ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

「ニコニコ動画が未来を作る ドワンゴ物語」佐々木俊尚

献本いただきました。届いたときにプロローグをちらりと読んで、いったんストップしていた(スケジュールが詰まっていたのに、このまま読んでしまいそうだった…)「ニコニコ動画が未来をつくる ドワンゴ物語」。佐々木さんは多くの本を出されており、メディア業界的には、「2011年新聞・テレビ消滅」 が話題でしたが、個人的にはニコニコ動画が未来を作るのほうがオススメです。
ニコニコ動画が未来をつくる ドワンゴ物語 (アスキー新書)
人間模様と時代の変化、技術(インターネット)が重なり合い、時にぶつかりあう、物語になっているのは、「フラット革命」と同じで、メディア本やビジネス本よりも佐々木さんらしいと思います。後書きに「本当にドワンゴという会社を取材できて良かった」とあるように、佐々木さん自身が面白がり、楽しんで取材し、書いているのが伝わります。
同じ書き手としては、「廃人と奇人と天才が集まったネット界で一番面白い会社の物語」(帯の言葉)を書いて世に出したことへの純粋な羨ましさがあり、一人の人間としては、登場人物のような物語を自分が紡ぎ出せるのか、異能集団を巻き込んでいく引力のようなものを眩しくも思います。
ただ、ドワンゴ物語とあるように特定の会社の話なので、ドワンゴのサービスを知らなかったり、パソコン通信や80年代後半から90年代にかけてのPC市場について(PC9800シリーズやWindowsについて、かなり細かい描写がある)知らなかったり、すると置き去り感もあるかもしれません(V30って何?とか)。自分は、中・高生時代に、友人の家にあったPC8800や98で遊んだり、ショップに出入りしたり、パソコン雑誌を立ち読みして情報を仕入れたり、していたことを思い出しながら読めましたが… 
ちらりと読んだプロローグと、エピローグは吉本興業の大崎洋社長(2丁目劇場の運営やダウンタウンのプロデュースで知られる)のエピソード。ニコニコ動画のコメントと昔の2丁目劇場を重ね合わせ、「捨てたもんやないな」としみじみ思う、と紹介されます。この本を読み、改めて大崎社長のエピソードを読み直して思うのは、組織や時代は変わっても、結局の所は人が生み出す「熱さ」が人や世の中を動かしていくのだなあ、ということです。