ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

記者体験プログラム2010『インタビューには頭を5分割して挑むこと』

スイッチオンプロジェクトの「記者体験プログラム」。1日目は恒例のアイスブレイク「他者紹介」からスタート。「モジュールライティング」を活用したワークショップの後、メディアデザイナー坪田知己さんによる模擬インタビューが行われました。

インタビューは、言葉を引き出しながら、ノートを取り、質問も考えるというマルチタスクが求められる難しいスキルです。坪田さんは、頭を5分割せよ(プログラム、質問、聞き取り、表情チェック、予定外への対処)と表現していました。
参加者には、坪田さんのインタビューを見ながら、話し手の面白い部分を引き出すために坪田さんはどんな工夫をしたか、を考えながら模擬を見てもらうことにしました。
坪田さんのインタビューは、15分という制限時間内でまとめるベテランの技でした。
冒頭、取材相手との共通の知人の話題から入り、気持ちをほぐして本論に。経歴や仕事でのこだわりなどを聞いていきます。時々「なぜ全国紙ではないのか?」といった聞きにくい質問や「こういう視点もあるのでは」と投げかけて、考えを引き出していきます。
「市民との近さ、温度感が大切(だから地方紙に入った)」「自分にとって面白い所とデスクにとって面白い所が違った。読者のことを考えたらこっちじゃないかと喧嘩することもある」「いまのマスメディアは隠蔽している。顔が見えるメディアを作りたい」という話が出て、「饅頭のあんこみたいに均一なものではなく、一人ひとりの個性がある粒あんの方がうまい。誰かの胸に突き刺さる」とまとめて終了しました。
学生からはポイントとして

  • いきなり入らないで笑い話から入る。
  • 基本的な事実関係を最初に聞いていた。
  • こまめに短い文章で質問する。
  • 話し手の立ち位置を浮かび上がらせるような質問をする。
  • 話の中で全部を相手に委ねるのではなく、自分が知っていることも話す。自分の価値観を一緒にぶつけて聞く。
  • メモをとりながらもうなずく。共感を伝える。
  • 物の喩えをつかうことで効果的に聴くことができる。
  • まとめながら言い換えていた。

との意見がありました。坪田さんからまとめとして「インタビューの要諦(3カ条)」の解説がありました。

温度管理
相手の気分を良くする。冒頭に楽しい話をして気分をリラックスさせ、話しやすい雰囲気を作る。笑顔で接する。
プログラム
事前に相手に関する資料を読んで、「ここを絶対聞きたい」というポイントを定め、その話を引き出すために、前段、中段、終盤の質問をプログラム化して聞いていく。狙いがはずれたときの2次、3次のテーマも用意しておく。
見出し
話しながら、「このインタビュー記事の見出しは何か」を考える。前半でそれを終え、見出しを思いついたら、その見出しの下で記事を書くための細部を徹底的に聞く。いろんなことを聞いて、終了後にメモを整理して記事を書くのは下手な人。

テンポはものすごく大事で、早いと相手が圧迫感を感じる。相手の反応を見ながら、早くしたり遅くしたり、メモをとりながら、相手の表情をチェックする。わざと反論して相手をあぶり出していく、ということでした。
1日目の進行を担当する川上さんからは「相手は皆さんの質問に答える義務はありません。ジャーナリストはなんとか話してもらう。相手に失礼なことをしないように」「人は理解されたい生き物。相手を理解しよう」「その際に注意するのは、理解してもらいたいのは「事実」ではなくて「気持ち」であること。しかし気持ちだけでは記事は書けないので、気持ちを汲みながら事実を確認して欲しい」とアドバイスがありました。この後、学生は事前課題を使った模擬インタビューに挑みました。
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