の理解が深まったり、ブランドが高まったりしていく。せっかくある生の声を使いたい」と話されていました。

公表していたゲストは3人だったのですが、それに加えて電通パブリックリレーションズ(PR)と博報堂から社内ガイドラインの取り組み説明がありました。電通PRはWOMJガイドラインの策定などを受けて、ペイパーポスとの禁止、口コミ内容の強制の禁止といったソーシャルメディア業務の方針を決定したとのこと、博報堂でも、生活者の口コミを尊重してやらせやさくら行為の禁止、報酬や関係性の明示、スパム行為の禁止といったマーケティングポリシーの策定に動いているということでした。業界の関係者からは、このB面とも言える話に「衝撃的だ…」との感想も漏れていました。

ガイドラインに関してはWOMJが設立される前の準備会時代から議論が続いているところですが、電通PRと博報堂の取り組みが進んでいることに、感慨深いものがありました。これから他の代理店やメディア、事業会社も取り組みが進む事でしょう。運用してみて分かったり、改善点が見つかったりすることもあるでしょうから、その議論もガイドライン委員会で取り組んで行きたいと思います。