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ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

私たちはどのような「メディア」から情報を受け取っているか

media literacy

学習院大学法学部政治学科での講義「メディアリテラシー −情報の受け手から発信者へ−」が始まりました。既にガイダンスは終わり、4月27日の第3回では自分たちが情報を受け取っている「メディア」について考えてもらいました。メディアリテラシーというと「マスメディア批判」という印象があるようで、ガイダンスに出席した学生からも「マスメディアへの批判的な目は持っているのですが…」という質問があったのですが、話はそう簡単ではありません。
メディア・リテラシー―世界の現場から (岩波新書)
まず、メディアリテラシーについて、講義では菅谷明子さんの「メディア・リテラシー ―世界の現場から」に書かれている『メディアが形作る「現実」を批判的(クリティカル、ネガティブではなく論理的で偏りのない思考)に読み取るとともに、メディアを使って表現していく能力のことである』を紹介しました(文部科学省のページによると、メディアの特性を理解し、それを目的に適合的に選択し、活用する能力であり、メディアから発信される情報内容について、批判的に吟味し、理解し、評価し、主体的能動的に選択てできる能力、とある)。他にも、マスメディア批判、市民のメディア獲得、パソコンやパワーポイントなどを活用する能力、映像を制作するといったアプローチがあり、メディア史や市民メディア、コミュニケーション、情報系の研究者が取り組んでいます。その対象も小学校から大学、市民向けと幅が広いです。
メディアは、ラテン語のmedium(中間、媒介を意味する)が語源で、「メディアは現実を反映しているのではなく、再構成し、提示している。メディアはシンボルや記号のシステムである」(マスターマン)という考えがあります。情報を媒介するのは伝言ゲームのようなもので「不完全」さがつきまといます。講義ノートを取る時に、なるべくメモしたとしても講義を完全に再現することは出来ず、ノートの記述を通して再構成された講義を受け取ることしかできません。友達から借りたノートを見て誤解することはもちろん、自分が取ったノートですら何が書いてあるか分からなくなることもあります。マスメディアに限らず、私たち自身も現実を再構成しています。
さらに、インターネットのおかげでブログやツイッターのように多くの人に情報を伝えられるメディアも出てきています。読み解く対象はマスメディアに限らないのです。大事なことは、多様なメディアから影響を受け、自らも情報の発信者として影響を与えているという、当事者意識を持ってもらう事です。マスメディア批判は、マスメディアへの盲信と表裏一体です。「市民によるメディア獲得」や「メディアを創ってみる」という活動も、なぜかマスメディアでは批判されている権力性やバイアスが問題にならず、「メディアを学んでいる」というプラスの話になってしまうところに大きな課題があります。
メディアを使って表現すると、誰かを傷つけることもあるし、何かに影響を与えたり、自らの立場を変えてしまう事もあります。その面白さや効果だけでなく、問題点も分かった上でメディアと接してほしい。身の回りにあるメディアを考えることは、メディアリテラシー=マスメディア批判というレッテルを考え直してもらうきっかけです(メディアリテラシーの第一歩)。メディアリテラシーでは、メディアをどれくらい意識できるかも重要です。そして、自分が意識したメディアが、他の人(世代、地域など)とどう違うのかも考えておきたいところです。情報を得ているメディアを記入してもらった結果をざっくりと以下にまとめました。

  • <マスメディア>新聞、テレビ、雑誌
  • <インターネット>ニュースサイト、iチャネル、メール(友達、サークルのML)、mixi、モバゲー、facebook、ブログ、Youtubeニコニコ動画2ちゃんねるTwitter、スカイプ、乗り換え案内、Wikipedia
  • <記入が多かったメディア>授業、講義、電話、会話(友達、先輩、両親、先生、電車で隣の人が話していること、バイト中のお客さんの会話)、紙(シラバス、フリーペーパー、チラシ)、本(紀行、料理、辞書)、電車の中吊り広告、駅ホームの広告
  • <記入が少なかったメディア>こち亀、手帳、ゲーム、面接官、みん就、教科書

特徴として、いわゆるマスメディアのうちラジオと答えた人がいませんでした。インターネットは最も多くサービス名も含め細かく記入されており、その次が会話、電車の中吊りもそこそこありました。中吊りや駅については、記入前の説明で例として挙げたために記入が多かった可能性があります。少なかったのが漫画とゲームで、「漫画読んでないんですか?」と聞くと何人かがうなずいていました。改めて言われて「これもメディアだ」と思った人も多かったでしょう。情報は普段何気なく受け取っていますが、それを意識することは案外難しいものです。
講義を進めていく中でメディアを意識し、クリティカルに読み解き、使っていく、ことが少しでも出来るようになってもらえるとうれしいです。

なお、シラバスに書いた講義の目標は、誰もが情報発信できる時代に対応して『情報の発信者、担い手としての基礎的な知識とスキルを身につけることを目指す』ものですが、前期はメディアを読み解くところから進めています。発信は後期に行います(少し定員を絞る予定です)。ゴールデンウィーク明けからは個別のメディアを題材に議論を進めます。まずは新聞からです。