ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

東京大学i-school「新聞の未来をつくる」が始まりました

東京大学のi.schoolで人間中心イノベーション・ワークショップ「新聞の未来をつくる」が12日から始まりました。講師として新聞について話をしたのですが、参加学生の問題意識、モチベーションともに高く、これから10週間にわたって続くプログラムが大変楽しみです。
i.schoolは『これまで世界に存在せず、誰も生み出しえなかった、新しい答えを創り出す人材の育成』を目指す東大の取り組みで、「新聞の未来をつくる」は2010年度プログラムの第2段として行われています。第1回目はオリエンテーションで、31人の参加者(東大の院生を中心に、他大学、協賛企業の社会人など)と10名を超える見学者がありました。
このワークショップで考えるのは

生活者から見る新聞を出発点とし、読み手にとっての新聞の意味、価値をエスノグラフィックに探り出します。新聞をめぐるさまざまな生活者の現実を知り、一見共通点のない彼ら彼女らの背後を貫く視点を導くことで、これまでとひと味違った新聞の未来像を見出すことを目指します。

です。
i.schoolディレクターでファシリテーターを務める田村さんからも『ジャーナリズムの未来、メディア技術の未来でもなく、今の新聞社の将来でもない。生活者にとっての新聞の未来を考える』と説明がありました。

まず、新聞の置かれた現状を知るために、博報堂DYメディア環境研究所の中杉さんから、地域別、男女別、世代別(新聞読者は高齢者に偏っている)のメディア接触状況、イメージ、広告費(雑誌などでテレビと新聞が崩壊と言われているが、新聞の減り方のほうが深刻)、発行部数と世帯数の推移、新聞社の収入や社員構成、など様々な角度から新聞を分析したデータが提示されました。
次に私から、新聞の歴史、海外との比較を話しました。印刷革命や産業革命(交通網や通信網の発達)と都市といった新聞の成立に関わる事象から、国民国家や国民意識の関係(ベネディクト・アンダーソンの想像の共同体)、日本における新聞の歴史(官報、大新聞と小新聞、一県一紙への統合)、アメリカとイギリスの新聞の特徴など、自分の問題意識のコアの部分をどかーっと参加者に投げてみました。
「新聞の未来をつくる」と言いながら、ついつい現状の新聞の延長線上で考えがちになってしまいますが、印刷が可能になるまでは現状の姿の新聞はなかった。だとしたら、未来の新聞は、これまで新聞と思っていなかったようなものになる可能性があります。また、インターネットが印刷と同じぐらい大きな変化だとすれば、紙の常識を当てはめたり、形だけ対応するのは、短期的なものでしかありません。
未来を考えるために、新聞がどのようにして成立し、地域によって違う発展をしたかという歴史を振り返ることで、新聞の機能や社会の役割はどのようなものか、その役割は時代が変わっても普遍的なものなのかを見つめ直してもらいことが目的でした。
ワークショップは希望した学生が参加していることもあり、懇親会でも色々な質問や問題意識をぶつけてくれたので、刺激になりました。7月14日まで全日程に参加し、田村さんのプログラム進行や参加者の皆さんをサポートしていきますが、自分自身もどんどん学び、吸収していきたいと思っています。また、参加者から「ブログ読んでます」と声をかけてもらうという嬉しいこともありました。

参加者によるブログ

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