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ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

「新聞の未来をつくる」第3回 新聞のエクストリームユーザーを考える

東京大学のi.school人間中心イノベーション・ワークショップ「新聞の未来をつくる」の第3回目は、フィールドワークの準備が行われました。調査の対象者を選び、観察ガイドを作成、ロールプレイを行うという内容。これまで講義が中心でしたが、いよいよディスカッションが始まり、ワークショップも熱を帯びてきました。

調査するのは、エクストリームユーザーと呼ばれる極端な利用者。アンケート調査などでは見逃してしまいがちなディティールを増幅してくれる存在で、従来の視点を壊してくれる可能性が高まります。例えば、エイジング・ケアに関するプロジェクトでは、自分の年齢と離れた役柄を演じる人、逆にエイジング対策を行わない人が、エクストリームユーザーに当たるそう。
各チームからは、「ホステス」「外交官」「時事ネタを扱うお笑い芸人」「引越し業者」「新聞を教材にする先生」「人生相談や俳句の常連投稿者」「東京にいながら地方紙を取っている人」「ステータスのために新聞を取っているが読みもしない人」「5紙読んでいる女子大生」「あえて海外の新聞を読む人」「キオスクの店員(長年働いているベテラン、新聞をタワーのように積み上げる人)」などが、挙がりました。
この後フィールドワークを行うため、あまりにエクストリーム過ぎると実現可能性が低くなりますが(そんな人が知り合いにいるのか?どうやって探す?など)、それを気にしてしまうと平凡なアイデアにとどまってしまいます。一回頭を切り替えて、仕事として関わる、道具として使っているなど、新聞との様々な関わりを考えてもらいますが、頭の回転が速い東大生や社会人は、ついつい先を見て硬めにまとめてくるので、各班をまわって発散するようなアイデアを投下していきます。アイデアはどんなつまらないものでもかまわないのです。「そんな下らない」と言ってしまった瞬間に新たな発見は遠ざかります。
調査するエクストリームユーザーを決めると観察ガイドづくりに入ります。これはフィールドワークの実施手順で、取材前の整理メモのようなもの。聞くべき内容や流れ、スケジュールを大まかに決めていきます。
ここで「仮説がなければガイドが作れない」という重要な質問が出ました。ファシリテーター田村さんからは「ある種の仮説だが、仮説というと検証したくなる。調査は検証ではない。エクストリームユーザーに話を聞きに行くのは、自分が知らない新聞や意味を聞くために行く。壊してもらいにいくイメージで」とアドバイス。この作っては壊し、作っては壊すというプロセスが、ビジネスエスノグラフィーの面白さでもあり、苦しさでもあり、理解されにくいところでもあります。プロセスが不安定でゴールが見えにくいためにメンバーが不安になってしまうこともあります。
ここまで読んだ人は気付いたと思いますが、このプロセスは取材に似ています。まずはある種の仮説をつくり、取材候補をピックアップしていきます。その時に最初に考えたストーリーのまま、取材が楽な人に話を聞き、識者のコメントを当てはめ、組み立てた記事はインスタントなものでしかありません。取材を進めていくと、自分の思惑や考えが違っていた、というのはよくあることです。そこで「違っていた」ということを受け止め、考え直して取材を進めていかねばなりません。迷ったら原点に返る。このワークショップでは

生活者から見る新聞を出発点とし、読み手にとっての新聞の意味、価値をエスノグラフィックに探り出します。新聞をめぐるさまざまな生活者の現実を知り、一見共通点のない彼ら彼女らの背後を貫く視点を導くことで、これまでとひと味違った新聞の未来像を見出すことを目指します。

に立ち戻ることになります。
時間、場所、服装や開き方、新聞と人生(新聞史、新聞だと話が狭いなら情報やニュースとの関わり)、人間関係、使い方など、各チームが聞きたい内容を踏まえたガイドをつくり、出来上がったチームは簡単なロールプレイに入りました。インタビューは難しいので、まずはチームで練習です。来週までの間に、エクストリームユーザー数人を調査し、「ダウンロード」と呼ばれる情報共有が行われます。
参加者は「毎週水曜日だけじゃないんだ」と言いながら、遅くまで打ち合わせやスケジュール調整を行っていました。モチベーションが高い参加者が多く、前向きに取り組んでもらえると期待して時間外にもはみ出したプログラムになっています。学業や仕事で忙しいとは思いますが、フィールドワークは面白く、予想外の展開もあります。各チームの健闘を期待します。

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