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ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

日本社会情報学会(JASI)「メディアの現在を問う」にパネリストとして参加しました

日本社会情報学会(JASI)の定例研究会「メディアの現在を問う」にパネリストとして参加しました。コーディネーターは、東京大学の木村忠正先生、パネリストは学習院大学の遠藤薫先生、フジテレビの大山泰さん、共同通信の浜村寿紀さん、私でした。
ネットジャーナリズム、通信社、テレビ、研究者という異なる立場のパネリストが参加し、『日本社会における社会的現実構築、合意形成、意思決定の回路とメディアとの関係をどのように捉えられているのか、今後の方向性についてお話いただき、議論を深めたい』という趣旨で行われました。まず各パネリストから発言があり、フロアを交えたディスカッションという流れでした。一部を紹介します。

<木村先生>ドイツの社会学者、ウルリッヒ・ベックベックの指摘を引用しながら「再帰的近代化。文化と価値の多様化が社会集団の凝集性を失わせている。メディアバルカン化が起きているのではないか。日本は世界的にみてテレビの影響が大きいが、社会的な合意、意思決定においてネットに可能性はあるか考えたい」
<遠藤先生>出演したNHKの番組激震マスメディアの話「メディアの動きにメディアの内部からも意識が高まってきている。メディアが自己を相対化するという動きは画期的」「マスメディアの問題もある。メディアバイアス、番組の質、何を放送すべきなのか。経営の悪化、さらに公共性の低下という負のスパイラルが起きている。アメリカでも先行し、紙の新聞をやめたのが149社。一方、ネットも万能ではない。選挙や政治、世の中が急には変わらない」。ツイッターでの鳩山さん裸踊り発言を紹介しながら「ネットはグローバルだが、全員が同じものを見ているわけでもない。テレビとは違うタイプのメディア。ネットがダメというのではなくて、冷静になろう。いいことも起るけど、悪いことも起る。ただ、ネットを止めることはできない。激震マスメディアの放送時に、ネットでは激笑裏マスメディアが行われた。勝手に行われて、視聴者はそれを並べてみている。それが面白いところ。間メディア性の創発。既存マスメディアとネットの対立ではなく、公共性を見据えた環境を議論したい」
<フジテレビ大山さん>「テレビはこのまま氾濫したらバカになると昔言われた。そうならないといけないと思いながら編集している。だが、視聴率を取らなければ収入がない。公共性との板ばさみがある。視聴率は1分間ごとに分かる、この映像を流したから人が来たというのもある。スポーツや災害、生で起きているのは視聴率が伸びる」「ネットは匿名性が高いので、公論に参加する以上、住所、電話番号、あらゆる情報を担保して発言の責任を追うべきと考える。ただ、番組への携帯からの意見投稿などで議論が重層的になることもある。テレビメディアの影響力が落ちている中で、うまくシンクロできないか」
共同通信浜村さん>東洋経済を示しながら「タイトルが陥落から断末魔になっている。死にかけている理由を話したい。広告費は媒体の評価。ネットが抜いたのではなく、低迷する新聞を突き破ったというのが本当のとこと。媒体における広告費のシェア、新聞は1980年ぐらいから一貫して減り続けている」「だめになった理由のひとつはパッケージの凋落。音楽はiTuneになり、テレビの番組も分断されている。ヤフーニュースで見てしまう。プロのジャーナリストと称する人たちが集まって、これを読めという定食メニューを食べさせていたが、もうちょっとマーケットインにならなきゃいけない。スタバに学ぶ。ニュースを売るのではなく、ニュース体験を売ることも考えたい」
<藤代>「既存マスメディアがまずいのは、自身の改革が進んでいないため。浜村さんが指摘したように、新聞はメディアの価値が下がっているのに何の対応もしなかったつけが来ている。産業の問題とメディアが担う役割が混ざって語られている。大事なことはプロとして公共性を支えるようなコンテンツの質を担保しているのか」「マスメディア的に情報を多くの人に共有する存在はなくならないとずっと言ってきた。ネットユーザーにはバッシングされたこともあるが、ネットで出た話題が新聞やテレビに載るようにもなり、影響し合うようになっている。人には24時間しかない。ネットの膨大な書き込みを読みきれず、まとめるサイトやニュースが登場している。それをミドルメディアと呼んでいる。パーソナルメディア→ミドルメディア→マスメディアという情報の流れが出来ている」「問題はコンテンツの質。例えば、医療関係者からは記者が不勉強だとバッシングがある」
<ディスカッション>
大山さん「藤代さんが指摘されたコンテンツの問題はある。専門家の人には良く勉強している、権力者には怖がられる記者になれといつも言っている」
木村先生「社会がどんどん専門家、分断化されていく。藤代さんが提示してくれたネットのニュースも出てきている。それに対してマスメディアはどう対応するのかという話」
藤代「マスメディアに限らず、企業内OJTが難しくなっている。以前は教育はコミュニティ側が責任を持っていたが、いまは放棄してしまった。良い部分を時代に合わせて抜き出していきたい。昨年からスイッチオンプロジェクトという学びの場を立ち上げた」
遠藤先生「スキルや理念を継承していくだけではなく、新しく組み替えていかなければならない。社会全体が本当に変わりつつあって。ジャーナリズムやマスメディアの話だけではない。その次のビジョンを考えつつ、継承しつつ作り変えることをしなければ」
木村先生「新しい公論、公共の場をどうやって作っていくか。学会としても、いろいろな議論をしていく場を作っていきたい」。

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