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ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

「新聞の未来をつくる」第2回 新聞がなくなったら困ること

東京大学のi.school人間中心イノベーション・ワークショップ「新聞の未来をつくる」の第2回目は、課題の共有とビジネスエスノグラフィの説明でした。課題は

自分や自分の身近な人にとって「新聞」とはなにかを考える。新聞がなくなったら困ること、不都合を少なくとも5個リストアップし、自分にとっての重要度順に並べる

というもの。各チームからは「信頼できる情報が得られない」「有識者の意見を聞けなくなる」「朝の楽しみがなくなる」「チラシや地域の情報が得られなくなる」「斜め読みで複数の記事を読むことがなくなると情報の偏食になる」「テレビ欄がなくなって困る」「習字の下敷きや掃除、ゴキブリをつぶすときに使えるものがなくなる」などの意見が出ました。
どちらかというと一般的で、予想の範囲内のものが多くありましたが、「知っておかなければならない共通の話題が失われて安心感がなくなる(社会人になるための)」「自分の載りたいメディアが一個なくなってしまう」というのは学生の興味に根付いているように感じました。
ファシリテーターの田村さんからは「言葉が浮いているのではないか」という指摘がありました。『例えば、情報の信頼性があるかどうかは自分の生活にとって何か、どういう場面で問われるのかを考えてほしい。新聞にとって大切な役割ではなく自分にとって大切かが大事』。
実は、昨年からビジネスエスノグラフィを使ったプロジェクトに取り組む機会があったのですが、チームでディスカッションしている時に話の具体性が見えなくなると、それぞれが自分の事に戻って考えてみるということを何度も経験をしました。ユーザーを徹底的に観察し、理解することが求められますが、それはユーザーを見ているようで、実は自分が明らかになっていく過程でもあります。

課題共有の後は、田村さんからビジネスエスノグラフィの説明とガイドがありました。
文化人類学の手法をビジネスの世界に持ち込んだこと、生活者の理解を通じて新しいビジネス領域を探る、人間中心のイノベーションを起こす、といったことです。ビジネスエスノグラフィは、P&Gインテルマイクロソフトなどの企業が注目してます。
東大式 世界を変えるイノベーションのつくりかた
イノベーションは、日本語では技術革新と訳されますが、ここでは、必ずしも技術的なブレイクスルーを伴うものではなく、人間の行動や習慣、価値観に変化をもたらすものとされます。田村さんは『今まで持っていた常識が覆されたり、気づいてなかった部分に価値を見つけ出すというイノベーションが起きると、その前に戻れない。戻れるのはトレンド』と説明していました。アイデアが新しいか面白いかではなく、どういう変化が起きるかが大事ということです。
その後は、エクストリームユーザーと呼ばれるインタビュー対象者について、観察ガイド作成、フィールドワーク、経験を共有するダウンロード、ブレインストーミング、などのプロセスが話されました。詳しく知りたい方は、東京大学のi.schoolが昨年の取り組みを元に編集し、21日に発売されるという「東大式 世界を変えるイノベーションのつくりかた」があります。田村さんに少し見せて頂いたのですが、写真も多く、サイズも手元に置いておきたいちょうどよさです。
いきなりビジネスエスノグラフィと言われても分からないという方は、まず「発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法」をオススメします。帯は「この一冊が、あなたの会社に驚異のイノベーションをもたらす。」で、イノベーションは「見る事から始まる」と書かれています。
この「見る」ということがいかに難しく、いままで漫然と行っていたかを、プロジェクトでは気づかされました。「よく見て」「よく考える」、言葉にすると簡単な事ですが、自分の思い込みや解釈が観察を阻みます。ビジネスはもちろん、自分に取ってはジャーナリストのスキルを学ぶことにつながっていました。
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